No.562 (2011/04/03)再録 原発解体

 福島第一原発1〜4号機は廃炉が決定しました。おそらく今回の事故がなければ、如何に原子力発電の廃炉・解体作業が手間のかかる作業であるかに思い至る方は少なかったのではないかと思います。
 日本が原子力発電に着手して以来、廃炉・解体工事が完了した商業発電用の原子炉はまだありません。ただ1件廃炉実験が完了したのは日本原子力研究所(原研)東海研究所の動力試験炉(JPDR)だけです。
 その後、日本国内最初の商業発電用原子炉の廃炉・解体工事として2001年12月に着手されたのが現在進行中の日本原電の東海発電所(炭酸ガス冷却型/電気出力16.6万キロワット)の原子炉です。これは日本の商業発電用原子炉としてはごく小型です。この原子炉の解体工事が開始されたときに書いたNo.026『商用原子炉の廃炉』(2001/12/04)を再録しておきます。


 国内商用原子炉第一号である、日本原電の東海発電所(炭酸ガス冷却型/電気出力16.6万キロワット)の解体作業がこの12月から始まります。
 この原子炉は1966年7月に操業を開始し、1998年3月に既に運転を停止しています。32年間の寿命でした(稼働率を考えると、正味の操業期間はどの程度なのでしょうか・・・?)。これから始まる解体作業は、原電の工程表によりますと終了するのは2017年、実にまる15年後になります。
 このような長期間を要するのは、いかに原発が扱いづらい発電システムであるかを象徴しています。それどころか、放射性廃棄物の最終的な処分技術さえ未だに確立していない今日、この原電の工程がそのまま実行できるとは考えられず、実際にはより長期間を要すると考えるべきでしょう。
 廃炉の解体処理実験は日本原子力研究所(原研)東海研究所の動力試験炉(JPDR)で行われています。1981年から解体に着手し、実際の解体は86年から開始され、96年に終了しています。しかし、解体作業が終了しても、それで全てが終わるわけではありません。原研では放射性廃棄物のうち、極低レベルのものは敷地内に埋設し、50年間程度管理する実験を行っています。その他の放射性廃棄物は処分方法が決まらないまま、施設内に保管されています。そのほかにも莫大な『非』放射性廃棄物が残されることになります。このJPDRでは、24,440トンの固体廃棄物が発生し、解体費用だけで230億円を要しました。放射性廃棄物の管理費を加えると途方もない処理費が発生することになります。
 今回の東海発電所の原子炉は、商用の原子力発電所としては極小規模なものですが、それでも177,300トンの固体廃棄物が発生すると見込まれています。最終的な安全な処理方法の確立のみならず、処理費の経済的な負担を一体どうするのかも、大きな問題です。
 明らかなことは、原発の発電コストは極めて高価なものであること、放射性廃物による環境汚染が避けられないということであり、私たちは、将来世代のために少しでも早く原子力エネルギーから脱却すべきであるということです。

<東海発電所 廃止措置計画の概要>

1. 廃止措置の全体計画
(1)計画の概要
・ 東海発電所の原子炉、附属設備及び建屋を解体撤去し、更地の状態に復することを基本とする。
・ 原子炉領域については、約10年間の安全貯蔵の後、解体撤去する。
・ 原子炉領域以外の附属設備等は、安全貯蔵期間開始時点から順次解体撤去する。
・ 廃止措置は、長期(約17年間)に亘る計画であるため、工程を(2)の通り分割し進めていく。

(2)工 程                   
第1期工事 平成13年度〜17年度(約5年間)
:準備工事、使用済燃料冷却池洗浄・排水、燃料取替機・タービン他附属設備撤去 等
第2期工事 平成18年度〜22年度(約5年間)
:熱交換器他附属設備解体 等
第3期工事 平成23年度〜29年度(約7年間)
:原子炉本体解体、各建屋解体 等

(3)着手予定時期
平成13年12月4日

(4)放射性廃棄物の処理処分方法
・ 解体で発生する放射性廃棄物は性状に応じて減容、固化等の処理後、容器に封入し、最終的には埋設処分する。
・ 埋設処分先は第3期工事(原子炉本体等解体工事)前までに確定することとし、確定できない場合は、安全貯蔵期間を延長する。
・ 第1期及び第2期工事で発生する放射性廃棄物は少量であり、既設の貯蔵設備で第3期工事を開始するまで一時保管を行う。

2.第1期工事の計画
・安全貯蔵措置
主ガス弁等の閉止などの系統隔離により原子炉領域の安全貯蔵措置を行い、期間中は安全貯蔵領域の解体は行わない。
・解体準備工事
解体工事に必要な電源設備改造などの整備工事を実施する。
・使用済燃料冷却池洗浄・排水工事
使用済燃料冷却池内の水中機器を洗浄し撤去した後、冷却池壁面を洗浄しつつ排水する。
・附属設備撤去工事
燃料取替機・タービン他附属設備撤去などを実施する。
・放射性廃棄物の処理
第1期工事で発生する放射性廃棄物は僅かであり、容器に収納し既設の貯蔵設備に保管する。

3.廃止措置に要する費用
・見積り総額は、約930億円。

以上


 このように正常に運転を終了して原子炉を廃止する場合でも、解体工事を行うだけで15年間もの期間が必要になるのです。解体工事中の日本原電東海発電所の原子炉は僅か出力16.6万kWの小型原子炉ですが、それでも解体工事費用は計画段階で930億円、固体廃棄物の量は177,300tにも及びます。
 しかも、今もなお放射性廃棄物の最終処分方法は決まっておらず、最終処分施設の建設、そして長期間に及ぶ(高レベル放射性廃棄物では1000年以上)管理に対して今後一体どのくらいの費用が必要なのか、まったく見当もつかないのです。

 福島第一原発は、1号機の出力46万kW、2〜4号機の出力は78.4万kWであり、通常の廃炉・解体作業であったとしても、一基当たり数千億円の解体費用が必要であり、全部で数兆円が必要になるでしょう。固体廃棄物の量は数100万トンにも及ぶことになります。
 重大な事故を起こした福島第一原発の場合は更に難しい作業になることが明らかです。仮に幸運にもこのまま炉心の冷却に成功したとしても、スリーマイル島原発では原子炉の中を確認できるまでに6年程度の期間が必要であったことを考えれば、福島第一原発でも同等以上の期間が必要になるでしょう。しかも固体廃棄物は炉心の破損によって通常では考えられない高レベルの放射能に汚染されています。
 放射能汚染レベルを考えれば10年オーダーの冷却期間をおいたとしても、作業員によって通常の解体作業が行える可能性はかなり低いのではないでしょうか。結局通常の解体作業は行われず、チェルノブイリ原発同様、冷却しながら周囲を『石棺』で覆い、数十世代(?)にわたって管理し続けることになる可能性が高いと考えます。その費用は想像もつかない額に膨れ上がることになります。
 もし途中で管理を放棄すれば高濃度の放射性物質を環境中に漏洩することになるのです。チェルノブイリ原発では現在も汚染された石棺を維持するためだけに数1000人が被曝労働を続けています。石棺が建設されて25年が経過し、既に劣化が激しく更に石棺の外側を覆う工事が必要となっています。おそらく福島第一原発も同じような経過を辿る可能性が高いと考えられます。何と憂鬱な負の遺産なのでしょうか。

No.561 (2011/04/03)原発事故と日本気象学会

 今回は少し原発を巡る生臭い話をすることにします。とはいえ、これが原子力事故の遠因であるとも考えていることです。

 最近また有名になりましたが、1979年の米国スリーマイル島原発事故(炉心溶融)、その7年後の1986年の旧ソビエト連邦ウクライナのチェルノブイリ原発事故(核暴走・爆発事故)によって世界的に脱原発の機運が高まりました。
 そのような中で、南極とハワイで大気中CO2濃度の連続精密観測を行っていたC.D.Keelingは、彼の観測結果から、大気中のCO2濃度の増加は人為的に放出されているCO2放出量の半分に相当する量が蓄積していると考えられるとしました。また、第二次世界大戦後1970年代半ばまで続いた世界的な寒冷化傾向は一転して継続的な気温の上昇傾向を示すようになっていました。
 この二つの事象を繋ぎ合わせることによって『人為的に放出されたCO2の増加が大気中のCO2濃度の上昇をもたらし、大気中のCO2濃度の上昇による大気の温室効果の増大によって気温が上昇し、このまま気温が上昇すると生態系に壊滅的な打撃を与える』というシナリオに基づいて『人為的CO2地球温暖化脅威論』が作り出されました。1988年の米国議会上院エネルギー委員会においてNASAのハンセンは人為的CO2地球温暖化は確実に進行していると証言しました。
 この人為的CO2地球温暖化仮説は発電用の燃料として化石燃料を使用しない原子力発電を売り込むためには絶好の気候変動理論でした。そこで斜陽化しつつあった米国の原子力関連企業はCO2地球温暖化仮説を主張する気象ないし関連分野の研究者の強力なパトロンとなり、資金援助を行いました。こうして気象分野の研究者と原子力関連企業の間には強い利害関係が生まれたのです。
 この状況は日本でも同じです。日本気象学会は、学会組織として人為的CO2地球温暖化仮説を支持し、これに意義を唱えるような研究成果に対しては論文発表だけでなく、年次大会における口頭発表までも拒否するという学問の自由を否定するという異常な行為すら厭わぬようになってしまいました。
 物理学者の槌田敦氏と私は2006年以後、この問題について検討してきた結果、気温の変動によって結果として大気中CO2濃度の時間変化率が制御され、大気中のCO2濃度が変化するという関係を示し、気象学会に2編の論文を提出しましたが、日本気象学会誌編集委員会は何ら自然科学的に見て合理的な説明を示せぬまま掲載を拒否しているのです。
 また、『原子力ルネサンス』を提唱している三菱総研理事長小宮山宏(前東大総長)は東大在任中に、同大理学部教授住明正に指示して気象学会主流の若手研究者などを利用して人為的CO2地球温暖化仮説に対して異議を唱える研究者の一掃を目的に国費を投入して東大IR3S叢書『地球温暖化懐疑論批判』という冊子を作り、私や槌田敦氏を含む論者を名指しで誹謗中傷させました。また、小宮山宏は民主党政権における内閣府国家戦略室政策参与に就任するなど、原子力業界の利益代表として政府内にも食い込み、原子力発電を推進する菅直人とも強い関係を持っています。
 こうした産・官・学のどろどろの癒着構造が、国民の福祉とは関わりの無い金の理論で産業構造を暴走させていることをしっかり見て欲しいと思います。
 自然科学・工学分野の研究者とは科学的真理を追及する者という認識が一般的ですが、残念ながら事実はまったく違います。彼らはパトロンを得るためならば平気で嘘を言う悲しい人種になってしまったのです。おそらく、福島第一原発事故以来、TVに登場する『センモンカセンセイ』や東電の技術屋たちを見ていて、多くの方もそれにうすうす気がつき始めたのではないでしょうか?

 さて昨日、このホームページの読者からまた衝撃的な情報を頂きました。


2011年4月2日 11:01
近藤様

ご無沙汰しています。**と申します。
日本気象学会幹部のでたらめぶりには呆れるばかりですが、ついに下記のような「言論統制」まがいのことをやり始めたようです。戦前の大本営発表と同じです。

日本気象学会のウェブでは見あたりませんが、メーリングリストを通じて流れてきました。私自身ソース確認はできていないので、気が引けましたが、お知らせします。

 つまり、福島第一原発事故に関しては、政府から公表される唯一の情報を正しいものとして、これに従うべしと言っているのです。これでは正に戦時における大本営発表に従えと言っているのと同じです。
 福島第一原発事故は空前の大事故ですから、このような時こそ専門分野の研究者の頭脳を結集した多角的な検討を行いよりよい対応を行うことこそ重要であり、むしろ日本気象学会の頭脳を総動員して関連分野の検討を行うべきものであると考えます。この新野宏(やはり東京大学・・・)の指示はまったく逆であり、日本気象学会組織が会員研究者の学問の自由を拘束するものです。何という組織なのでしょうか。
 槌田−近藤論文の掲載を拒否するという人為的CO2温暖化仮説に対する気象学会誌編集委員会の対応もこうした気象学会の体質を体現したものなのだと理解できました。つまり、気象学会員であれば政府の支持する人為的CO2地球温暖化仮説こそ真実だと信じ、それに異議を申し立てることはしてはならないと。
 最後に、沖縄高専の中本教授から頂いたメールを紹介しておきます。


近藤邦明さま
CC:槌田敦先生

「気象学会理事長もここまで変質してしまったのか」と嘆く気になるのが普通の気象学会員かもしれませんが、しかし普通の気象学会員でも一旦、理事や理事長などに囲まれていると御用聞き商人の習性(大本営発表を担う心)が身につくのだと想像してしまいます。

それでも気象学会会員のなかにもこの緊急時点における気象学会理事や理事長らの思想と行動を情報を外部に出してくれている人がいるのは、やはり近藤さんや槌田先生の運動が継続しているからこそです。

原発事故いらい、この沖縄高専の機械システム工学科の中の東電支持の若い准教授と私の間で、東電原発事故論争が始まりました。「こんな緊急事態にたいしてわたし(中本)自身はなにも行動をしないで、沖縄高専教員会議という地位のままで評論家然として偽善家のごとく時間を無駄にしているだけではないか?」との自責の念にもかられます。「この時点で御用学者と東電を批判するわたし(中本)は悪者だ」とする大勢の批判にたいして沈黙している他の教授先生がたも心の中では何かを感じているような気もいたします。

中本 正一朗
沖縄高専機械システム工学科教授


関連記事:
No.577 (2011/04/13)
日本気象学会理事長の弁明

No.560 (2011/04/02)3.26藤田祐幸 講演『始まりの始まり』を見る

 福島第一原発以後、重要な講演が日本各地で開催されています。既にこのホームページで紹介した槌田さんの講演の様子はなぜかアクセス不能になっていますが、京大原子炉研の小出裕章さん、そして今回紹介する物理学者の藤田祐幸さんの講演はネット上でまだ見られるうちに(笑)、是非ご覧ください。

■小出裕章『隠される原子力』
■藤田祐幸『始まりの始まり』
■藤田祐幸『慙愧の思いで“語り直す福島原発事故』

 今回は、藤田さんの講演の中で重要なポイントをいくつか紹介します。

 まず、福島第一原発の放出した放射性物質による周辺地域の土壌汚染に関する情報です。

 写真は、動画から切り出したものなので、多少見にくいですが、ご了承ください。
 3月23日に文部科学省が公表した福島県飯館村における土壌に含まれるセシウム137の計測値は163,000Bq/kgとなっています。これを元に京大原子炉実験所の今中哲二さんが計算したところ、1u当たりに換算すると326万Bq/uに相当するそうです。この値は、チェルノブイリ原発事故の強制移住レベルである148万Bq/uの2倍以上の値です。
 政府は未だに避難地域を20km圏内に定め、それ以外を自主避難という曖昧な指示としています。これはあまりにも人命を軽視した、考えようによっては旧ソ連以上に情報管制した非民主的な対応ではないでしょうか?繰り返しますが、危機管理とは考え得る最悪のケースに対して対処することです。未だ原子力発電所の事故の収束は見えていないのですから、状況は少なくとも現状より悪化することを前提に避難計画を立案すべきです。まして、現状の測定値で既にチェルノブイリ原発事故の強制移住レベルを超えている状況であるにもかかわらず、40km圏の飯館村には何の指示も出されていないというのはあまりにも不合理だと考えます。

 

 この図は、SPEEDIというソフトウェアでヨウ素131の拡散状況をシミュレートした結果です。赤で印をつけたのが飯館村です。この図から推定すると、飯館村を含み、放射性物質による汚染地域は主に南北方向にかなりの範囲で広がっており、20kmの避難地域というものはほとんど意味を成していないと考えられます。
 こうした推定結果があるにもかかわらず、『急性症状が現れるような放射線レベルではないから大丈夫』と繰り返し、何の対応もしない政府の対応は人命を軽視したものだと考えます。
 今回の福島第一原発事故が太平洋側であったことは、不幸中の幸いでした。日本は偏西風帯にあり、しかも東には広大な太平洋が広がっているために東側に隣接した地域に人口密集地帯がありません。そのために放出された放射能の多くは東の海上に流され陸地の汚染は事故スケールに対して軽微にすんでいます。

 

 上図は放射性物質ヨウ素131の大気中への拡散の様子を時間追跡したシミュレーションの一場面です。仮に日本海側の原発、例えば若狭湾沿岸であるとか柏崎の原発が事故を起こした場合には東海〜関東を含む東日本全体の土地が全て汚染されることになるのです。

 

 上の図は、想定されている日本周辺のプレート境界で起こる巨大地震の今後30年間の発生確率を示したものです(緑色の丸印は原子力発電所を示す。)。今回の東北地方太平洋沖地震で、既に宮城県沖(99%)が現実となりました。その結果、北米プレートの歪が解放された結果、相対的にフィリピンプレートとユーラシアプレートとの不整合が増大する可能性が考えられます。その意味で東海(87%)・東南海(60%)地震の危険性が高まることが懸念されます。特に震源域に立地する浜岡原発は非常に危険性が高いと考えるべきでしょう。
 今回の福島第一原発の特殊性は、『同時多発事故』であるということです。スリーマイル島原発、チェルノブイリ原発事故のいずれもいくつかある原子炉の内の1基だけが事故を起こしています。ところが今回の事故では福島第一原発の1〜4号機までが一気に事故を起こしました。これは今回の事故の原因が巨大地震という自然災害であり、その結果福島第一原発の原子炉全てに障害が発生したからです。
 日本の原子力発電所は、一箇所に多くの原子炉を持っています。更に、幸い事故を起こしませんでしたが今回の地震対象地域の中にも女川・福島第一・福島第二・東海と多くの原子力発電所が立地しています。他にも若狭湾沿岸には高浜・美浜・大飯・敦賀原子力発電所、日本原研の「もんじゅ」があり、すぐそばには能登半島の志賀原子力発電所があります。複数の原子力発電所が巨大地震によって同時に事故を起こす可能性も決してあり得ないことはないのです。福島第一原発一箇所だけでも対応に苦慮していることを考えれば、同時に複数の事故が起これば対応しきれない事態になることが予想されます。

 福島第一原発事故による汚染は、程度に差はありますが既に東日本一円に広がってしまいました。つまり、関東〜東北一円に住む人々は、個別に見れば生存中に明確な身体症状が出るかどうかは分かりませんが、多かれ少なかれ既に放射線に被曝しているのは事実なのです。今後、日本における放射線被曝による晩発的な影響が何らかの形で現れることは確率的には確実なのです。私たちは福島第一原発事故を境に否応なく人工放射能による汚染と共存していかなければならなくなったのです。これを前提に、何をなすべきか、藤田さんは次のことを提案しています。

実に悲しいことですが、もう放射性物質の汚染から逃げることは出来ないのですから、これと付き合い、影響を最小限に食い止めることが重要です。
 それと同時に重要なことは、二度と原子力発電所事故を起こしてはならないということです。日本において巨大地震を含む自然災害をなくすことは出来ません。事故をなくすためには原子力発電から脱却する以外に選択肢はないのです。

 私たち人間に必要なのは・・・、


No.559 (2011/03/31)漏洩が止まらぬ放射能

 福島第一原発の状況は依然好転の兆しがない。表面上は各地の放射線の観測値は低下傾向を示して安定しているようだが、果たしてどうだろうか。
 確かに、水素爆発で大量の放射性物質を放出して以来、広範囲に大量の放射性物質を撒き散らすような事象は起こっていないため、放射性ヨウ素131の崩壊が進み、関東・東北一円の観測点における地表付近の大気からの放射線レベルは低下していると考えられる。
 一方、タービン建屋の海側のトレンチや放水口付近の海水中からきわめて高い放射性ヨウ素131が検出されていることから、圧力容器内から今も高濃度の汚染を受けた大量の冷却水の漏洩が続いていることが分かる。放射性物質の封じ込めは未だに成功していない。
 つまり、放射性物質の漏洩は続いているが広範囲には拡散していないのであるから、結果として発電所近辺に放射性物質が集中的に蓄積されているということであろう。しかも、放射性物質を大量に含んだ水が大量に海に流れ出しはじめたということであろう。陸上への汚染の広範囲への拡散は幸い小康状態ではあるが、海洋の汚染は深刻である。底棲生物への生態濃縮から食物連鎖による海洋生態系の汚染が心配される。
 今TVの情報によると発電所周辺の地下水から基準値の10000倍の放射性ヨウ素が検出されたという。セシウムはどうなのであろうか?地下水汚染の拡散はどこまで広がっているのであろうか・・・。

 更に、IAEAの調査によると原発から40km離れている飯館村の土壌からIAEAの避難基準の2倍以上の濃度の放射性物質(ヨウ素131が2000万Bq/u)が検出されたため、日本政府に対して注意するよう勧告があった。これを受けた政府は考え方の違いであり、日本の測定の方が実態をよりよく反映したものだとしている。どうもこのあたりが私には理解できない。避難勧告・指示というものは最大限の安全性を担保するために行うべきものではないか?

 一方、原子炉から20km圏内の遺体捜索に当たっている警察によると、遺体の放射能による汚染が10万cpm(1分間の放射線のカウント数)と激しく遺体回収を断念したという。原発周辺の土壌汚染はかなり深刻なことが推定される。

 政府は、いつまで放射線レベルは急性の放射線障害が出るほどではなく影響は軽微などと馬鹿なことを言っているのであろうか。そんなことより、汚染の状況を定量的に把握することこそ急務であろう。

 今TVで、福島県の天栄村の牛から、食肉の安全基準を超えるセシウムが検出されたと言っている。一体どこまで広がるのであろうか。地図で見ると原発からは60km以上は離れているようだ(この情報は翌日には誤りだったと訂正された??一体どうなっているのだろうか。)。

No.558 (2011/03/30)CO2温暖化と原子力発電

 やはり、このホームページとしてはこの問題に触れないわけにはいきません。

 人為的CO2地球温暖化が政治課題として浮上してきたのは1988年の米国議会公聴会においてNASAのハンセンによる報告が発端であるといわれています。単純にこれだけがきっかけだったのではないでしょうが、人為的CO2地球温暖化によって『恩恵をこうむる勢力』はこれを強力に支持することになりました。
 これによって莫大な研究費を得られる気象学・気象観測に携わる研究者達は雪崩を打って人為的CO2地球温暖化仮説支持になりました。産業界ではスリーマイル島、チェルノブイリ原発事故で斜陽に向かいつつあった原子力関連企業が、発電時にCO2を出さない『クリーン』な発電システムであるというふれこみで人為的CO2地球温暖化仮説を強力に支持することになりました。
 日本では、気象学会・東大を中心とする研究者グループが人為的CO2地球温暖化仮説を牽引することになります。同時に、電力各社やこれに連なる研究者、例えば前東大総長で、現在三菱総研の理事長である小宮山宏らは『原子力ルネサンス』を叫び、人為的CO2地球温暖化対策の切り札であるとして『クリーン』な原子力発電の増設を目論んだのです。これには菅民主党内閣も強く結びついています。これがCO2地球温暖化と原子力発電を巡る現在の状況です。

 まず、人為的CO2地球温暖化仮説について触れておきます。実は人為的CO2地球温暖化仮説は、コンピューターの仮想空間における数値計算結果だけが根拠となっており、現実には人為的に増大した大気中のCO2濃度の上昇によって気温が上昇したことを示すデータは発見されていないのです。正に机上の空論なのです。
 一昨年の年末には人為的CO2地球温暖化仮説を支持する学者らがCO2地球温暖化仮説を正当化するためにデータを改竄・捏造していたことが明るみに出るClimategate事件が起こり、欧米諸国では大きな問題となりました。
 このホームページを以前からご覧の方々は既にご存知だと思いますが、人為的CO2地球温暖化仮説について、このホームページの助言者である物理学者の槌田敦氏と共同でその妥当性を検討してきました。その結果、現実はまったく逆で、観測事実は気温が上昇した結果として大気中のCO2濃度が上昇したことを示すことを明らかにしました。


大気中CO2濃度-世界平均気温偏差の関係(「温暖化は憂うべきことだろうか」近藤、2006年、不知火書房)
図から明らかなように、まず気温が変動しその後を追うように大気中のCO2濃度が変化する。

 この槌田−近藤の得た結果は、人為的CO2地球温暖化仮説で利益を得る研究者や企業にとって大変都合の悪いものでした。槌田−近藤の得た成果を二つの論文にまとめて日本気象学会誌『天気』に投稿しましたが、天気編集委員会はいずれの論文についても合理的な理由を示せないまま掲載を拒否しています。
 また、小宮山宏は東京大学在任中に同大教授住明正に指示して槌田氏と私を含む人為的CO2地球温暖化仮説に対して否定的な研究者を名指しで誹謗・中傷する冊子を国費を使ってIR3S叢書『地球温暖化懐疑論批判』として出版し配布しました。これらの事件は現在名誉毀損事件として法廷で係争中です。

 つまり、人為的CO2地球温暖化仮説とは、それによって利益を得る気象研究者や原子力業界を代表とする企業連合、そしてこれに結託した政府の利権構造が作り出した虚構なのです。そもそも、人為的なCO2の放出の増加を原因とする気温上昇は存在しないのですから、温暖化対策としてCO2放出を減らす必要性はないのです。

 CO2は生態系を維持するための基本的な資源であり、そもそも『CO2を出さない』=『クリーン』などという発想が異常なのです。これは人為的CO2地球温暖化仮説が作り上げた虚像です。現状の大気中CO2濃度レベルであれば、更にCO2濃度を高めてやることこそ生態系を豊かにすることにつながります。『発電時にCO2を出さない原子力発電』=『クリーン』な発電方式という電力会社のCMはお門違いです。今回の福島第一原発事故で明らかなように、『ダーティー』な原子力発電で一度事故が起これば放射性物質による環境汚染は取り返しのつかないことになるのです。
 更に、No.554『原発=欠陥システムの実像』で触れたとおり、原子力発電は単に発電用の燃料として直接石油や石炭を使わないだけであり、原子力発電を支える膨大な社会システムを運用するためには、鉱山におけるウラン鉱の採掘、精錬、輸送、燃料加工、設備建設、施設運用・・・のために莫大な石油を消費しているのです。これらの原子力発電に関わる全ての施設の建設・運用を考慮すれば、単位電力量当たりのCO2放出量は火力発電を大きく上回るのは明らかです。

 人為的CO2地球温暖化は虚構だったのですから、温暖化対策のために原子力発電が必要という合理的な根拠は既に喪失しているのです。安心して(笑)原子力発電を安楽死させましょう。

 さて、蛇足ですが・・・。原子力発電の危険性に対して反対してきた運動の中においても、運動に科学性を持っていないために人為的CO2地球温暖化仮説にやすやすと騙され、火力発電を敵視し、反原発運動がいつしか風力発電や太陽光発電の普及運動に変節し、こともあろうに原子力発電を推進する電力会社と協力して太陽光発電の導入運動を行うなどという愚かな人々が少なからず存在します。
 既に述べたように、人為的CO2地球温暖化は虚構ですから、温暖化対策のために風力発電や太陽光発電を導入する意味は既に喪失しました。残る評価の視点は、エネルギー供給技術として優れているか否かという純粋に技術的な問題になるのです。
 No.554『原発=欠陥システムの実像』でも触れたとおり、人間社会の最終エネルギー利用形態において電力の割合が増えることは普遍的にエネルギー転換におけるエネルギー損失が増加し、社会全体のエネルギー資源利用効率が低下するのです。風力や太陽光を利用することは否定しませんが、それは伝統的な粉引き風車や日向水の延長線上にある太陽熱温水器のような形態でとどめるべきです。
 電気というエネルギー形態は便利ですが、需要と供給にギャップが出来ると重大な問題がおきるため、発電能力は需要に追随して制御されるものでなくてはなりません。この点では原子力も自然エネルギーも失格です。原子力は一定出力での運用しか出来ません。自然エネルギーは人間によって制御することの出来ない乱高下がつきものです。
 需要に追随する運転が出来ないという意味では原子力も自然エネルギーも同じですが、システムとして利用する場合には少なくとも発電量が分かる原子力の方が優れています。風まかせ、お天道様まかせの制御不能な発電装置など、子供のおもちゃならばともかく、社会に対する電力供給システムとしてはまったく使い物にならないのは、言うまでもありません。
 この使い物にならない風力発電や太陽光発電を無理やりに増やそうとすれば、付帯施設として小規模な家庭用の蓄電装置(それでも150万円ほどはかかるようです)から大規模な揚水発電所まで莫大な蓄電システムが必要となり、現在でさえ高価な自然エネルギー発電電力は更に数倍になると考えられます。これは見方を変えるとそれだけ多くの石油を消費することを意味し、鉱物資源だけでなくエネルギー資源の浪費をも加速するのです(参考:『太陽光発電の大疑問』近藤、2010年、不知火書房)。

 原子力を失うならその代替エネルギーをどうするのかなどという考え方はもう止めませんか?いずれにしても、食糧生産やエネルギー資源調達の限界がすぐそこにまで迫ってきています。近い将来否応なく現在の文明のあり方は崩壊することになります。
 私たちは、今回の自然災害を期に、エネルギーを大量に消費しながら分不相応で必要以上の物質的な豊かさを追い求めてきた文明を見直し、大地に根ざした社会への軟着陸をそろそろ考える時期にさしかかっているように思います。

No.557 (2011/03/29)欲しい情報がまったくない!

 福島第一原発の事故後、見事に欲しい情報がまったく出てこない。勿論これは第一義的に国、原子力安全・保安院、東電が情報管制していることによることは疑う余地はないでしょう。しかし、それはある意味当然なことであり、むしろ安易な玄関ネタに頼る記者クラブに参加する報道機関や情報メディアの記者が記者クラブからの締め出しを恐れて自己規制して突出した追求をしなかったり、あるいは本当に無能でなにも分かっていないのか・・・。いずれにしも情報を求めている読者や国民を裏切っている状況は恥ずべきでしょう。
 今回の福島第一の原発事故はどう考えてもスリーマイル島原発をはるかにしのぐ重大事故であり、チェルノブイリ事故に近づきつつあることは、おそらく国民の多くが感じている実感でしょう。それにもかかわらず、国はこれをスリーマイル原発と同レベルであるといい、報道もこれを正面から批判することをせず唯々諾々とそのまま情報として垂れ流すだけ・・・。
 むしろ核心に迫る情報は海外メディアから現れ、国内メディアはこれを報道するという無様な状態が続いています。大分合同新聞3月29日夕刊の記事を紹介します。

 記事によると、IEER(エネルギー環境調査研究所)の試算によると、福島第一原発事故によってこれまで大気中に放出された放射能はヨウ素131が240万キュリー(1キュリー=370億ベクレル)でありスリーマイル島原発事故の場合の14万倍、セシウム134、137は合計で50万キュリーであり、これを加えると19万倍だと推定しています。これはチェルノブイリ原発事故の10%程度に達しているとしています。
 この推定値が必ずしも妥当かどうかは私には判断できません。しかし、最も事故情報をたくさん持っているはずの国や原子力安全・保安院からこの種の情報がなぜ発表されないのか、あまりにも国民を馬鹿にした対応に腹立たしさが抑えられません。
 春の作付け、水田の準備を控えたこの時期、放出された放射性物質の地表の濃度分布を早急に調査して、利用可能な農地、あるいは作付けしてはならない農地の情報を公開することが必要でしょう。

No.556 (2011/03/29)理解不能〜プルトニウム報道

 既にこのHPでは、福島第一原発3号機がMOX燃料を使うプルサーマル方式の発電を行っていることから、原子炉から冷却水が環境に漏れているという段階で、プルトニウムが出ていないのかどうかを疑問視してきました。
 原子炉の外からヨウ素131とセシウム134という原子炉の核分裂反応で生成される放射性核種、しかも半減期が8日程度と短いヨウ素131が大量に検出されているのですからこの段階で原子炉圧力容器のバリアーがどこかで破れたことは既に分かっていたことです。
 また、使用済み核燃料の中にもプルトニウムは存在するのですから、ジルカロイの被覆管が損傷し、発生した水素による爆発が起こった段階でここからもプルトニウムが大気中に飛散することは十分考えられたことです。
 ですから今回プルトニウムを検出したという報道はむしろ「やはり出ていたんだ」と合点しただけで、むしろ当然のことだと思いました。これまで発表がなかったことがむしろ不自然であり、またしても証拠隠しなのかという点では勿論問題があると思います。

 私が理解に苦しむのは、報道関係の人間とは何て頭が悪いのだろうかということです。
 今回の発表に対して言うべきは、「プルトニウムが出て大変だ」などという子供のようなピント外れの感想ではなく、当然出ているはずのプルトニウムに対してなぜこれまで情報を伏せてきたのかという問題のはずです。
 更に、これまで高濃度の放射性ヨウ素131が検出されていても一貫して半減期が短いから安全だと言って問題にしなかったのに、今回微量のプルトニウムが検出されたとたんに極めて危険で深刻などというのか、まったく非科学的で意味不明です。
 勿論プルトニウムが危険な物質であることは確かですが、その崩壊速度は遅く(Pu239の半減期は24000年)、原子力発電所事故直後にあっては高濃度のヨウ素131の急激な崩壊による大量の放射線の影響の方がはるかに危険なはずです。報道関係の無知な記者たちは半減期が長いほど危険な放射性物質なのだと思い込んでいるのではないかと思われます。

No.555 (2011/03/29)川内原発増設/九電の選択

 九州は原発に対する依存度の高い地域です。供給電力の40%程度を玄海・川内の原子力発電に依存しているといいます。現在九州電力は川内原発に3号機を増設する計画を持っています。東北地方太平洋沖地震による福島第一原子力発電所の事故が発生してすぐ後に、川内原発の増設計画は予定通り進めると表明しました・・・。

 九電によると、原発を推進する理由は第一に『原子力は最も低コストな発電方式の一つ。』だそうです。そうではないでしょう?『原子力はほとんど地域独占のレートベース方式で決まる電気料金では最も利益に寄与する=儲かる発電方式の一つ』の間違いではありませんか(笑)?前回も紹介しましたが、原子力発電は多くのコストを国費で賄っても、火力発電よりもはるかに高コストの発電方式なのです。こんな使い古された陳腐な嘘をいつまで通すつもりなのでしょうか?

註)レートベース方式
総括原価 = 必要経費(減価償却費+営業費+諸税)+適正利潤
適正利潤(事業報酬)= レートベース × 5.25%(報酬率)
レートベース= 固定資産+建設中資産+核燃料資産+ 繰延資産 + 運転資本 + 特定投資
電気料金=総括原価÷販売電力量
つまり、単位発電量あたりの設備(固定資産=原子力発電所など)や核燃料費が高コストである原子力発電が増加すると労せずして適正利潤が増える。少し古いデータであるが、東京電力の昭和57〜59年のデータによると、単位発電電力量当たりで原子力発電は火力発電の4倍以上の利潤を生み出していた(室田『新版 原子力の経済学』1986年、日本評論社)。

 第二に『経済成長の著しい中国やインドなどでエネルギー需要が高まり、石炭や天然ガスなどの資源獲得競争は激しさを増している。』からだそうです。これも前回触れたとおり、高速増殖炉核燃料サイクルが安定して運用できるならば・・・、という条件付の理由です。ウランU235のワンススルー利用が中心とならざるを得ない核燃料の状況を考えれば、これはおそらく石油や石炭以上に枯渇が早い希少資源であり、勿論日本は100%輸入に頼らざるを得ないのです。ある意味でウラン市場は石油や石炭以上に獲得競争が激化する可能性があります。

 現在、日本最初のプルサーマル方式による軽水炉である玄海原発は定期点検中ですが、これは今回の震災を受けた政府の動向を見るために、再稼動時期を延期することになっています。
 今回の震災による事故に対して『これまで国内で観測されたことがないマグニチュード(M)9.0は「想定外」』というのは子供だましのコケオドシです(笑)。構造物は地震の絶対的な大きさを示すマグニチュードに対して設計するのではありません。どのような大きな地震であろうと、原発の立地サイトから距離が離れていれば問題になりません。例えばインドネシアでM9.4の地震が起こったところで、玄海原発には何の影響もありません。
 構造物の耐震設計は、構造物の立地点で観測される揺れの強さである地震加速度あるいは震度に対して行われるものです。今回の福島第一原発においては、一部で設計時に想定した震度を越えた場所もあったといいますが、現実に発生しうる地震を想定できなかったこと自体が完全に失敗だったのです。つまり、今後とも自然災害に対して絶対的な安全は保証し得ないということを示しています。

 このように九州電力の説明はあまりにも国民を馬鹿にした、嘘で塗り固められたものです。福島の教訓を生かし、九州電力の説明は徹底的に検証していかなければなりません。

 このような九州電力の思慮の浅い相変わらずの陳腐な説明は、福島第一原発事故の惨状を直視したとき、全てが空しく聞こえます。一度重大事故が起これば、郷土の空気、水、土壌、海が長期間汚染され続けることになるのです。長崎の原爆を思い出してください。水俣病を思い出してください。
 もしかすると、一時の電力生産のために私たちは住む場所、故郷を失う可能性があるのです。もしそうなった場合、私たちは私たちの子供たちに何と言い訳が出来るのでしょうか?
 九州電力は『それは重大事故が起こった場合の話で、九州電力の原子力発電は絶対に事故を起こしません!』と言うかもしれません。おそらく東京電力は福島の人たちにそう言って来たはずです。しかし事故は起こりました。
 私は土木の構造屋ですが、構造物において100%の安全性など保証すべくもないのです。原子力発電所が自然災害で事故を起こす確立は決して0にすることは出来ないのです。そうであれば、その危険を回避するための唯一の選択肢は明らかです。原発を廃止しましょう!

 最後にもう少し。「脱原発大分ネットワーク」の皆さん、反原発運動はもう少し徹底的にやってください。九州電力と一緒になって太陽光発電ごっこをやってる場合ではありませんよ!

No.554 (2011/03/28)原発=欠陥システムの実像

 原子力発電の欠陥について、このHP上で再三にわたって述べてきましたが、ここでは改めて簡潔に要点だけをまとめておくことにします。

1.日本の原子力開発の本質は核兵器開発

 戦後まもなく再軍備を意図し、中でも身をもってその悲惨さを体験した核兵器の保有を目指す者が保守党政権の中に現れました。彼らは、エネルギー供給と言うカムフラージュの下、原子力の平和利用を口実に自前の核技術開発に着手することにしました。その意味で、日本の核開発は当初からエネルギー供給技術としての経済合理性など無視して国家の介入によって開始されたのです。
 この日本の核武装の問題は、被爆国日本では反核運動や反原発運動の中でさえタブーとなり、おおっぴらに触れられることがありませんでした。しかし、ここ数年、米国機密文書の公開によって戦後の日本の保守政権が執拗に核の保有を目指してきたことが次第に明らかになってきました。
 それは現在でも変わったわけではありません。日本は高速増殖炉『常陽』と『もんじゅ』の運転で、軍用=核兵器用プルトニウムに必要な純度94%以上のプルトニウムをこれまでに既に84kg以上保有しているのです。MOX燃料にするのであればプルトニウム濃縮度(純度)は4〜9%であり、このような高純度のプルトニウムなど必要ないのです。この日本の保有する『軍用プルトニウム』に対して、兵器への利用を考えていないのならば不純物を混合して低濃度にすべきだと言う主張は未だに無視されているのです。
 日本は既にH2型ロケットの実用化で核弾頭運搬手段を保有していますから、その気になればいつでもICBM(大陸間弾道弾)を保有することが可能であることを知っておかなければなりません。
 日本では、国民が知らない間に発電用の原子炉によって兵器用プルトニウムを製造しているのです。その意味で電気料金を支払ってきた私たちは日本の核武装の一端を直接担ってきたことを意味しています。現在『もんじゅ』は殆ど臨終状態ですが、未だに民主党政権が高速増殖炉に執着しているのは、彼らの中にも核武装を目指す勢力が居ることを示しているのでしょう。

2.原子力発電システムは人間には管理不能

 通常の工業生産プラントであれば、そのプラントの製造から廃棄までをライフサイクルとして、プラントの運用が社会に何らかの損害を与えた場合、保有者が社会に対して責任を負うことになります。
 原子力発電は、核燃料を利用するという特殊性からライフサイクルがあまりにも長期(数万年?)に及ぶため、プラント保有者がその責任を負うことが不可能なシステムです。
 通常日本の原子力発電所の操業は40年間を目処としています(現状では更に延命させようとしているようですが・・・)。しかし、操業中に生み出された高レベル放射性廃棄物や放射能で汚染した発電所設備の残骸の保管には操業停止後も長い年月を要します。最近よくテレビのCMで好感の持てる俳優を使ったNUMO(原子力発電環境整備機構)の高レベル放射性廃棄物の地層処分が紹介されています。


出典:「原子力・エネルギー」図面集2011年

 上図に示すように、発電停止後の数年間は高レベル放射性廃棄物=使用済み燃料は、福島第一原発事故で有名になった使用済み核燃料の冷却プールなどで温度管理をしながら冷却し、その後に再処理(使用済み核燃料から燃え残りのウラン235やプルトニウムを抽出する処理)を行い、その残滓をガラス固化体にして最終的には地下深くに作る最終処分場に埋設するというものです。
 この計画が目論見どおりに進むとして、NUMOでは1000年間の管理を想定しています。上の図を見ると、1000年後の高レベル放射性廃棄物の放射能は1t当たり10万GBq程度であり、ウラン鉱石750tの放射能である1000GBqの100倍の値です。つまり、1000年後においても高レベル放射性廃棄物はウラン鉱石1tに比較すれば実に750×100=75000倍の放射能を保有しているのです。
 かつて(?)米国ではウラン鉱山で働くアメリカ先住民が劣悪な労働条件とも相俟って数多く肺がんを発症したと言います。そのウラン鉱石に対して75000倍もの放射能を有する高レベル放射性廃棄物の地層の閉じ込めに失敗し、地下水の汚染などが起これば、計り知れない被害を及ぼすことになります。


出典: 〈 電気事業連合会 TRU廃棄物ってなに?〉

 このように、現在想定されているNUMOの1000年間の地層処分計画は高レベル放射性廃棄物の管理期間としてはみじか過ぎて極めて不十分なものです。放射能レベルがウラン鉱石と同程度になるまで減衰させるためには少なくとも数万年の保管期間が必要です。しかし反面、地下に埋設した高レベル放射性廃棄物を1000年間もの長期にわたって、周辺環境から安全に隔離することは技術的に不可能です。特に、今回の地震でも分かるとおり、世界でも最も不安定な地殻構造を持つ日本においてはなおさらのことです。
 冷静に考えてみてください。今から1000年前といえば平安時代です。我々の世代が高々40年間ほど電気を得るために使った結果排出された高レベル放射性廃棄物を1000年後の世代がどうしてその安全性に責任を持つことが保証できるでしょうか?おそらく1000年後の世界では現在のように石油・天然ガス・石炭という有用エネルギー資源をふんだんに利用することなどできない社会になっています。勿論、風力発電や太陽光発電などという石油文明のおもちゃなど何の役にも立ちません。
 ライフサイクルが数万年にも及ぶ原子力発電システムを人間社会のシステムとして内部化して管理することなど、非現実的なことなのです。更に、仮に1000年間の安全性を保証するとして、それを実現するために必要な経費や投入エネルギーは一体どのくらいになるのかを明確に見積もることなど不可能なのです。

3.原子力は高コスト

 原子力発電は効率がよく低コストな発電だと国や電力会社は言いますが、これはまったく実態とはかけ離れています。電力会社の発電技術の一つに過ぎない原子力発電のために、国家的な組織を作って莫大な国費を投入して、それでもなお資金を賄いきれないという実態が、効率の悪い高コストの発電方式であることを何よりも如実に示しています。
 火力発電用重油が20円/リットル程度であった場合、石油火力発電の発電原価は7〜8円/kWh程度でした。これに対して原子力発電の発電原価は20円/kWh程度(例えば、申請時の柏崎刈羽原発5号機の場合19.71円/kWh)でした。


出典「原子力2009」

 しかし、この東電の申請時の原子力発電の発電原価は、東電の保有する原子力発電所(軽水炉)を使った発電コストしか考慮しておらず、上図に示す原子力発電に関わるその他の全ての専用施設の建設やそれを運用するための費用の多くは莫大な国費の投入によって賄われています。これらを算入すれば、発電原価は現状の数倍になると考えてよいでしょう。
 更に、2005年に開始予定であった40年間の使用済み核燃料の再処理に16兆円が必要(電事連発表)であり、NUMOによる1000年間に及ぶ高レベル放射性廃棄物の埋設処分施設の建設・運用のための経費はまったく含まれていないのです。これらを全て考慮すれば、原子力発電による発電電力の原価がいくらになるのか、まったく予想することすら困難です。
 なぜこのような現実と国や電力会社の主張する原価が異なるのでしょうか?それは、国や電力会社は、現在実施されている軽水炉核燃料サイクルだけではなく、軽水炉の使用済み核燃料から再処理したウラン・プルトニウム混合燃料を作り、これを高速増殖炉核燃料サイクルへと繋げることが前提になっていたからです。
 軽水炉では冷却材として水を使いますが、これは核分裂によって生じた中性子を減速させる性質があります。しかし、高速増殖炉では、原子炉に装填されている非核分裂性のウランU238に燃料の核分裂で生じた高速中性子を効率よく吸収させ、原子炉燃料となる核分裂性のプルトニウムPu239を生成することを目的にしているため、冷却材として極めて化学反応性の高い金属ナトリウムを使う必要があるのです。しかしそこには、ほとんど臨終したと思われる高速増殖炉『もんじゅ』の事故でも分かるように、軽水炉とは比較にならないほどの技術的困難さと危険性をはらんでいます。
 実質的に高速増殖炉核燃料サイクルは技術的に完全に破綻し、更に軽水炉核燃料サイクルにおける再処理も予想以上に困難を極め、経費はかさむばかりで、未処理の使用済み核燃料やMOXという不良在庫ばかりが増大しているのです。その捨て場となるのが福島第一原発3号機で実施されている狗肉の策である軽水炉によるMOX燃料の使用であるプルサーマル方式の発電なのです。
 高速増殖炉核燃料サイクルが『実現すれば』天然ウランの99%以上を占める非核分裂性のウランU238から原子炉燃料となる核分裂性のプルトニウムPu239が新たに大量に生成し、高速増殖炉燃料として装荷したPu239よりも『増殖する』ので、使用済み核燃料は莫大な資産であると同時に、資源小国日本の長期的なエネルギー安全保障の観点から高速増殖炉核燃料サイクルは重要だと主張されてきました。ところが、この目論見は完全に破綻したのです。
 核燃料サイクルが軽水炉核燃料サイクル(プルサーマル方式も含む)だけに限定されるのならば、再処理は得られるエネルギーよりも投入エネルギーの方が大きくなる可能性が高く、まったく無意味です。今後おそらく日本の原子力発電はウランU235を利用するウラン燃料のワンススルー方式に限られることになります。
 ウランU235をワンススルーで使用することになればウラン資源もまた世界的に偏在する希少資源であるため、日本のエネルギー安全保障を原子力発電で担保することなど出来ないのです。
 更に、槌田敦氏の最近の研究から、たとえ高速増殖炉を運用できたとしても、プルトニウムは増殖しないことが分かりました。完全に核燃料サイクルの夢は打ち砕かれたのです。

4.原子力発電は石油を浪費しCO2を増やす

 前節で見てきたように、原子力発電による発電原価は、全ライフサイクルに関わる資材やエネルギー投入を全て算入すれば途方もなく高くなります。
 石油火力発電電力では、発電用燃料と発電所建設・運用に必要な石油を消費します。今、石油火力発電の原価を8円/kWh、その内燃料費が6割、残り4割の内の20%が発電所建設・運用に必要な石油の対価だとすると、発電電力1kWhあたりの石油費用は、

8円/kWh×0.6+(8円/kWh×0.4)×0.2=5.44円/kWh

程度です。以下の検討では、標準的な工業製品価格・設備建設費、施設運用費の内の20%程度は石油を中心とするエネルギーの費用と考えることにします。
 原子力発電では発電段階では直接に石油を燃焼させないので、その施設建設や運用などに投入された石油を中心とするエネルギー費用の5倍(=1/0.20)程度を発電原価と考えてよいでしょう。つまり、原子力発電の単位発電電力量当たりの石油消費量が石油火力発電と同等である場合、原子力発電の発電原価は、

5.44円/kWh×5=27.2円/kWh

になります。前節で述べたとおり、現状で東電の申告による発電原価は既に20円/kWh程度であり、国費で負担している現実に発電に関わる全ての経費を加え、更に使用済み核燃料再処理費用や地下埋設処分費などを考慮すれば、この原価は数倍(数十倍?)に跳ね上がることは明らかです。
 つまりライフサイクル全体を考慮すれば、単位発電電力量当たりに必要な石油投入量は軽水炉原子力発電の方が石油火力発電よりも圧倒的に大きいのです。したがって、原子力発電は石油火力発電以上にCO2を大量に発生するのです。

5.原子力発電は火力発電を代替出来ない

 原子力発電は、一定の出力で連続運転することは出来ますが、短時間で大きな出力変動するような運転は危険なために行うことが出来ません。

 

 上図は発電方式別の発電量の日変動を模式的に示しています。このように発電量は短時間で大きく変動しますが、原子力発電は需要の変動とは関わり無く、ひたすら一定出力で運転することしか出来ないのです。原子力発電をこれ以上大幅に増やすことは需要との関係でほとんど無理であり、火力発電を全面的に原子力で置き換えることなど現実的には不可能です。仮に無理に原子力発電を増やそうとすればエネルギー効率を更に低下させる揚水用電力としての利用を増大させることになるのです。

6.電力化がエネルギー利用効率を悪化させCO2放出を増やす

 これまでも夜間余剰電力を処分するために夜間電力のダンピング販売と電気温水器の導入によるエネルギー利用効率を無視した政策が国と電力会社によって行われてきました。電気以外で出来ることを電気に置き換えることを電力化と呼びます。

 上図から分かるように、最終的なエネルギーの利用形態として電力の割合が増加するにしたがって、エネルギー転換に伴う損失が著しく大きくなります。
 例えば、原子力発電は高圧水蒸気を作ってタービンを回すことによって発電する汽力発電の一種ですが、核分裂エネルギーで得た熱エネルギー(一次エネルギー)の内で有功に電気に変換されるのは30%程度に過ぎず、残りの70%程度は温排水として海に流されてしまいます。図の一番左の棒グラフを見ると一次エネルギーに占める原子力エネルギーの割合は全体のわずかに10%程度です。これを熱効率30%で電気に転換すると、電気として利用できるのは更にその1/3以下になってしまうのです。
 原子力発電の熱効率は石油・石炭・天然ガス火力発電に比較しても熱利用効率の低い汽力発電です。最新のハイブリッドタイプ(ガスタービン+水蒸気タービン)の火力発電では熱効率は50%近くにもなっています。
 いずれにしても電気ではなくても出来る仕事を電気で置き換える電力化は社会システム全体のエネルギー利用効率を著しく悪化させる(真ん中の棒グラフ「転換」に示す『損失』の割合が増える)ことになります。おそらく、低温熱源のエネルギーを電気から石油やガスに戻してやれば原子力によって供給される電気エネルギー程度はいつでも削減可能です。それどころか、おそらく原子力発電を全廃すれば、既存の発電設備だけで電力需要は十分賄うことが可能となり、同時に石油消費量を大幅に削減することが可能になるでしょう。
 しかし、現実には『人為的CO2地球温暖化対策』として、低効率で高コストの原子力発電を更に増設することが目論まれており、その鍵となる技術が自動車の電力化、つまり電気自動車の普及なのです。これによって、日本の石油使用量は大幅に増加し、CO2放出量が増加することは明らかです。

7.原子力を除いた既存の発電設備だけで電力需要は賄える

 現在、震災による発電所の停止で関東圏では計画停電が行われています。こうした状況を見ると、『危険だが原子力発電所無しでは電力需要は賄えない』ので、原子力発電の運用を続けることは致し方ないという主張がまことしやかに語られ始めています。
 それでは、日本の発電設備の設備利用率を見ておくことにします。


出典:『過剰な発電所と無力な原子力』小出裕章(京大原子炉実験所)

 これを見ると明らかなように、日本では原子力発電の設備利用を最優先しているため、その設備利用率は83.8%という非常に高い値を示しています。これに対して火力発電や水力発電では、主に電力需要変動に対応するための変動運転と、原子力発電所の事故や定期点検のバックアップ用としての一時的な運用を担っていることもあり、火力発電の設備利用率は43.6%、水力発電は25.8%という低施設利用率に過ぎないのです。
 確かに現在は震災被害によって火力発電設備も一部利用できなくなっていることもあり、需要を賄いきれていないかもしれませんが、これを復旧すれば全ての原子力発電所を今すぐ全て停止させたとしても電力供給能力は電力需要に対して十分な余裕があるのです。

出典:週刊金曜日2011/3/25

8.結論

 今回は、福島第一原発事故の具体的な状況から少しはなれ、今後の原子力政策を検討する上での基本事項について紹介してきました。色々な角度から検討してきましたが、あらゆる結果は原子力発電を停止すること以外に選択肢がないことを指し示していると考えます。
 唯一、原子力発電を推進すべき理由を探せば、それは日本の核武装を実現するという目的であり、それ以外に合理性のある理由は存在しないのです。

No.553 (2011/03/28)脱原発は科学的必然

 福島第一原発の状況は未だに悪化の一途を辿り、放射性汚染がこの先どの程度まで拡大するのか、現状ではまったく目処の立たない状況になっています。前回も書いたとおり、原発推進・反対の立場などに関わらず、全ての英知を結集して出来る限り被害を小さくする努力を行うことが、国や東電の責務であることを確認しておきたいと思います。

 それにしても原子力安全・保安院や東電の原子炉に対する科学的、技術的レベルの低さに唖然とします。おそらく原発を持つ諸外国は日本の原子力に対する能力の低さに唖然としているのではないかと思います(勿論日本にも優秀な研究者はいますが、ただ排除されているのです。)。
 昨日はタービン建屋に溜まった水から半減期が52分程度の放射性ヨウ素134が大量に検出されたという発表がありました。半減期が52分程度の放射性物質が大量に存在するということは、今まさに原子炉の中で核分裂反応が起こっている可能性を示すものであって、正に再臨界→核暴走の危険が迫っていることを意味します。悠長な対応をしている場合ではないはずですが・・・。結局今日になって検出されたのはヨウ素134ではなくセシウム134であったと訂正されたようですが、何と情けない分析能力でしょうか!

 一方、早くもマスコミ・新聞報道では、福島第一原発事故後の日本のエネルギー政策に言及して、早急に原子炉の安全性の再点検を実施した上で、今後も原子力発電を電力供給の中心に運用していくことを主張し始めています。とんでもない話です。
 現状で判明している福島第一原発の事故状況だけでも、たかが東京電力という一民間会社の発電プラントの事故によって、東北から関東一円の大気・水・土壌・海の環境が広範囲で汚染され、おそらく発電所近隣の市町村では集落が離散して戻れなくなる可能性もあるでしょう。これは最早金銭では取り返しのつかない重大な被害なのです。このように一度事故が起これば周辺にとてつもない規模の被害をもたらす危険な発電システムを今後とも電力供給の中核として維持していくなどと言うのは愚か者の極みです。

 無知・蒙昧な多くの国民は国や電力会社そして幇間研究者などの非科学的で、事実ではない『原子力神話』の大量洗脳宣伝を疑うこともなく鵜呑みにしてきました。しかし、中越地震の柏崎刈羽原発事故、そして今回の東北地方太平洋沖地震の福島第一原発事故を見れば分かるとおり、既に『原子力安全神話』は完全に崩壊しているのです。これを機会に原子力の実態を冷静に直視しなおす契機にすることが必要ではないでしょうか?

 少し長くなってしまいましたので、次回は原子力神話について検証することにします。

No.552 (2011/03/26)原子炉操作まで外圧か・・・

 No.546で紹介した3月18日の学習会において、槌田敦氏は炉心冷却材として海水を使うのは間違いであると警告していました。
 更に、原子力保安院に対しては既に3月16日にFAXを送り、海水注入を止めるように進言していました。

 この進言はまったく無視されてきました。ところが、米国ニューヨークタイムズ紙に同様の指摘が掲載されました。それを伝える共同通信の記事を以下に紹介します。


福島原発、海水が冷却妨げる恐れ 米紙NYタイムズ指摘

 【ワシントン共同】福島第1原発事故で、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は23日、専門家の話として原子炉の冷却のために使っている海水が、逆に冷却を妨げている可能性があると指摘した。
 同原発では、津波による停電で冷却機能を失った原子炉を冷やすため、ポンプを使って海水を注入している。
 しかし、同原発の原子炉を開発した米ゼネラル・エレクトリック(GE)社で建設当時、同原発と同じ沸騰水型軽水炉の安全性を研究していた専門家は、原子炉内で海水中の塩が結晶となって燃料棒を殻のように覆っている恐れがあると指摘。
 塩の結晶に覆われれば燃料棒の周りの海水の循環が悪くなり、効率良く冷やすのが難しくなるほか、熱によって燃料棒を覆っている金属が破れて放射性物質が漏れ出す恐れもある。
 最悪の場合は熱の蓄積によってウラン燃料が完全に溶けて、より多くの放射性物質が出る危険もあるという。
 この専門家は海水注入による1号機の塩の蓄積量は26トン、2、3号機はそれぞれ44トンに上ると試算している。
 沸騰水型軽水炉に詳しい世界の専門家らは同じことを心配しており、早く海水の代わりに真水を使うよう日本に伝えようとしているという。

2011/03/24 18:22 【共同通信】


 この報道を受け、東電の姿勢は急転換しました。副社長が自ら会見で塩の析出の問題に触れ、早急に冷却材を真水にすることを表明しました。

 何という無様なことでしょうか。

 日本国内にも今回の事故を憂い、真摯にその解決を願う優秀な研究者は少なくありません。しかし、国、経済産業省=原子力安全・保安院、東電は原発反対派であるそういう優れた研究者の意見を排除し、事態を軽視する幇間のような無能な原発推進の研究者ばかりを集めた結果、事態をますます悪化させているのです。
 この重大事故においてつまらぬ面子は捨て、この事故を出来るだけこれ以上拡大しないように収束させるために、過去のしがらみなど棚上げにして、国内の英知を全て結集することを望みます。

No.551 (2011/03/25)被曝労働

 放射性物質の拡散が徐々に明らかになってきました。ここまでくるとさすがに行政も内部被曝に対する注意喚起を行わざるを得なくなりました。しかし、土壌や野菜などの放射能の値が公表される以前には更に放射能レベルが高かった可能性も否定できず、何も知らずに放射性物質を摂取した人も多いのかもしれません・・・。

 事故以降に露呈した、人の安全よりも事故を軽微なものに見せようと取り繕い自己保身に走る国の醜く無様な姿が情けない限りです。その反面、原子力行政の犠牲となって命がけの作業を続ける現場労働者に対して、被曝の危険のある現場からの退避を許さぬという菅直人や海江田万里の発言は、人の命を軽んじる原子力行政の実態を端的に表しています。

 

 この愚か者達はともかく、福島第一原発事故発生直後に、ばたばたと原子力現場労働者の緊急時の年間積算許容被曝線量が100mSv/年から250mSv/年に引き上げられました。ここには何の科学的な合理性もありません。あるのは現場労働者の安全を『多少』犠牲にしてでも、事故を早く収束させることが優先されただけのことです。

註)図からわかるように、これまでの100mSv/年という緊急時における年間積算許容被曝線量は、『臨床症状が確認されず』というギリギリの値であり、一定の意味があった。しかし、今回の事故対応のための250mSv/年という数値は、作業員に何らかの急性的な症状が現れることを前提とした値であることが分かる。

註)シーベルトSvは純粋に物理的な単位ではない。単位重量あたりの物質の吸収線(エネルギー)量を表す単位グレイGy=J/kgに放射線の種類ごとに定めた生体に与える影響による係数を乗じた値。Sv=係数×Gy。β線、γ線に対する係数は1.0、α線に対する係数は20.0である。

 昨日は福島第一原発3号炉のタービン建屋で電源ケーブルの敷設作業を行っていた作業員が、放射性物質を大量に含んだ水に触れて180mSv(ミリ・シーベルト)程度被曝しβ線熱傷のため、千葉市の放射線医学総合研究所に入院することになりました。福島第一原発事故発生後、積算被曝線量が100mSvを超えた作業員はこれで17人になりました。一体どれだけの人が高度の被曝をすることになるのか・・・、悲しいことです。
 現場に溜まっていた水の放射能レベルは約390万Bq/ml(1ml当たり毎秒390万個の原子核が崩壊して放射線を放出する)であり、通常運転中の炉心の冷却水の10000倍にも達していたということです。また、放射性核種として半減期の短いヨウ素131が大量に含まれていました。
 つまり、3号炉の炉心は明らかに傷ついており、放射性ヨウ素131を大量に含む炉心冷却水が何らかの経路であふれ出したことを示していると考えられるのです。この水にはプルトニウムは含まれていなかったのでしょうか・・・?残念ながら放射性物質の格納容器内への封じ込めは失敗して、今も炉心からの放射性物質が環境中に拡散しつつあるようです。

註)マスコミ・報道機関の無能な記者たちには物理量の単位がよく分かっていない者が多いためか、放射能、放射線量と積算量と時間強度の区別が曖昧であり、誤った数値があるかもしれませんが、ご容赦ください。

 原子力発電所とは、通常運転においても作業員に不断に被曝労働を強いるものです。一度事故が起これば、通常以上の強い放射線を受けながら労働することを余儀なくされます。特に劣悪な環境における現場の作業には否応無く電力会社の子会社や孫受け会社の未熟練労働者が当たることになります。高放射線の降り注ぐ劣悪な労働環境では、線量計のアラームなど無視した労働が日常的に行われているとも聞きます。
 こうした放射線被曝を強制し、人命に関わる労働現場を必要とする原子力発電所とは、大げさに言えば労働者の生存権を脅かすものであり、あってはならないものではないでしょうか?
 既に、原発は危険なものかもしれないが、日本の電力供給には原子力は必要不可欠だから安全性を再点検した上で利用し続けるべきだという声が聞かれます。この主張がまったく科学的に誤ったものであることは既にこのホームページでは再三述べてきたとおりです。しかし、私は被曝労働を前提とするような非人間的な労働によって支えられる原子力発電など、それだけで廃止するのに十分な理由であると考えます。

No.550 (2011/03/23)ヨウ素131は無害か?

 No.547で外部被曝と内部被曝の問題に触れた。今回は、内部被曝の中でも大きな影響があると考えられる放射性ヨウ素131について考えることにする。

 原子炉事故で放出され、検出される特徴的な放射性元素にヨウ素131とセシウム137がある。報告されないがこれ以外に放射性の希ガスが大量に放出されているはずである。これらの放射性元素が大気中から検出されやすいのは希ガスは勿論気体なので環境に放出されやすく、ヨウ素やセシウムは揮発性の物質であり、比較的低温で気化して大気中に拡散するからである。
 原子炉停止直後の原子炉の破損事故では、高温状態の圧力容器において核燃料が破損した場合、希ガスとヨウ素とセシウムがまず最初に環境中に拡散することになる。中でも原子炉停止直後ではヨウ素の割合が高いのが特徴的である。

 さて、現在NHK・民放を問わず、登場する放射線医療に詳しい専門家センセイ達は、外部被曝に対する許容線量を以って内部被曝を同列に扱っている。また、現在観測されている放射性物質の内、『半減期の短い放射性ヨウ素131の影響は無視しうる』とも受け取れそうな発言をしている。これは放射性物質の特性と過去の原子力事故の実態を無視したまったく非科学的な主張であることを示すことにする。

 放射性ヨウ素131の半減期はNo.547で紹介したとおり約8日である。放射性ヨウ素131の時間経過に対する環境残留率の変化を再度示しておく。

図に示すように、継続的な補充が無ければ環境中の放射性ヨウ素131の残留量は急速に減少する。放射性ヨウ素131はベータ崩壊する。

放射性ヨウ素131はβ線(電子)を放出して安定な希ガスであるキセノン131に変化する。

 半減期が短いとはどういうことであろうか?半減期が短いほど崩壊速度が速く、したがって短期間に大量の放射線を放出することを意味する。つまり、半減期の短い核種の放射線は人体への影響が小さいのではなく、影響を与える期間が短いだけであり、代わりに短期間で激しい損傷を与えるのである。その意味で非常に危険な核種なのである。

 放射性ヨウ素131は、原子炉事故によって環境中に放出されやすく、しかも量的にも多い。その結果、事故の初期において食料や飲料水あるいは牛乳などから気付かぬまま体内に大量に取り込まれる危険性がある。たとえ外部被曝線量として急性の放射線障害の症状が現れる環境放射線レベル以下であっても、体内に取り込まれることで生態濃縮され、甲状腺に選択的に蓄積して『短期間に激しく』細胞組織をたたくのである。
 放射線障害による晩発性の障害である遺伝子異常によるガンなどの発生は、実際に放射線に被曝してから5年後、10年後あるいは数10年後に発症する。広島や長崎の原爆の被曝の影響と考えられる体調不良、ガンの発病が数10年後に現れることが珍しくないことからも分かる。
 例えば下の図に示すチェルノブイリ原発事故後の周辺地域の甲状腺がんの発症状況の変化は晩発性の放射線障害の実態を示している。

上図から分かるように、チェルノブイリ原発事故が1986年4月に起こったが、周辺地域の甲状腺がんの発症件数が顕著に増加し始めたのは1990年頃からである。周辺地域の甲状腺がんの発症件数は、現在も高いレベルにある。

 定性的にはこうした甲状腺がん発症件数の増加はチェルノブイリ原発事故後の放射性ヨウ素131による内部被曝が原因である可能性が極めて高い。つまり、事故後の早い段階で体内に放射性ヨウ素131が取り込まれ、短期間に集中的に甲状腺を構成する細胞がたたかれた影響が5年後あたりから顕在化してきたと考えられる。

 これだけ明瞭な関係が推定できる事象であるにもかかわらず、放射性ヨウ素131と晩発性甲状腺ガンの発症の因果関係を科学的・定量的に示すことは出来ない。なぜであろうか?
 まず、体内の放射性物質による汚染を検出することは技術的にかなり高度であり、一般的には行われてこなかった。また、外部被曝による急性放射線障害と異なり、内部被曝による低線量被曝では急性の身体症状が現れることが無いため、被曝当時における体内放射性物質の系統的・精密な測定自体がこれまで行われておらず、データがまったく存在しない。更に、晩発性の症状が発生する頃には、半減期の短い放射性ヨウ素131は既に甲状腺に存在せず、検出することが出来ない。

 つまり『放射性ヨウ素131と晩発性甲状腺ガンの発症の因果関係を科学的・定量的に示すことは出来ない』理由は、過去の原子力施設での重大事故において因果関係を立証するだけの系統的な疫学調査が実施されてこなかったことにより、利用し得るデータが存在していないからである。したがって、体内における低線量被曝=内部被曝によって晩発性のガンが発症する危険性を定量的に示すデータも当然存在しないのである。

註)ただし、米国はマンハッタン計画(つまり広島・長崎の原爆)あるいはネバダの核実験でのデータ収集を行っている可能性はあるが、軍事機密であるために公表されていないのかもしれない・・・。いずれにせよ現状では、“公式”には放射性ヨウ素131による晩発性の甲状腺がん発症の定量的なリスク評価は出来ないが、同時に因果関係を否定するだけのデータも存在しない。

 No.547で紹介したとおり、放射性物質からある程度の距離をもって外側から放射線を受ける外部被曝と、体内に取り込まれた放射性物質が距離ゼロで臓器を構成する細胞を直接放射線でたたく内部被曝では本質的に状況が異なる。外部被曝では影響無いという線量でも、それが体内で特定の臓器に直接・集中的に放射された場合では効果はまったく異なる。
 NHKや民放に登場する放射線医療の専門家センセイ達は、データが存在しないことによって“低線量被曝と晩発性の放射線障害の因果関係が現状では立証されていない=『低線量被曝は健康に影響しない』”というすり替えを行っているのである。

 現状で言えることは、放射性ヨウ素131を体内に取り込むことによって晩発性の甲状腺がんを中心とする放射線障害が発症する危険性が高いので、放射性ヨウ素131を出来るだけ体内に取り込まないようにすることが望ましい、ということである。

追記:

 米国科学アカデミーBEIR委員会の報告書BEIR-Z(2005年)によると、どのような低線量の被曝においても、発癌リスクはゼロではない、つまり発癌リスクに対して被曝線量の閾値は存在しないとしている。

No.549 (2011/03/22)原賠法と国民の責任

 既に放射性物質の拡散による土壌の汚染による農産物の集荷停止などの影響が出始めました。これによって農業生産者の受ける打撃は計り知れないものになります。特に乳牛畜産農家の多くは廃業に追い込まれる可能性が高いと考えられます。
 既に日本の農産物市場は福島第一原発事故発生前とはまったく異質なものとなり、否応無く人工放射性物質の存在を前提として、これにどう付き合っていくのかという段階に入ってしまったのです。
 政府は、環境にばら撒かれた放射性物質からの放射線量が小さいから大丈夫などという子供だましの説明は止めて、長期間に及ぶ事故対応を視野に入れて、周辺土壌の汚染状況を的確に調査することが風評被害を抑止するためにも急務です。

 いずれにしても、福島第一原発事故による影響は既に膨大なものになり、経済的な負担は少なく見積もっても数兆円規模になることは決定的のようです。ではこの経済的な負担は誰が担うのでしょうか?
 そこで出てくるのが『原子力損害賠償法』(通称“原賠法”)です。原発を日本に導入しようとした当初、発電コストの大きさや事故リスクの大きさに電力会社は導入に反対でした。また事故保険を引き受ける保険会社にしても加入者が限られ、一度事故が起これば保険会社の存亡に関わるような保険を引き受けることを拒否しました。
 そこで国は原賠法によって、原発事故に対する電力会社の賠償額の上限を設定し、それ以上は国家が肩代わりする=税金を投入することによって、無理やり電力会社に原発導入を認めさせたのです。
 その意味で、当初において電力会社も被害者であったかもしれません。しかしその後は原子力産業と電力会社の間に巨大な利権構造が構築され、電力使用者から不当な利益を吸い上げてきたのですから免罪することは出来ないでしょう。
 原賠法の概要を電気事業連合会のホームページから、以下に引用しておきます。


原子力発電、原子燃料製造、再処理など原子力施設の運転中に発生した事故により原子力損害を受けた被害者を救済するため、1961年に原子力損害賠償法(原賠法)が定められています。原子力損害賠償法では以下のことが定められています。

* 原子力事業者に無過失・無限の賠償責任を課すとともに、その責任を原子力事業者とする。
* 賠償責任の履行を迅速かつ確実にするため、原子力事業者に対して原子力損害賠償責任保険への加入等の損害賠償措置を講じることを義務付ける。(賠償措置額は原子炉の運転等の種類により異なりますが、通常の商業規模の原子炉の場合の賠償措置額は現在1200億円)
* 賠償措置額を超える原子力損害が発生した場合に、国が原子力事業者に必要な援助を行うことを可能とすることにより被害者救済に遺漏がないよう措置する。

 

原子力災害は、天災や社会的動乱の場合を除いて、原子力事業者に損害賠償の責任があります。電力会社は「原子力損害賠償責任保険」を保険会社と結び、また、国と「原子力損害賠償補償契約」を結ぶことになっています。事業者の責任が免ぜられた損害や保険限度額を超えた場合は、国が被害者の保護のために必要な措置をとることになっており、事業者と国が一体となって原子力損害の填補を行うようになっています。

賠償措置額については、2009年(平成21年)の原賠法の改正により、現在1サイトあたり最高1200億円となり、適用期間が10年間(2019年末まで)に延長されました。


 さて、今回の事故はどうでしょう?枝野は第一義的な責任は東電にあり、これを超える負担は国庫から行うとしました。しかし、原賠法では自然災害が免責とされていますので、東電が簡単に賠償責任を認めるかどうか、不透明です。もしこれを認めたとしても、1サイト当たりの賠償額の上限は1200億円という小さな金額であり、大部分は国庫からの保障ということになります。

 この原賠法の法体系自体が不合理です。
 原子力発電所は地震を含む自然災害の影響が回避し得ない日本という国において運用する発電システムであり、核廃棄物処理まで考えれば少なくとも数万年オーダーの期間に対して自然災害とともにあるのです。それにもかかわらず自然災害が免責事項とは一体どういうことでしょう。社会動乱(ここには勿論侵略戦争も含まれます)が免責事項とはどういうことでしょう。電力会社という私企業の生産設備の事故による損害賠償を国家が行うとはどういうことでしょうか?
 おそらく、国は本気で深刻な原子力事故が起こることなど現実的には考えていなかったはずです。無能な幇間のような原子力推進の専門家の楽観的な日本の原子力発電の『安全神話』を信じて、真摯な研究者による警鐘を無視してきた結果が今回の重大事故を引き起こしたのです。その意味で今回の福島第一原発事故は必然的におきた100%人災だと考えるべきです。

 勿論、第一義的には国の原子力政策の問題であり、経緯はともかく原子力を受け入れた電力会社の責任もとても免責できません。しかし、原子力発電所の建設には地元自治体の同意が必要ですから、原子力発電所の建設に同意した自治体、そしてその有権者にも責任の一端があることを否定できません。また原発の導入を進めてきた国家政策を黙認してきたという意味では将来世代に対する日本国民全ての責任も免責することは出来ないように思います。
 この福島第一原発からの高い代償を払った経験を未来に積極的に生かす唯一の道は、原子力発電体制からの脱却しかないのではないでしょうか?それが唯一、私たちの子孫に対してとれる責任ではないでしょうか?

 最後に、原発事故の発生後に茨城に住む読者から頂いたメールを紹介しておくことにします。


HP 管理人  近藤邦明様

 環境問題・・・のHP いつも 読ませてていただいてます
 ほぼ一年前、一度メールさせていただきましたが、
 本当に丁寧に返信いただきまして 驚き、うれしく思いました
 ブログも 読ませていただいてます

 本当に エコ なのはどんなエネルギーをどう使うことなのか、
 どんな 生活をすればいいのか
 私なりに 考えながらのんびり生きようと思っていました
 3月11日 までですが・・

 もともと、核の利用は 間違っていると 思ってはいたものの
 実際に 反対運動するでもなく、はっきりと発言するでもなく
 普通の? 日本人としての生活を送っていました
 本当に反省しています

 いま現実に起こっている原発の事故は
 あまりにも大きな危険であり、既にコントロールできる段階とは思えず
 いま 大人としてこの国に生きている一人として
 次の(ずっとあとまでの)世代に対して 大変な間違った物を作ってしまったこと
 作るのをやめさせなかったこと  残したまま死ななければならないこと
 どう謝れるのか  少しでも何かできるのか 

 今後、電力会社は原子力発電は縮小せざるを得ないと 私は勝手に思ってますが
 利用価値のない設備でも 今後何十年も(何百年以上?)
 管理しなければならない 
 原子力を進めてきた 国(官僚)・政治家・学者・メーカー などは
 家族、子孫 責任持って 携わってほしい

 何もわかってない人々には 責任はないと思う しかし
 私のように、核の危険を認識し、やめたほうがいいと思っていながら
 これまで 何の行動もしなかった人間も 大勢いるような気がします
 そういう 分かっていて何もしなかった 大勢の人間が
 一番悪かったのではないか とも思います
 自分も、実際に自分の身に危険が及びそうになり ようやく気づきました

 利用できない施設の生命維持装置を動かすだけのために
 どれだけの費用、エネルギーを使い、
 どれだけの知識・技術が必要なのか、
 誰からも注目されなくなる危険な職場?で
 どんな 我慢強い人たちが何十年、何百年 働かなければならないのでしょうか

 自分の子供・孫、更に後の世代に どうやってお願いすればいいのか

 もし事故がなかったとしても、
 誰かが 耐用年数を超えた施設、廃棄物の面倒をみる必要があります

 電力会社やメーカーにそうする義務・責任はあるのか?
 結局は 国 = 日本人 としての責任になるのかなと考えてしまいます

 成人してから 20年以上たちますが、一番大事なことを 考えないまま
 ただ 流されて暮らしていたと思います

 これから 残りの時間で どんな行動ができるのか
 子供たちに 何を教えてあげればいいのか
 
 明日からは 更に食料が手に入りにくくなりそうです
 住む場所も 考えようと思います

 まとまりない文章 すみません

 これからも 情報発信 お願い致します

 茨城県 40代 会社員 M.K.(2011年3月21日 1:39)


 

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