No.1083 (2016/02/22) 愚かな日本の外交政策:単純に考えること

 還暦を目前にしたこの歳まで生きてきて、政治屋や官僚たちの愚かさ加減がよく見えるようになってきたように思います。例えば日本の外交政策。安倍保守党政権や外務官僚たちは東アジアの緊迫した情勢を叫びたて、米国の軍事力を背景に米韓日軍事同盟によって日本の安全を守るなどとバカなことを言っています。北朝鮮に対しては拉致者を返せと高飛車な恫喝を続けておいて、北朝鮮が応じないとうそぶいています。

 何とバカバカしい。しかつめらしい顔をしていますが、本気で考えれば取るべき道は簡単明瞭です。

 まず、世界の緊張関係を作り出しているほとんどすべての原因は、圧倒的な軍事費を投入して無理難題を押し付けよう、パクスアメリカーナを構築しようとしている米国の外交政策の誤りにあります。冷静に考えてみてください、太平洋を挟んだ遠い東アジアの安全保障に米国が深く介入している現状こそがおかしいのです。そのお先棒を担いでいるのが日本です。先ずは東アジア地域に展開している米軍にお引き取り願うのが第一でしょう。
 第二に、平和のために軍備を増強するなど論理矛盾です。平和を標榜するのならば軍事力を保持しないことが最良の策です。軍事力がなければ戦争ごっこをしようと思う愚か者が登場しても、物理的に不可能ですから、これほど完全な抑止力はありません。
 第三に、外交的な係争関係は、積極的な話合い、相互の信頼・協力関係を構築することによって解決する以外にないし、それが最も効果的で安上がりな解決方法であることは明らかです。

 私は絶対平和主義者であることを繰り返し述べてきました。北朝鮮に対して恫喝によって民主化を強要するなど無理なことは分かりきったことであり、日本の軍備拡張で安全保障を実現することなど不可能だと言い続けてきました。理想論と揶揄されることも多いのですが、最近は百戦錬磨の元外交官である天木氏の主張も同様の内容であることを知り、自信を深めています(笑)。以下、最近の天木氏の論考を3つ紹介します。


天木直人のメールマガジン2016年2月10日124号

中国・北朝鮮を敵視する日韓両政府の歴史的誤り

 北朝鮮の人工衛星発射茶番劇はとっくに終わったというのに、よくも日韓両政府は、明けても暮れても、中国・北朝鮮に対する敵視政策をここまで声高に叫び続けられるものだ。
 そこまでして対米従属度を競い合いたいのか。
 何の得にもならないというのに。
 それどころではないだろう。
 韓国も日本も経済危機の克服が優先だろう。
 考えて見るがいい。
 軍事力を競い合って和平を実現できることなどあり得ない。
 どのように困難な事情があるにせよ、東西冷戦で分断された南北朝鮮の統一を目指すのが歴史の流れだ。
 北朝鮮に対する影響力を最も有する国は中国であることは皆が認めている。
 あのトランプでさえも中国に任せておけと言っている。
 その中国を味方につけての北朝鮮の暴走を止めるしかないのに、中国に文句を言ってどうする。
 なによりも中国、日本、南北朝鮮の共存共栄こそアジアのためだ。
 それなのに、米国のアジア分断作戦に乗って日米韓軍事同盟強化に走ってどうする。
 いま日韓両政府がやってることは大きな歴史の流れに逆らう愚だ。
 もはや日韓両国政府には一切の期待は持てない。
 日韓の両国民が力を合わせ、正しいアジア政策を政府に迫るしかない。
 誤りをおかし続けた大人たちを相手にしてはいけない。
 若者たちは、自分たちの将来のためにも正しい歴史をつくっていかなければいけない。
 米国の若者たちを見よ。
 74歳の老政治家のもとに結集して政治革命を起こそうとしているではないか。
 若者さえも、米国の若者に勝てないというのか。
 いまこそアジアの平和実現の為に立ち上がらなければシールズもまたウソだということだ(了)


天木直人のメールマガジン2016年2月17日143号

日米韓同盟強化で北朝鮮に対処せよと書いた朝日新聞

 きょう2月17日の朝日新聞が、その社説で、北朝鮮の挑発にどう対処すればいいかについて書いた。
 そこには、色々な事がまとまりなく並べられているが、要するに日米韓三カ国同盟を強化して、事に当たれと言っているのだ。
 日韓が昨年末に慰安婦問題を政治的合意をし、安保問題でも協力できる基盤が整った意義は大きい、とまで書いてる。
 読売や産経がこう書くならまだわかる。
 しかし、リべラル紙の雄を誇ってきた朝日がこう書いているのだ。
 まさしく対米従属の朝日の面目躍如だ。
 そして、この社説は、ショートポイントリリーフと言われている、今の社長の方針ではない。
 いずれ本格的な社長となる候補者のひとりの意向に違いない。
 その人物こそ日米同盟最優先を唱えている人物だ。
 「天木は使わない」と米国メディアに公約した人物だ。
 その朝日の社説の中に、見逃せないくだりがある。
 それは、韓国が米国の高高度迎撃ミサイルシステム「THAAD(サード)」を配備する動きについて書いたくだりだ。
 「・・・巨額の費用負担や韓国世論の動向もあり、配備は最終的に決まってはいない。THAAD配備をめぐる米韓の協議は、中国を動かすための外交カードの意味も帯びている・・・」と。
 すなわちTHAADの配備協議の結果、ただちにTHAADが韓国に配備されることにはならない、米韓協議自体が、中国や北朝鮮に対する圧力である、そう言っているのだ。
 こんな事を書ける朝日は、米国の代弁役を自認しているようなものだ。
 なぜ朝日は正しい事を書けないのだろう。
 北東の安全は、中国、南北韓国および日本の4カ国で話し合って決めるべきだと。
 その4カ国が、国民の意思を尊重して本気になって話し合えば、すべてが片付くと。
 南北韓国の統一も、中国・南北韓国と日本の歴史問題に関する和解も、そして中国脅威論の解消も、すべてが解決する。
 そのあたり前の事を、なぜ朝日は書こうとしないのか。
 それは、朝日が日米同盟を誰よりも重視する新聞社であるからだ。
 慰安婦問題で迷走した朝日が、本格的な新社長の下で再始動する時、その傾向は更に加速するに違いない(了)


天木直人のメールマガジン2016年2月22日159号

共産党と社民党はいまこそ護憲政党として結束すべきだ

 きょう2月22日の東京新聞は、憲法9条を守りたいと願う国民にとって、耐えがたい記事を二つ掲載した。
 ひとつは、一面トップで掲げた、武器輸出を促進する為に安倍政権は国際協力銀行の融資や出資を検討していると言う記事だ。
 二つは、二面に掲げた、制服組自衛官を中心とする統合幕僚監部が、背広組防衛官僚中心の内局に権限を大幅に譲歩せよと迫っているという記事だ。
 いずれも完全な憲法9条否定の危険な動きだ。
 一つ目の記事は、武器輸出三原則の逸脱どころではない。もはや政府が率先して武器を海外に売り込み、戦争で金儲けをしようとしてるということだ。日本も米国のように軍需産業なくしては成り立たない国になろうとしているということだ。
 二つ目はより深刻である。シビリアンコントロールの否定どころではない。軍人気取りの自衛隊幹部が我が国の外交・安全保障政策を牛耳ることになる。
 いずれも安倍首相の後押しがあるからこそできる暴挙だ。
 これまでの日本の政治では考えられなかったことだ。
 自民党のどの首相も、ここまではやらなかった。
 いうまでもなく、この国の戦後の政治の中で、本当の意味の護憲政党は共産党と社民党(旧社会党)だけだ。
 共産党と社民党はそれを誇りにすべきだ。
 そして共産党と社民党は、いまこそ一つの護憲政党になって、憲法9条否定を許さない安倍政権の前に立ちふさがる時である。
 いま共産党と社民党は、生き残りをかけて安倍政権打倒を叫んで野党統一に奔走している。
 しかし、共産党と社民党が本当に護憲政党なら、いまこそ解党的団結をして、この東京新聞の書いた安倍政権の露骨なまでの憲法9条否定を、阻止すべく立ち上がるべきだ。
 どうせ政権政党になれない共産党と社民党だ。
 そのような政党が、民主党などと一緒になって安倍打倒を叫ぶ。
 それでいいのか。
 そんなことより、野党に徹し切って、憲法9条の下に一つになって、安倍首相の改憲阻止に命がけで戦ったほうがはるかにすがすがしい。
 憲法9条を守りたいと考える国民は、拍手喝さいして応援するだろう。
 応援するどころか、国民はそれを渇望しているのだ。
 それこそが、そしてそれのみが、共産党と社民党が国民政党として再生できる最善の道である。
 それこそが、私が唱える新党憲法9条構想である。
 新党憲法9条構想は、共産党と社民党に対して、いまこそ結束し、新党をつくって、安倍首相にここまでないがしろにされている憲法9条を守ってほしいとエールを送っているのだ。
 その時こそ、この日本に本物のリベラル国民政党が誕生する。
 まだ参院選までに時間はある。
 共産党と社民党は、目先の政局にとらわれることなく、党の将来をかけて、いや、日本の命運をかけて、新党づくりに邁進すべきだ。
 それがわからないのか。
 私のいう事が間違っているだろうか(了)


 

No.1082 (2016/02/10) 危険で危うい自民党タカ派閣僚たち
無知発言を繰り返す丸川珠代、言論規制の高市早苗

 稲田朋美に触れたが、自民党の女性議員で目立つのはタカ派的色彩の濃い人物が多い。これはおそらく偶然ではないだろう。最近の発言で特に気にかかった二人の閣僚の発言を取り上げておく。

 まず環境大臣の丸川珠代だ。以前から問題発言をする議員であったようです。初めてこのHPで取り上げたのは民主党政権時代に仙石氏の発言に非論理的・ヒステリックに噛みついた件でした。安倍お友達内閣で環境大臣に就任した。このHPでは就任直後に電力自由化を控えて石炭火力発電所新設について噛みついた件について、その非科学的な認識について取り上げましたが、つい最近新設石炭火力発電容認に転じ、経産省と手打ちをしたようで、誠に結構なことです(笑)。
 丸川氏はご多分に漏れず安倍のお友達であり明らかなタカ派議員であり、日本核武装論にも賛成のようです。

 さて、掲題の福島原発事故に対する除染目標についての言及問題です。要するに、彼女は電力会社や原発推進勢力を慮って、1ミリシーベルトの除染目標に到達しなければ帰還したくないという住民を不快に思っているということです。しかしあまりにお粗末な発言です。
 まず、日本の放射線防護に対する法体系は、一般住民の居住地域の放射線量は年間1ミリシーベルト以下としています。3か月当たり1.3ミリシーベルト=年間5.2ミリシーベルトを超えるような場所は放射線管理区域として、一般人の立ち入りは禁止とされています。
 事故後の緊急時においては、日本の原子力政策では事故を想定していませんでしたから、ICRPの勧告を参照して、緊急避難的に受忍被爆線量を年間1〜20ミリシーベルトの範囲に抑えるとし、20ミリシーベルトを超える地域を『計画的避難地域』に指定したわけです。あくまでも年間1〜20ミリシーベルトという値は、緊急時の止むを得ない事情として許容というよりも受忍線量を緩めたものです。
 除染の完了、住民の帰還は、除染した地域が期間の限定なく通常の居住環境に復帰することが条件であることは当然であり、除染目標値は当然1ミリシーベルト未満であることは日本の放射線防護に対する法体系から見てきわめて合理的な判断です。

 こうして決められた除染目標の1ミリシーベルトという値が厳しすぎる、一部の住民の反対で決められたものだという丸川珠代は環境大臣の資質を逸していると考えます。即刻退陣していただきたいものです。

 そして、高市早苗総務相です。彼女は靖国神社参拝では常に最前列に並んで写真に写っている、筋金入りのタカ派議員です。彼女も国民の自由よりも国家体制の護持を優先する女性であり、国民の自由の制限は当然と考えているようです。

 今回は、憲法9条改正反対を主張する報道を繰り返した場合には、停波はあるのかという問いに対して、結局、その可能性を否定しないという内容です。これは恐ろしいことです。思想信条の自由、国民の知る権利の否定にもつながりかねないものです。
 来る参議院選挙で憲法改正を争点化しようとしている安倍ファッショ政権に対して、これに批判的な報道をすれば停波することもあり得るぞ、という半ば放送局に対する恫喝であり、確実に報道番組制作者を委縮させることになるでしょう。

 日本は誠に物騒な国になりつつあります。その露払いのために、自民党タカ派女性議員が重用されているのは明らかでしょう。

 

No.1081 (2016/02/09) 北朝鮮ロケット発射に対する過剰反応
火種に油を注ぐ愚かな対応がいつ破綻するのか

 2月7日の北朝鮮のロケット発射実験が成功して、自衛隊イージス艦やPAC3部隊は安堵したことでしょう。もし打ち上げが失敗してロケットの残骸が日本の領土に落下しようものなら、果たしてこれを破壊できたかどうか、とても心配していたと思います。まずはおめでたい限りです(笑)。

 2月8日の朝刊は1面から3面までほぼ全面が北朝鮮ロケット発射実験の報道ばかり。ばかばかしい。国連安保理常任理事国という核保有国グループは核兵器を独占して、世界政治を牛耳るためにNPT体制を作って核兵器の拡散を防ぐという名目でその他の国の核開発を規制しているのは周知のことでしょう。この手前勝手な理屈がまず噴飯ものです。そんな安保理常任理事国にとって、北朝鮮の行動はまことに苦々しい限りです。
 しかし、インド、パキスタン、イスラエルそして北朝鮮などはこうした安保理常任理事国の薄っぺらで手前勝手な正義を見透かして、自ら核武装することの正当性を主張しており、安保理常任理事国が核兵器を放棄しない限り、これを論破することはむつかしいでしょう。
 また米国は、イスラエルの核武装にはお構いなし、ダブルスタンダードであり、北朝鮮批判はご都合主義もいいところです。

 次に、日本です。日本は核実験やロケット発射実験を行ってきたインドに対して友好国として原子炉を輸出しようとしています。全く支離滅裂というしかありません。更に、日本自身とて、自民党や大阪維新の会は言うに及ばず、民主党の中にさえ日本の核武装容認論者が存在していることはご存知の通りです。そればかりではなく、日本はH2ロケットによって、欧米の独占市場であったロケット打ち上げ産業に参入できるほどに技術力を蓄え、更に固体燃料イプシロンロケット発射実験にも成功しています。既に核弾頭運搬技術としてのロケット技術は確立しています。そればかりか、国内には核兵器級プルトニウムを大量に保有しているのです。

 このような状況からみて、北朝鮮の非難に終始している新聞・マスコミ報道の極めて偏ったばか騒ぎは安倍ファシスト政権の北朝鮮バリの瀬戸際政策のお先棒担ぎでしかありません。本当に核兵器開発をやめさせようと考えるならば、安保理常任理事国に対しても核兵器の放棄を要求していくことが必要です。
 実際には核兵器削減を公約していた米国のオバマ政権は、ひそかに新型の小型核兵器開発を続行し、核兵器使用のハードルを下げているのが実態です。

 冷静に考えてみてください。米国やこれに同調する韓国や日本などによる経済封鎖などによる自国存亡の危機を訴えて金正恩は北朝鮮国内を引き締め、軍事技術開発を民生政策よりも優先することを正当化しているわけですが、ファシスト安倍自民党政権がやっていることも瓜二つです。北朝鮮の軍拡に対抗するために我が国も先制攻撃を含む戦争のできる国にしなくてはならないと。

 今回もまたこれまで通り、北朝鮮の核実験・ロケット発射実験を非難して、北朝鮮に対する制裁を行おうとしています。これまで繰り返されてきたことですが、この制裁を糧に北朝鮮は更に軍事技術開発に邁進するでしょう。こんなことをしていればやがて北朝鮮の軍事技術は実用レベルの核保有国に達し、不測の事態が現実のものとなる可能性が否定できません。
 日本は、本気で日本の安全を確保することを目的にするならば、米国やこれに主導されている国連などを無視して、国の面子などどうでもよいから、北朝鮮と積極的に対話して友好関係を構築することこそ重要です。北朝鮮と友好関係を構築することこそ、最も安上がりで最も現実的な対北朝鮮安全保障政策です。そのためなら、防衛予算5兆円のうち1兆円程度を北朝鮮に対する無償援助に振り向けてもお釣りがくるのではないでしょうか?

 私は、安保理常任理事国になりたいという安倍ファシスト政権の面子のために日本を危険にさらすような安全保障政策などまっぴらです。カッコウ悪くてもなんでも、平和であることは何物にも代えがたい価値があると考えます。

No.1080 (2016/02/09) ファシスト安倍のエピゴーネン稲田朋美
驚くべき憲法観/このような人間が弁護士とは・・・

 安倍ファシスト政権の憲法観については、今更多くを語ることもありませんが、少しだけ。

 安倍・自民党政権は、おそらく昨年の戦争法案の強行採決直後、参議院選挙まではあまり憲法問題を表立って国会の争点にしない方針であったろうと思います。しかし、その後の戦争法に対する国民の動向を見、世論調査の安倍政権支持率が急速に回復している状況からか、安倍は改憲に対する自信を回復したようです。本国会では自ら憲法問題を参議院選挙の争点にすることを意図しているようです。

 安倍の憲法観は民主党議員に対する答弁に如実に表れています。現憲法は敗戦日本に米国が押し付けたものであるから改憲すべきである、立憲主義というものが権力を縛るという考え方は古い、などなど。要するにファシスト安倍は、権力の都合の良いように憲法は変えればよいという立場であることを明白に打ち出しています。このような安倍を国民が支持するというのであれば、今更何をか言わんや、という気分も半分ありますが・・・。

 最新のNHK世論調査では、安倍政権支持率がなんと50%を超えたと言います。改憲に自信を回復した安倍は、もしかすると前言を翻して衆参同時選挙に打って出るかもしれません。

 さて本題です。このファシスト安倍晋三の盲従者、あるいはエピゴーネンとでもいうべきなのが稲田朋美です。彼女の言動を見れば、思想表現の自由に対する弾圧的姿勢、自衛隊体験の義務化への言及、核武装容認論と、まことに勇ましいことです。まあ、それは個人の考えですから規制できないと言えばそうなのですが、2月3日の衆議院予算委員会での彼女の主張の論理構造には驚きました。
 曰く「憲法解釈の変更で、すでに憲法9条は自衛権は認めている。日本は自衛隊という実力組織を持っている。この状態は憲法9条2項に違反していると多くの憲法学者が主張している。このままでは憲法が空洞化する。」。ここまでは良いでしょう。稲田氏はこの問題を解消するために「現状を追認するように憲法を改めるべきだ。」というのです。盗人猛々しいとはこのことです。法治国家とは、法令によって無法行為を規制することで秩序を保つ社会です。稲田氏の主張は、無法行為を免罪するために法律を改変すべきだという、無法者の恫喝です。このような人物が弁護士というのですから、今の日本は恐ろしい国です。

 

No.1079 (2016/02/01) 甘利辞任、マイナス金利、北朝鮮ミサイル実験
日本のマスコミの無能

 最近の幾つかのマスコミ報道についてコメントしておきたいと思います。

 週刊文春の記事をきっかけに甘利経済再生担当大臣の収賄疑惑が明るみに出て、先週辞任が決まりました。甘利辞任に対するマスコミ評価は噴飯物です。甘利はTPP交渉を主導し、重要な役割を果たしたとか、今後のTPP交渉に痛手などと評価していますが、バカなことを言ってはいけません。この手の交渉を実質的に進めているのは官僚であり、大臣の首がすげ変わったとしても大勢に影響など考えられません。日本を売り飛ばすTPPが甘利の辞任で頓挫するなら、これほどめでたいことはないのですが、残念ながらそんなことは全くあり得ません。
 また、報道の一部には、文春の記事は最初から甘利を嵌めようとしていた人物が周到に準備していたものであり、はめられた甘利に対する同情的な記事もあるようですが、ふざけたことを言ってはいけません。大臣室で挨拶代わりに50万円を平気で受け取る体質そのものが問題の本質であることを見失ってはいけません。
 その翌日でしたか、日銀の黒田がマイナス金利を実施することを発表しました。これはほとんど断末魔の最終手段だということは分かりきっているはずです。既に日銀は公開市場操作で市場に金をばらまいており、大企業の内部留保は250兆円を超えています。内部留保課税で吐き出させようという意見があるのはご承知の通りです。今更マイナス金利で銀行の融資を促進しようなど全く馬鹿げています。いくら銀行が融資したくても需要が無ければどうにもならないのは分かりきったことです。
 日銀や安倍政権のやってきた経済政策とは、実体経済や生活者の経済状況の改善ではなく、円安株高誘導で、大企業や投資家を肥え太らせることであったこと、実体経済を改善するという第三の矢は完全に失敗であったことが明らかになり、それを糊塗するための最終手段としてマイナス金利政策で実体経済とは既に乖離してしまっている株式市場を見かけ上活性化させようというものです。これ以上市場に金がダブつけば、何らかの投機的なバブルが膨らむだけでしょう。
 このバカバカしい大企業・投資家最優先の日本の経済政策、庶民は大企業のおこぼれで生きよという亡国経済政策によって、日本はズタズタになってしまいそうです。相変わらず経済指標ばかりを追っているマスコミ・報道機関にはうんざりです。
 そして北朝鮮のロケット発射実験の報道です。北朝鮮はロケット発射実験の準備をしているのかもしれませんが、相変わらず日本のマスコミは『ロケット発射実験と称する実質的なミサイル発射実験』と報道しています。ミサイルとはロケットエンジンで兵器としての弾頭を運搬する装置のことです。したがって、何らかの弾頭が装備されていないかぎり、ロケットであってミサイルではないのです。前回の実験もロケット発射実験でした。そしておそらく今回もロケット発射実験でしょう。勿論、北朝鮮にはこの技術を兵器に応用することを考えているでしょうが、それは可能性の問題です。
 北朝鮮のロケット技術開発を非難するのであれば、日本のロケット発射実験も同じことです。例えば先日行われた日本の固体ロケット燃料を使用するイプシロンロケットの発射実験もミサイル発射実験と呼ぶべきでしょう。液体燃料(水素燃料)を用いるH2系統のロケットエンジンは、発射時期に合わせて燃料充填を行わなければならず、ミサイルとして使用することは技術的に難しいものです。しかし固体ロケット燃料を用いるイプシロン用のロケットエンジンであれば格段にミサイルとしての可能性が広がります。
 この北朝鮮のロケット打ち上げ実験の兆候に対して、中谷防衛相は北朝鮮のロケットに対して『破壊措置命令』を発出し、イージス艦を派遣し国内にPAC3を配備しました。なんというバカバカしい対応でしょうか。
 まず、他国のロケット発射実験のロケットを撃ち落とすための準備をするなど、とんでもないことです(とは言っても、ブリキの兵隊よろしく、PAC3やイージス艦艦載ミサイルが能力的に高速のロケットを打ち落とせるとはとても思えませんが・・・。)。日本のイプシロンロケットを他国が迎撃するための準備をするという状況を考えてみてください。更に、このタイミングで北朝鮮が日本の領域内にロケットを打ち込むことは考えられません。
 おそらく防衛省の北朝鮮ロケット発射実験に対する過剰な反応は、一つには辺野古の基地問題などの国内問題から国民の目を逸らせて北朝鮮の軍事的脅威を喧伝するためであり、もう一つは軍事国家化しつつある日本において、自衛隊出動に対して国民を慣れさせるための一環であろうと考えられます。正に北朝鮮バリの瀬戸際政策と言えそうです。
 国会では新年度予算審議が開始されますが、5兆円を超える防衛省予算を合理化するために北朝鮮のロケット発射実験を最大限に活用しようとしていることは、火を見るよりも明らかでしょう。防衛省の今回の過剰対応に対するマスコミ・報道機関の報道姿勢は、全く提灯記事としか言いようがありません。

No.1078 (2016/01/24) 寒中お見舞い申し上げます・・・

 昨年末から年始にかけては、異常に暖かい日が続きましたが、このところ厳しい寒さが続いています。正に大寒という風情です。当地別府市でも、今日は朝から断続的に雪が降り続け、最高気温も0℃程度でした。ちょっとした気圧配置の違いで、温かくなったり寒くなったり、気象現象はデリケートなものです。

 昨年は、まさに戦後日本の良い部分が音を立てて瓦解した大変な年になりました。そのおかげで、若者を始め、これまで政治に無関心であった人の中にも少しづつ変化が出てきていることは確かだと思います。しかし、まだまだ気づいただけで十分には問題の本質にまで思いを致しているとはいい難い状況です。安倍ファシズム暴走政権を止めて、戦争法案を破棄するには力不足でしょう。経済状況の変化で安倍の経済政策が破たんして内部崩壊することでもない限り、反安倍の国民運動で安倍政権を退陣に追い込むことはむつかしいでしょう。おそらく夏の参議院選挙でも、安倍政権の読み通り、政権は安泰ということになるでしょう。

 しかし、あきらめることなく、粘り強く権力や資本の誤りや嘘を告発し続けていくこと、国民意識を変えることこそが世の中を変える最も確実かつ早道だと考えます。今年も及ばずながら声を出し続けていこうと思いますので、よろしくお付き合いください。

No.1077 (2016/01/11) 北朝鮮の主張を正当化する米国の行動

 No.1075において、核実験実施に対する北朝鮮の主張に合理性があることに触れました。核兵器を含む武力による力を背景とする政治を肯定している米国を筆頭とする国連安全保障理事会の常任理事国、これに同調して平和憲法を蹂躙して、米国をはじめとする勢力に加担して、自らも安全保障理事会の常任理事国入りを悲願”と考える時代錯誤のファシスト安倍晋三と彼の内閣に動かされている日本も北朝鮮と全く同類です。

 北朝鮮の核実験を受けて、さっそく米国は核兵器搭載能力を持つ爆撃機B52による示威行為=武力による脅迫を行いました。正に北朝鮮の言う通りの行動です。

 この問題について、天木氏のメールマガジンの記事を転載しておきます。


□■□■【反骨の元外交官が世界と日本の真実をリアルタイム解説】
□■ 天木直人のメールマガジン2016年1月11日第28号
==============================================================   日米韓軍事同盟は東アジアの平和にとって最大の脅威である  
==============================================================  核弾頭搭載可能の米国戦略爆撃機B52が韓国上空に飛来し、低空飛行したという。  
そのニュースをメディアは一斉に大きく取り上げた。  
なぜか。  
メディアが、それを北朝鮮に対する効果的な軍事的抑止策だと歓迎して大きく報じた、と考える馬鹿はいないだろう。  
そこまでやるか、北朝鮮との軍事的緊張が高まっていけばどうなるのか、という不安感を持って報じているのだ。  
実際のところ、このB52の韓国上空での低空飛行は、国際法が禁ずる軍事威嚇、過剰防衛そのものである。  
飛来したB52に核が搭載されていたかどうかが問題ではない。  
核搭載可能である戦略爆撃機B52機を飛来させたことに意味がある。  
確かに、国際世論に反して核実験を行った北朝鮮は愚かであり批判に値する。  
しかし核実験を繰り返す国は他にもある。  
その筆頭が米国だ。  
核実験を行う事と、核兵器を使用して特定国を攻撃する意図があるかどうかは全く別だ、というのが国際政治学者の常識だ。  
金正恩はイラクやリビアの例をあげて、核実験は米国の核攻撃に対する自衛措置だと繰り返してる。  
その言葉を信じる馬鹿はいないが、その通りであることも事実だ。  
そして、北朝鮮の核は米国に対するメッセージである事もまた国際政治学者の常識だ。  
しかもそれを一番よく知っているのは米国だ。  
その米国が、このタイミングでB52を韓国上空へ飛ばしたということは、明らかに、自国が危険にさらされていないにも拘わらず、核攻撃も辞さないと威嚇する過剰防衛である。  
他の核保有国がこんなマネをしたらただでは済まない。  
米国だから許されるのだ。  
米国が「世界の警察」という役割を果たせる国ならまだわかる。  
しかし、いまの米国はみずからそれは止めた、出来ない、と公言しはじめた国家だ。  
そうであれば、この過剰防衛に大義はない。  
ならず者国家が行うことと何も変わらない危険な軍事威嚇でしかない。  
こんなことを平気で行う米国も米国なら、それを受け入れ、自らの戦闘機を参加させて北朝鮮と敵対する韓国も韓国だ。  
同じ民族の頭上に核爆弾を落とすことも辞さないとでもいうのか。  
そう思っていたら、中谷防衛大臣の発言には驚いた。  
米国がB52を飛行させた事について、「米国と連携し、的確に対応したい」と語ったと言う。  
米国の軍事力に完全に従属している韓国と、対米従属度を競いあう日本はおろかだ。  
韓国と日本に対米従属度を競いあわせ、思う通りに米国の東アジア安全保障政策を進めようとするのが米国だ。  
日米韓三カ国軍事同盟こそ、東アジアの平和にとっての最大の脅威である(了)
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No.1076 (2016/01/08) 20世紀温暖化は自然現象を逸脱していたのか?

 2006年、ちょうど10年前になりますが、このHPの内容をまとめた最初の書籍として「温暖化は憂うべきことだろうか」を出版しました。あれから早くも10年が経過しました。この10年間、槌田敦さんと一緒に温暖化について考察を続けてきましたが、その原因は自然変動であって人為的に放出したCO2の増加とはかかわりないと結論付けてよいと確信するに至りました。そこで、今年の私の一つの目標は、20世紀温暖化の実像を科学的に考察して、その実像を明らかにする本を出版することにしました。

 今少しづつ内容を固めつつあるのですが、その中でこれまで紹介していない興味深い資料もいくつか見つけました。今回は、その中の一つの資料を紹介しようと思います。

GISP2アイスコア分析から見た20世紀気温変動の位置づけ

 気温変動についてのアイスコア分析では、南極のデータが有名ですが、GISP2アイスコアは北半球グリーンランド氷床の試料です(GISP=Greenland Ice Sheet Project)

 まず最初に示す図は、グリーンランド氷床の酸素の同位体比率δ18Oから推定したグリーンランドの気温変動と世界平均気温偏差との比較を示した図です。

 図からわかるように、世界平均気温偏差の変動傾向とグリーンランド氷床試料から推定したグリーンランドの気温変動の傾向は、極めて高い相関を示していることが分かります。したがって、グリーンランド氷床試料の過去の気温変動傾向を見ることによって、現在の気温状態が、過去の気温変動の中でどのような位置を占めるのかを判断できるのです。

 そこで、GISP2によるグリーンランド氷床の頂点付近の氷床コア試料の分析から求めた完新世の気温変動の復元図を示します。

 図の赤の実線は、HADCRUT4は英国気象庁ハードレー・センターとイーストアングリア大学気候研究ユニットのデータベースによる陸上・海上5度格子による世界平均気温偏差です。これには、Climategate事件で悪名高い気温調整が含まれているようなので、実際にはもう少し気温上昇は小さいと考えられます。
 この完新世の気温変動復元図を見ると、現在の地球の気温は小氷期の最低気温に対して1〜1.5℃程度上昇していることが分かります。それでも、1000年程前の中世温暖期のレベルにはまだ到達していないことが分かります。これは、中世温暖期には近代的な暖房施設もなくヴァイキングがグリーンランドに入植可能であったということからも、定性的に妥当です。したがって、中世温暖期以前の気温変動傾向も十分信頼に足るものと考えられます。
 更に遡ってローマ温暖期は現在よりも1℃以上高温であったことが分かります。ミノア温暖期・完新世温暖期は更に高温であり、現在よりも2℃以上高温であったことが分かります。

 以上から、20世紀〜現在の気温高温期は、温暖で文明が開化した過去の温暖期に比較してまだ低温であり、異常高温で生態系に致命的な悪影響を生じるような状況ではないことが分かります。仮に生態系の破壊が深刻であるのならば、温度要因以外の人間活動の開発圧力が原因と考えるべきです。

 このGISP2の気温変動に対して連続関数による近似曲線を求めて、近未来の気温変動を推定した興味深いグラフを紹介しておきます。


Figure 2 Proxy temperature reconstruction and forecast from the GISP2 ice core, Greenland. The current temperature rise attributed to the modern warm period does not look out of place set in the context of past climatic fluctuations referred to by Richard Lindzen. We strongly suspect that a component of recent warming is down to CO2 but we do NOT know what that proportion is compared with the natural warming cycle.

 緑色の曲線は、GISP2による西暦1855年までの気温復元図を基に求めた近似曲線です。これを見ると、2000年代初頭までは気温が上昇傾向を示しています。これは、20世紀の気温上昇が、過去の気温変動の傾向に照らして予測の範囲内の気温変動であって、人為的CO2地球温暖化仮説が言うような20世紀の特殊条件による異常な気温上昇ではないことを示しています。
 この近似曲線に現れている周期的な気温変動は月の軌道の変動と太陽活動の変動によって表れていると考えられているようです。GISP2の気温復元図のこの4000年間の長期変動傾向は-0.00052℃/年です。
 この気温変動の近似曲線の変動傾向は、現時点までの気温変動傾向を的確に予言しており、2000年以降の太陽活動の不活発化によって再び小氷期のような厳しい時代が訪れることを暗示しており、大変心配です。

 長期的にみるとミノア温暖期、ローマ温暖期、中世温暖期と1000年程度の周期で表れている温暖期の極大値は次第に低下する傾向を示しており、近い将来間氷期に終わりをつげ、寒冷な氷期に突入するのであろうと考えられます。

 

No.1075 (2016/01/06) 安倍政権に『渡りに船』の北朝鮮核実験

 さて、いつもの年ならば、年頭に当たって所信(笑)を述べるところですが、昨年の日本の崩壊があまりにも凄まじく、一体何から書くべきか、悩んでいるところです。

 そのような中で、今日午前10時過ぎに北朝鮮が核実験を行いました。私は絶対平和主義者であり、あらゆる兵器の使用、核兵器はもちろん通常兵器による殺人行為にも絶対反対の立場です。平和憲法を持つ日本が、国内外いかなる形であったとしても武力を行使することは憲法違反であり、絶対に許せない行為だと考えています。

 これを前提として、敢えて言えば、北朝鮮の行動は理解できなくもありません。北朝鮮は平和憲法を持っておらず、朝鮮戦争も終結していない戦時国家体制ですから、核兵器を含む圧倒的な武力を背景とする米国に対して、核兵器を含む武力で対抗することは、それなりに合理的であると考えるからです。

 しかし、北朝鮮の核武装によって、少なからず米国ないし韓国・北朝鮮との緊張関係が進み、偶発的な戦闘が起こる可能性が高まることは間違いないでしょう。仮に戦争状態になれば極東最大の米軍基地のある日本が無関係とは言えないのは当然です。
 直近の現実的な問題として最も困るのは、憲法すら無視する好戦的ファシストである我が安倍晋三ないし彼の政権にとって、北朝鮮の今回の核実験は、明確な憲法違反の戦争法案についての国会論戦を控えたこの時期において、反戦争法案による結束すらできないバラバラの野党の無様な状況に加えて、北朝鮮による核兵器による示威行動という目に見える形の脅威が、違憲戦争法を正当化するためにまたとない材料となることです。

 すでに日本政府は喜び勇んで安全保障会議を開き国民向けの宣伝を開始しています。これで戦争法案に対する国会論戦が後退することになるのではないか…、まことに困った問題です。

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