No.222 (2006/08/06)気候予測シミュレーションの問題点

 沖縄高専の中本正一朗先生から先生の訳書『大気寛容なれども』(原著:Richard C.J.Somerville著 THE FORGIVING AIR )という本をいただきました。これは財団法人 地球環境センターから発行されていますが、残念ながら非売品です。内容は気候予測シミュレーションに携わる研究者による一般向けの解説書です。内容は多岐にわたっており、300頁を超える大著です。
 あまり、数値計算そのものには深入りしたくないと考えているのですが、現在のシミュレーションについて(この際、モデルの妥当性は別の問題としておきます)の疑問点を少しまとめておこうと思います。

 まず重要なポイントは、気象予報シミュレーションと気候予測シミュレーションは似て非なるものであることを確認しておくことです。

 気象予測シミュレーションは、気象予報に用いられる、例えば明日の天気を占うという短期的な将来予測です。これは、現在時点の気象観測データ(初期値)を入力して、数値モデルを使って数日ないし数週間の現時点からの変容を時間方向に追跡するシミュレーションです。これは数学的には初期値問題(非定常で初期状態における影響を受ける問題)という分類に含まれるものです。
 この問題に関しては過去の気象観測データから、非常に似通った気圧配置などのデータ(初期値)を探し出し、そこからの実際の気象の変容の記録を調べると、2〜3週間後にはまったく異なる気圧配置になることが実証的に確認されています。これは気象という極めて外乱に弱い現象は、ほんの少しの条件変化でいかようにも変容しうることを示しています。つまり、いかに精巧なシミュレーションモデルを構築できたとしても、気象に影響を及ぼす初期値を完全に把握することは不可能なので(実際の気象現象に関する初期値は無限に存在するが、気象モデルは有限個のデータで処理されるため)、2〜3週間後以降の予測は必ず外れるということです。
 これはバタフライ・エフェクト(蝶の羽ばたき効果)などと呼ばれています。これは絶対に解決できない問題であり、シミュレーションモデルが精緻になり、色々な影響を取り込めば取り込むほど、微小な擾乱に対してモデルが敏感に反応することになり、逆に解の不安定性が増大する可能性を示唆しています。それ故、気象予測の精度がこれ以上劇的に改善される可能性はありません。
 おそらくここ数年、電子計算機の性能は飛躍的に向上してきており、気象予測モデルのメッシュ数は急速に増えている(これを解像度の改善と呼ぶ)はずですが、予測精度はそれほど改善されていないように思います。仮に以前よりも気象予測精度が向上しているとしたら、モデルが改善されたというよりも、気象衛星からの観測データを含む気象観測体制が整ったことによる初期データの情報量が増えた効果が大きいのではないかと考えます。

 これに対して、気候予測シミュレーションは、気象に影響を及ぼすと考えられる物理的条件を与えた場合の『定常状態』を求めるものです。定常状態とは時間に対する変化のない状態のことですから、気候予測シミュレーションには時間要素が含まれないのです(あるいは無意味)。これは数学的には『境界値問題』と呼ばれる分類に含まれます。境界値問題では、計算の起点となる初期値の影響を受けず、求める定常状態における物理的な条件だけで解が求められることが前提となります
 実際の地球環境における気候と地表環境(海洋も含む)は相互に影響を及ぼしあいながら変化した結果です。当然時間的な履歴が地表環境に作用しながら色々なフィードバックを受ける非定常で非線形な現象です。地球のたどった歴史的な変化が現在の気候に大きな影響を与えていることは間違いありません。まったく同じ物理条件に対して、地球システムのとりうる解=気候は単一には定まらないと考えるべきです。予測の基点となる初期値や時間的な変化・相互作用を無視した境界値問題として気候を予測することなど不可能だと考えられます。
 ここに現在行われている気候予測シミュレーションの大きな嘘があります。つまり現在行われているシミュレーションは、時間方向に現象を追跡して例えば西暦2100年の気候を予測しているのではないのです。実際に行っているのは、例えば(勿論二酸化炭素地球温暖化仮説が正しいという前提で)大気中の二酸化炭素濃度が700ppmに増加した場合の定常状態の仮想地球がどうなるかを計算しただけであり、その途中経過にはまったく意味がないのです。いわゆる気候感度実験というものであり、時間的な変容を「予測」しているのではないのです。他の条件が変わらないとして、二酸化炭素濃度増加の気候感度(climate sensitivity:気候システムの外部での特定の変化によって起こることが期待される気候変化の大きさ)として、もしかすると気温が上がるかもしれないというのがそこから得られる情報のすべてなのです。
 本当の意味での気候の将来予測シミュレーションでは、現在を起点とする初期値問題として、地表環境との相互作用を考慮した時間方向の追跡シミュレーションが避けられませんから、結局今日の気象予測シミュレーションモデルの予測不能性が克服できない状況からも分かるとおり、気候予測は不可能だという結論しかないのです。

 HPに寄稿いただいた江守正多氏の主張

- 一方で、「気候数値シミュレーション」は、大気中CO2濃度などの外部条件を大気-海洋-陸面系の数値モデルに与えた場合に、気候がどのようになるかの再現を試みるものであり、日々の気象(ある日のどの場所に低気圧があるか)は問題としない。
- 従って、「気象はカオスなので長期予測は不可能」という問題は、気候についてはそのままは当てはまらない。日々の気象が予測できるかどうかは、気候シミュレーションではハナから気にしていない。

は、気候感度についての数値実験(彼は『再現』と言っているが不適切な表現である)を気候予測と同一視できるというまったく裏付けのない予断に過ぎないのです。

 2月の環境経済・政策学会の温暖化に関する討論会で中本先生が「…数学的には初期値問題を解いているのか?」と疑問を呈しているのはこのあたりのことを言っておられるのだと考えます。

【参考】線形・非線形・定常・非定常・履歴

 この所、少し分かりづらい言葉が出てきていますので、言葉の説明をしておきます。

@線形と非線形

 

 ある物理現象に対する入力を x 、それに対する応答を y としてグラフを描きます。入力 x に対する応答が y1 、2倍の入力 2x に対する応答が y2 とします。このとき、y2=2y1 になる場合、入力 x と応答 y は線形関係にあると呼びます。グラフの特徴は直線だと言うことです。これ以外の場合はグラフは曲線になり、非線形関係と呼ばれます。
 線形関係にある場合は、入力をいくつかに分割してそれぞれの応答を単純に加え合わせると全体に対する応答を求めることが出来ます。しかし、非線形関係にある場合は、x の変化に伴って応答の増分が変化するために分割した入力が x 軸のどこに位置するかが分からなければ正しい応答を求めることが出来ません。

A定常・非定常・履歴

 

 横軸を時間軸、縦軸をある物理現象の応答としてグラフを描きます(上図)。時間 t の経過に対して応答が変化しない場合( t 軸に平行な直線)を定常と呼び、変化する場合を非定常と呼びます。
 ある物理現象の入力に対する応答が常に単一の直線あるいは曲線として表されるわけではありません(下図)。応答が y1 を通過点として一旦 y2 になり、その後再び y1 になった時に x1≠x3 になる場合、この物理現象は履歴に影響を受けることを示しています。

 気象あるいは気候現象は、地球システムのさまざまな要素によって構成されているので、明らかに非線形現象であり、時間の経過とともに移り変わるので非定常です。また気象あるいは気候の変動は地球システムを構成するさまざまな要素に対してフィードバックを引き起こしますので、過去の変動が現在の気象あるいは気候に反映されているので、履歴の影響を受けていると考えられるのです。

No.221 (2006/08/03)CO2地球温暖化説は科学ではない 番外編

 前回までの検討で、CO2地球温暖化脅威説がいかにいい加減なものであり、自然科学の名に値しないものであるかが明らかになったと考えています(そうは受け取らない方も多いのは承知していますが・・・)。
 これまで、例えば槌田敦氏によってエントロピー学会、物理学会、そして環境経済・政策学会を舞台として、二酸化炭素地球温暖化脅威説の自然科学的な不合理性が訴えられてきましたが、『賢明にも』二酸化炭素地球温暖化脅威説を支持する研究者は正面からこの問題に対する議論を行うことを回避して、その問題のありかを公にすることを巧妙に避けてきました。
 幸い、明日香氏らによって昨年の環境経済・政策学会において槌田氏のレポートに対する反論が行われ、今年2月の討論会につながりました。彼らのおかげで、二酸化炭素地球温暖化脅威説を支持する研究者の思考過程が整理された形で提示されたことは、非常に有意義であったと考えています。
 結論的には、二酸化炭素地球温暖化仮説ないし、大気中二酸化炭素濃度上昇化石燃料燃焼原因仮説にはまったく実証的な証拠がないことが明らかになりました。彼らの主張は地球フロンティアに代表される、国家戦略に後押しされた潤沢な研究費にたかる有象無象の似非研究者による数値計算(テレビゲーム?)と状況証拠に関する膨大なレポートの『量』を以って二酸化炭素地球温暖化脅威説を正しいのだと大衆に思い込ませる、半ば詐欺のようなものだと確信するに至りました
 明日香氏の討論会における論文数の紹介や、物理学会の査読者氏が『二酸化炭素地球温暖化説は教科書にも書いてあり、大多数の科学者の認めるところであり、今更これを検討する必要はない』という誠に情けない『理由』で槌田論文の掲載を拒否した姿勢に、日本の自然科学研究の衰退の現状が如実に現れていると考えます。

 学生あるいは若い研究者諸君には、似非研究者への道を選択しないことを衷心より祈っています。合掌。

No.220 (2006/07/28)CO2地球温暖化説は科学ではないJ

 前回まで、CO2地球温暖化脅威説の理論的な背景にある『CO2地球温暖化仮説』と『大気中CO2濃度上昇石炭・石油燃焼原因説』について検討してきましたが、結局これらの仮説を実証することが出来ないことが確認できました。CO2地球温暖化脅威説を『信じて』いる人の多くは、提示されている状況証拠の多さが仮説の正しさだと勘違いしているだけなのです。
 最も根幹にある、『近年観測されている気温の上昇傾向が大気中CO2濃度の上昇による付加的な温室効果が原因なのか』あるいは『大気中CO2濃度の上昇の原因が石炭・石油の燃焼によって排出されたCO2が大気中に選択的に残留するためなのか』はまったく実証されていないのです。これが実証されない限り、提示されている状況証拠はすべて無効なのです。
 また、明日香も含めCO2地球温暖化脅威説を主張する者は『CO2地球温暖化仮説』と『大気中CO2濃度上昇石炭・石油燃焼原因説』の自然科学的な妥当性を検討するための仮定として、『CO2地球温暖化仮説』と『大気中CO2濃度上昇石炭・石油燃焼原因説』ないしこれをもとに構成された数値モデルによるシミュレーション結果は正しいという『結論』を用いるという極めて初歩的な誤りを犯しているのです。
 『CO2地球温暖化仮説』と『大気中CO2濃度上昇石炭・石油燃焼原因説』を実証的に説明できない限り、状況証拠をいくら積み重ねても無意味です。彼らは状況証拠を重ねることによって、『CO2地球温暖化仮説』と『大気中CO2濃度上昇石炭・石油燃焼原因説』を実証できないことを糊塗しようとしているのです。これは科学ではなく詐欺行為というべきです。
 このような状況を作り出した背景には、日本における既成の学会組織がCO2地球温暖化仮説を否定するような論文を権威によって握りつぶすという異常事態がその一因となっています。明日香によると『CO2温暖化問題で過去2003年までに928件の論文があり、その中には1件も批判論文はない』ということです。これは批判が無いという事ではなく、閲読段階で握りつぶされている結果なのです。私が個人的に知る限りでも、槌田によって環境経済・政策学会や物理学会に対して再三論文の提出が行われていますが、まったく自然科学的な理論以外の理由で握りつぶされてきたのです。
 しかし、槌田の粘り強い対応の結果、ついに閲読制度を乗り越えて物理学会誌にCO2地球温暖化仮説の批判論文が掲載されることになります。槌田の粘り強い対応に敬意を表すとともに、その一翼を担えたことを誇りに思います。

 以上でとりあえず今回の検討を終了します。尚、この連載は再構成した上で本編の方に掲載する予定です。

No.219 (2006/07/24)CO2地球温暖化説は科学ではないI

 さて、CO2地球温暖化仮説の検討に入る前に、前回の内容についてもう少し補足しておくことにします。

 次に示す図は、大気中CO2濃度の変動について説明するための溶解度曲線からの模式図です。

 

 水温Tに対するCO2溶解度曲線上の点をCとします。これは水温Tにおいてヘンリーの法則を満足する平衡状態に相当します。ここでは海水面において大気中CO2に対して吸収も放出もありません。
 これに対してある海域Aでは同じ海水温、同じ大気中CO2濃度でもあるにもかかわらず、表層水のCO2濃度はC点よりも高い値を示しています(富CO2状態)。この海域では湧昇などによって供給される有機炭素が盛んに酸化されてCO2を生成していると考えられます。海域AにおけるCO2濃度のC点に対する偏差の大きさはCO2の生成速度に依存し、偏差が大きいほどCO2生成速度は大きく、活発にCO2を大気中に放出(赤い上向きの矢印)することになります。
 逆にある海域Bでは表層水のCO2濃度はC点よりも低い値を示しています(貧CO2状態)。この海域では盛んに光合成あるいはその他のポンプ作用で表層水中のCO2を消費して中深層に送り込んでいると考えられます。海域BにおけるCO2濃度のC点に対する偏差の大きさはCO2の消費速度に依存し、偏差が大きいほどCO2消費速度は大きく、活発にCO2を大気中から吸収(青い下向きの矢印)することになります。
 ここで示したように、水温Tにおける溶解度曲線に対する実際のCO2溶解量のグラフの縦方向の偏りは、着目する海域の表層水の生物化学的な特性ないし海洋中深層との物質循環に基づく特性によって規定されると考えられます。この海域の特性は、短期的で微小な水温変化には鋭敏には反応せず、大気中CO2濃度の長期的な変動傾向を支配する要因だと考えられます。

 次に、微小で短期的な水温上昇ΔTが生じると、それまで平衡状態にあった海域(点C)では平衡状態を回復するためにCO2を大気中に放出します。
 海域Aでは、水温(T+ΔT)では溶解度曲線からのプラスの偏差が更に大きくなるために、更に活発にCO2を放出するようになります。海域Bでは、溶解度曲線からのマイナスの偏差が小さくなり、吸収量は小さくなります。海域Bでは、ΔTがもう少し大きくなると逆にCO2を大気中に放出することになります。
 微小で短期的な水温低下ΔTが生じると、それまで平衡状態にあった海域(点C)では平衡状態を回復するためにCO2を大気中から吸収します。
 海域Aでは、水温(T−ΔT)では溶解度曲線からのプラスの偏差が小さくなるために、CO2の放出は小さくなります。海域Aでは、ΔTがもう少し大きくなると逆にCO2を大気中から吸収することになります。海域Bでは、溶解度曲線からのマイナスの偏差が大きくなり、更に吸収量が大きくなります。
 このように、短期的(温度変化によるフィードバックでその海域の表層水の生物化学的な特性ないし海洋中深層との物質循環に基づく特性が大きく変化しない範囲)な表層水温のプラスの変化に対して、CO2を放出する海域では更に放出が活発化し、CO2を吸収する海域では吸収が不活発化することになり、全体として大気中CO2濃度は上昇傾向を示すことになります。マイナスの変化に対しては逆のことが起こります。
 表層水温の短期的な変化は、ヘンリーの法則に基づく化学平衡状態を変化させ、短期的な大気中CO2濃度変動を引き起こすと考えられます。

 では、以下CO2地球温暖化仮説の主張を検討する事にします。

証拠5 化石燃料による大気中CO2量は350Gt-Cであり、影響は小さくない。

 CO2地球温暖化仮説では、人為的な主に化石燃料の燃焼によって大気中に放出したCO2の半分程度が大気中に蓄積し続けることによって大気中のCO2濃度が上昇するとしています。
 この考え方は、年間約200Gt-Cにも及ぶ地表(海洋も含む)と大気の間のCO2の移動という動的な変化を、単純に人為的効果以外のCO2移動は均衡しているとして無視すると言うあまりにも非現実的な仮定に基づいたものです。
 人為的な効果としても、例えば前世紀中における植生の大規模な破壊(農地の砂漠化、大規模森林伐採、都市化の進行)によってCO2排出量は増大する一方吸収側はその機能が低下していることは小さな影響ではありません。とても均衡しているから無視できると言うものではありません。
 また既に示したように、化石燃料の燃焼に伴うCO2放出の半量が大気中に止まり続けるというモデルでは、CO2放出側の変化が大気中CO2濃度を永続的に変化させるという非現実的なモデルです。
 発生源によらず、一旦大気中に放出されたCO2は、地球の炭素循環の流れに沿って移動し、多少の擾乱は急速に緩和されて定常状態に遷移すると考えられます。化石燃料の燃焼に伴うCO2だけが『選択的に』大気中に止まり続け、半永久的に大気中CO2濃度を増加させることはありません。
 これについて明日香レポートの記述を示しておきます。


 これも典型的な誤解あるいは非常にミスリーディングな議論である。6 Gtというのは一年当たりの数字であり、累計では約350 Gtの放出がある。これは産業革命以前の大気中二酸化炭素存在量の7割ほどにあたり、自然界の炭素循環過程のちょっとした変動ではとても吸収できない量である。


 この主張はCO2温暖化仮説の非現実的なモデルが正しいと仮定した場合の主張に過ぎません。また、年間6Gt-C程度の変動は、大気と地表環境との間のCO2移動量に比べて取り立てて大きな数値ではなく、『ちょっとした変動では吸収できない量』ではありません。いずれにしても実証的には彼らのモデルの正当性は確認されていないのです。

証拠6 大気中CO2に含まれるC14の存在比率が低下しているのは化石燃料の燃焼による影響である

 C14は放射性の元素であり、半減期は5730年とされています。C14は大気上層において窒素に宇宙線が作用して定常的に作られるため、大気に含まれるC14の存在比率は一定であるという仮定で年代特定のトレーサーとして用いられるものです。
 太古に生産された有機物質が変化したと考えられる石炭・石油などに含まれる炭素は、C14の含有率が著しく低いことになります。
 明日香レポートからの記述を示しておきます。


研究1:C14濃度の変化

 化石燃料由来の人為的排出による二酸化炭素は、C14含有量が小さい。したがって、図5に示したような大気中の二酸化炭素に含まれるC14の濃度変化を見れば、大気中二酸化炭素濃度上昇が化石燃料由来の人為的排出によるか否かがわかる[14](Damon et al. 1973:Baxter and Walton 1970)。

 

図5 大気中のおけるC14濃度の変化

出所: Hadley Center(2005)


 明日香の主張は、大気中に石炭・石油起源のCO2が蓄積すれば、C14の存在比率が低下することになり、それが人為起源のCO2が大気中に蓄積されている証拠だと言うものです。
 さて、C14による年代測定の精度は必ずしも高くはありません。C14の自然界における生産量にもかなりの変動があり、更に前世紀以降は核実験によってもかなり乱れています。それでも、明日香の主張には一定の説得力があるようにも思えます。
 では、石炭・石油の燃焼を起源とするCO2以外にC14の存在比率が低下する要因はないのでしょうか?
 要するにきわめて古い時代に大気と隔離された環境に蓄積されていたCであれば、やはりC14の含有量は小さくなるので、何もその原因は石炭・石油に限らないのです。例えば古い時代に堆積した有機物が地表の改変によって露出して風化したり、海洋において中深層水に含まれる数千年〜数万年あるいはそれ以前のCが海洋表層に供給されてそこで酸化された場合でもC14の存在比率は低下することになります。
 結局明日香のC14に対する主張は、CO2地球温暖化仮説の炭素増加モデルが正しくない限り、何の意味もないのです。C14の大気中濃度の低下はCO2地球温暖化仮説の炭素増加モデルの正当性の証拠にはなりません。

証拠7 大気中のO2濃度の変化から大気中に蓄積された石炭・石油起源のCO2量が分かる

 まず最初に明日香レポートの記述を紹介しておきます。


研究2:O2濃度の変化

 化石燃料由来の人為的排出によって大気中の酸素(O2)の濃度が変化する。したがって、大気中の酸素濃度の変化を見れば、大気中二酸化炭素濃度上昇が化石燃料由来の人為的排出によるか否かがわかる(図6)[15]。

 

図6 O2とCO2の観測結果から得られた近年のCO2収支に関する模式図
             出所:東北大学大気海洋変動観測研究センター(2006)

 陸上生態系による吸収は、大気の二酸化炭素の収支を地域別・季節的に分けて解析することなどにより、おもに北半球中・高緯度の植生が吸収していることがわかっている。しかし、木、草、土壌などへの配分や、どの程度安定した形で貯蔵されているかについては未解明なことも多い。陸上生態系の吸収がふえた理由の一部は、地域や生物種によって一様でないものの、二酸化炭素濃度の増加および気候変化が光合成による有機物生産に有利に働いたことで説明される。


 この主張は、あくまでもCO2地球温暖化仮説の大気中CO2濃度増加モデルが正しいことを前提に、石炭・石油起源のCO2と大気中O2濃度の変化によって、石炭・石油起源のCO2の内の半量程度が大気に蓄積することを説明しようとした模式図に過ぎないのです。
 類似の図はIPCCによっても作成されていますが、これはあくまでもCO2地球温暖化仮説の主張する大気中CO2濃度の増加過程が正しいことを前提に(大気と地表環境との間の年間200Gt-Cに上るCO2交換を無視)して、石炭・石油燃焼起源のわずか6Gt-C/y程度のCO2について陸域と海洋のCO2吸収量比を『推定』するために考案されたものに過ぎないのです。明日香はこれを事実と誤認しているようです。
 この模式図の正当性を主張するためにはCO2地球温暖化仮説の大気中CO2濃度上昇モデルの正当性を立証しておくことが必要なのです。大気中のO2濃度の変動を観測することによって大気中CO2濃度の変動が石炭・石油の燃焼によるものとする証拠にはならないのです。

証拠8 大気中CO2が石炭・石油の燃焼に因らないのであれば、陸域・海洋の炭素貯蔵量が減少するはずだが、貯蔵量は増加を示している。よって大気中CO2濃度の上昇は石炭・石油の燃焼に起因する。

 この主張はほとんど笑い話のようなもので、反論する必要もないと思うのですが、明日香をはじめとする彼のグループは実証科学というものからよほど遠いところに居るということを示す良い『逸話』ではないかと思い、紹介しておきます。ちなみに、明日香によると、6つの手法によって20の研究論文において陸域・海洋での炭素貯蔵量が増加しているそうです。論文数によって自然科学的な事実が評価できるとは思えませんが・・・。

 明日香と彼のグループ以外に、陸域・海洋の総炭素貯蔵量の計測を元に、大気中CO2濃度の増加が石炭・石油の燃焼によることを証明しようという大胆な試みをする研究者を知りません。広大な炭素貯蔵圏の全域にわたって、炭素貯蔵量を定量的に把握できるなどと考える彼らの楽観的あるいは傲慢な姿勢に敬意を表します。

No.218 (2006/07/20)CO2地球温暖化説は科学ではないH

 さて、前回までの検討で、CO2の増加が原因となって気温が上昇すると言う実証的な証拠はないことが分かりました。まずCO2地球温暖化脅威説を構成する最も基本的な仮説が崩れました。したがって、この時点でCO2地球温暖化脅威説は棄却されたわけですが、せっかくですのでその他の主張についても検討しておくことにします。

■ 大気中CO2濃度の上昇の原因は化石燃料の燃焼が原因か

1.CO2地球温暖化仮説のCO2濃度上昇モデルは非定常

 地球環境のように比較的安定した系は、何らかの擾乱に対してこれを吸収あるいは分散して新たな安定状態(定常状態)に速やかに遷移する機能を持つと考えられます。

 CO2地球温暖化仮説では大気中に含まれるCO2濃度は人為的に放出されたCO2の半量程度(r=1/2)が『選択的に』蓄積されたことによって上昇しているとしています。最初に、CO2地球温暖化仮説の想定するCO2濃度上昇過程は、比較的安定した地球環境を表現するためには欠陥モデルだということを示しておきます。
 現在の大気中CO2の総炭素重量をA(Gt-C)、最近の平均的な人為的なCO2の年間放出量をa(Gt-C/y)だとします。これがn年間継続した場合の大気中CO2濃度は次式で与えられます。

An=A+a×r×n (Gt-C)

 これがCO2地球温暖化仮説の想定する大気中CO2濃度の増加過程を表した式です。あくまでも仮定の話ですが、このモデルではa>0であればnを限りなく大きくしていくと、大気中のCO2総重量は定常状態に収束することなく無限大に発散することになります。
 つまり、CO2の発生源からの排出量にある有限量の増加があると、それだけで系の安定性は崩れて、限りなくCO2が増加する非定常系になることを示しているのです。これは比較的安定した地球環境では考えられないことです。また、一旦大気に放出されたCO2は発生源の如何にかかわらず、地球の大気循環にしたがって移動するものであり、人為的に排出されたCO2の一定部分が選択的に大気中に留まり続けるとは考えられません。また、このモデルでは、CO2の吸収側の変化をまったく考慮していないことも大きな問題です。

2.炭素循環

 地球の炭素循環の詳細は必ずしも明らかになっていません。大気と海洋の間のCO2の移動は、海洋表層を通して海洋の中深層にまで及ぶ大きな循環構造を持っています。
 大気とこれに接する海洋表層水の直接的なCO2バランスはヘンリーの法則で表される化学平衡を満足するように遷移しようとしていると考えられます。

 

 大気中のCO2濃度が安定している場合は、地球の全海域を平均的に見れば海洋からの合計のCO2放出量と吸収量は均衡し、ヘンリーの法則に従う化学平衡状態に近いように見えるでしょう。しかし実際には盛んにCO2を吸収する海域から逆に放出する海域まで大きな幅があり、より正確には吸収と放出の反応速度が平衡している定常状態だと考えるべきでしょう。
 炭素循環は解明され尽くしているわけではありませんが、年間のCO2の大気から海洋への移動速度と海洋から大気への移動速度はほぼ等しく、炭素重量(以下Gt-Cと表記)で90Gt-C/y程度だと見積もられています。
 大気と海洋の界面において、海洋と大気の間のCO2の移動方向とその速度を規定する点において、ヘンリーの法則に基づく化学平衡状態からの偏りの大きさが大きな意味を持つことは当然予想されます。しかし、単に海洋表層水と大気とのヘンリーの法則に基づく無機的な化学平衡だけで90Gt-C/yもの大量のCO2の移動を説明することは到底出来ません。
 むしろ大気〜海洋間のCO2移動方向と速度を大局的に規定しているのは海洋表層の静的な状態ではなく、海洋表層における有機炭素の生成・分解の速度だけでなく中深層との物質交換を含めた海洋全体の炭素循環の性状によると考えられるのです。
 例えば、海面水温の高い海域であっても、海洋表層において活発にCO2の消費による生物的な生産が卓越する場合や、あるいはその他のポンプ作用で中深層に炭素を活発に供給する海域では、むしろ大気中CO2の吸収が起きるはずです。逆に海面水温の低い海域であっても、湧昇流の強い海域では中深層から供給される有機炭素を活発に分解することによって大気中にCO2を放出することになります。
 大気と海洋におけるCO2バランスを考えるとき、海洋表層だけでなく中深層も含めた海洋全体の性状を考慮することが必要なのです。しかも、海洋は大気に比較して圧倒的に巨大な炭素の貯蔵圏なので、その性状に少しでも変化があれば大気中CO2濃度を劇的に変化させる可能性があるのです。
 気温あるいは海洋表層水温の平年値からの偏差の短期的な変動に関してはヘンリーの法則に基づく化学平衡に従う傾向を示すことになるでしょう。

3.観測結果の検討

 ここで、前回紹介したレポート『 大気中二酸化炭素濃度と海面水温・気温の関係(2006年近藤)』についてもう少し見ていくことにします。前回、大気中CO2濃度年増分と世界平均気温偏差年増分、平均海面水温偏差年増分との関係を時系列に沿ってみておきました。その結果、世界平均気温偏差年増分、平均海面水温偏差年増分の変動に続いて半年から1年程度遅れて大気中CO2濃度年増分が変動することが分かりました。
 今回は同じデータについて、縦軸に大気中CO2濃度年増分、横軸にそれぞれ世界平均気温偏差年増分、平均海面水温偏差年増分をとった散布図を紹介します。図中の直線は回帰直線を示しています。

 

 

 回帰直線は右上がりとなり、いずれの場合も縦軸との切片の値は1.47ppm程度になっています。また、気温の1℃の変動に対して大気中CO2濃度年増分の変化量は3.12ppm程度、海面水温の1℃の変動に対して大気中CO2濃度年増分の変化量は4.16ppm程度だということが分かります。
 注目すべき点は、気温、水温が前年と変化しなくても、この間(1970年〜2004年)、大気中CO2濃度は平均的に年間1.47ppmだけ増加しているのです。つまり、大気中CO2濃度の年間1.47ppmの増加は気温とは独立の変化量だと考えられるのです。
 前回時系列のグラフを示したとき『この二つのグラフで注目すべき点は、世界平均気温偏差年増分と平均海面水温偏差年増分が0℃の周りで変動しているのに対して大気中CO2濃度年増分は約1.5ppmの周りで変動していることです。』と述べておきました。回帰直線との切片の示す1.47ppmが時系列のグラフに示した大気中CO2濃度年増分の振幅の中心線を示しているのです。

 これを前節の考察と考え合わせれば、観測されている大気中CO2濃度の変動のうち、年間1.47ppmは中深層まで含めた海洋の性状あるいは陸上生態系の性状などに何らかの変化が起こり、相対的にCO2放出側が卓越していることに起因していると考えられるのです。また、大気中CO2濃度から1.47ppmを差し引いた残りの部分は、短期的な気温あるいは表面海水温の変動に伴い、ヘンリーの法則による化学平衡を満足するための変動だと考えられるのです。しかも気温・表面海水温の変動が大気中CO2濃度の変動に先行しているのです。これは見方を変えれば、大気中CO2の温室効果は飽和状態に近く、気温変動を引き起こす要因になっていないことの傍証だとも考えられます。

4.大気中CO2濃度変動モデル

 冒頭において、CO2地球温暖化仮説の想定するCO2濃度変動モデルが地球環境の持つ定常性とは相容れない欠陥モデルだと述べました。ここではもう少し実態に近いモデルを紹介することにします。これは、槌田によって7月6日に行われた環境経済・政策学会で提出されたモデルです。

 大気中に放出されたCO2は、発生源の種類を問わず、地球の炭素循環の中で循環すると考えられます。地表環境の主な吸収源は光合成を行う陸上植物と海洋です。植物は現在の大気のCO2濃度では、ほぼ濃度の上昇に比例して光合成速度が速くなります。また、海洋表層水は大気中のCO2濃度に比例してCO2の溶解量が決まります(ヘンリーの法則)。

 

 したがって、大気から地表環境(海洋も含む)へのCO2の吸収量は大気中の二酸化炭素濃度≒CO2のストック量に比例すると考えることはそれほど無理な仮定ではないでしょう。
 まず、大気中のCO2初期ストック量を炭素重量でAGt-C、地表環境から大気中への年間CO2放出量をaGt-C/y、地表環境のCO2吸収量bGt-C/yが大気中のCO2量に比例するものとして、その比例定数をr (0<r<1.0) とします。
 初年度の期首において1年分のCO2排出量aがまとめて放出されるとする離散的なモデルを考えます。初年度の地表環境の吸収量はrを用いると b=(A+a)r なので、初年度期末におけるCO2残留量は次の式で表すことが出来ます。

A1=A+a−b=(A+a)(1−r)=A(1−r)+a(1−r)

 同様に2年目以後の大気中のCO2ストック量の変化はつぎのように求められます。

経過年 初期ストック量 1年目排出量 2年目排出量 3年目排出量 ・・・・・・ n年目排出量
1 A(1−r) a(1−r)
2 A(1−r)2 a(1−r)2 a(1−r)
A(1−r)3 a(1−r)3 a(1−r)2 a(1−r)
n A(1−r)n a(1−r)n a(1−r)(n-1) a(1−r)(n-2) ・・・・・・ a(1−r)

 n年後期末の大気中のCO2ストック量は次式で計算されます。

An=A(1−r)n+a(1−r)n+a(1−r)(n−1)+a(1−r)(n−2)+・・・・・・・・・・+a(1−r)

n+1年後の期首におけるCO2放出量aを加えると、次のように表すことが出来ます。

  An+1=A(1−r)n+a(1−(1−r)n)/(1−(1−r))

nを十分大きな値にすると(1−r)<1.0よりAn+1は急速に収束します。収束したときの大気中CO2ストック量は次式で求めることが出来ます。

An+1=a/r [∵(1−r)n→0]

 今、仮に人為的な化石燃料起源のCO2放出量をゼロとした場合のストック量An=700Gt-C、地表環境からの年間CO2放出量a=200Gt-C/yだと仮定することによってrの値を求めます。

700=200/r ∴r=200/700=0.2857

 以上より、地表環境の年間CO2吸収量は次式で与えられます。

b=An・r=700×0.2857=200Gt-C/y

 つまり、地表環境の年間CO2吸収量は年間放出量と同量になって定常状態になります。rは地表環境の状態によって決まる特性値だと考えられます。

 次に、一年間に化石燃料の燃焼に伴って大気中に放出されるCO2の炭素重量を6Gt-C/yとした場合について検討します。収束したときの大気中の二酸化炭素ストック量は、

An'=(200+6)/0.2857=721.Gt-C

 6Gt-C/yのCO2放出量の増加による大気中ストック量の増加の上限は21Gt-Cであり、6Gt-C/yのわずか3.5年分に過ぎないのです。明日香は産業革命以後の化石燃料の燃焼によって増加した大気中CO2の炭素のグロス重量を350Gt-Cだと主張していますが、実際に蓄積されている量ははるかに小さいと考えられます。
 観測されている大気中CO2濃度がストック量に比例するとすれば、6Gt-C/yの増加による大気中CO2濃度の上昇は

21/700=0.03=3%

700Gtに対応する大気中CO2濃度を300ppmと仮定すると、6Gt-C/yの放出量の増加による大気中濃度の増加は、300×0.03=9ppmで収束することになります。しかもAnは急速に収束し、CO2放出量に変動が起きて10年もすればほとんど最終状態と変わらなくなりますから、放出側の変化が大気中CO2濃度の変動として継続し続けることはないのです。

 以上より、6Gt/y程度のCO2放出量の増加で近年観測されているような大気中CO2濃度の急激な上昇を説明することは無理なのです。大気中CO2濃度の上昇傾向は、炭素循環のバランスに何らかの変化が起こっていること、ここの検討では特性値「r」を非定常的に変化させるような事態(生態系の衰退や地表・海洋環境の物理・化学的変質など)が進行しているためと考えられます。

 次回はCO2地球温暖化仮説の主張を検討することにします。

No.217 (2006/07/19)CO2地球温暖化説は科学ではないG

3.CO2の温室効果

(2)CO2濃度の上昇の結果が気温上昇なのか

証拠4 気温変動は大気中CO2濃度の変動の結果である。

 自然現象では、常識的には時系列的にみて原因が先にあって結果は後に発現すると考えられます。CO2地球温暖化仮説が正しいとすれば、まず大気中のCO2濃度の上昇が起こり、続いて気温の上昇が起こるはずです。
 実際に観測されている大気中CO2濃度と気温の変動の2者関係に着目すると、CO2地球温暖化仮説とは逆に、気温変動が大気中CO2濃度の変動に先行する事実はありますが、その逆は今のところ報告されていません。以下に幾つかの観測結果を紹介しておきます(尚、詳細につきましては「二酸化炭素地球温暖化脅威説批判」をご覧ください。)。


@)エルニーニョ/ラニーニャ現象と大気中CO2濃度増分

註)桃色はエルニーニョ、水色はラニーニャの発現期間(2005年近藤)

 幾つかの例外はあるものの、エルニーニョが発現するとCO2濃度増分(着目時の前年同月からのCO2濃度の変化量)は大きくなり、逆にラニーニャが発現すると小さくなる傾向が分かります。

A)C.D.Keeling報告

 C.D.Keelingによるハワイのマウナロアにおける大気中CO2濃度の連続観測データから長期傾向を取り除いた気温と大気中CO2濃度の変動の2者関係を抽出したグラフです。

B)1991年6月ピナツボ山噴火前後の大気中CO2濃度の変動

 綾里、南鳥島における大気中CO2濃度の連続観測値を示したグラフです。ピナツボ山が噴火して以降、2年間ほど世界的に気温の上昇傾向が停止あるいは低下したことが観測されています。この2年間、CO2排出の傾向に大きな変化はなかった(むしろ例年の傾向以上に増加していた)ので、観測されたCO2濃度増加傾向の停滞は炭素循環における吸収側の変化、例えば火山灰による太陽放射の遮蔽効果によって、気温ないし海洋表層水の温度低下が原因となって例年以上に大気中のCO2吸収量が大きくなったことに対応していると考えられます。


 以上、観測事実からは大気中CO2濃度の変動が原因となって気温変動が起こったことを合理的に説明できる現象はないようです。
 これに対して、明日香レポートVer.2.2からの主張を紹介します。


図1は、Keeling et al.(1989)にある一つのグラフを根本(1994)が日本に紹介したものだが、端的にいうと図の見方あるいは解釈がおかしい。なぜならば、このグラフは、Keeling自身が、二酸化炭素濃度の長期的な上昇傾向(≒人間活動の影響[5])を除いた場合の気温上昇と二酸化炭素濃度上昇との関係を明らかにする目的で作成したグラフであり、それ以上でもそれ以下でもないからである。言い換えれば、この図は、ある特殊な条件のもとでの気温上昇と大気中の二酸化炭素濃度上昇との相関関係を示しているにすぎず、グラフでは温度上昇が二酸化炭素の濃度上昇に先行しているように見える理由としてKeeling自身が「エルニーニョによる二酸化炭素濃度上昇を示していると考えられる」とはっきり明言している[6]。

 また、河宮(2005)にあるように、エルニーニョなどの自然起源による二酸化炭素濃度変動振幅は0.5 ppm 程度、変動の特徴的なタイムスケールは数年程度である。例えば、大気大循環モデルを用いた地球温暖化実験において,100年程度のタイムスケールで二酸化炭素濃度が350ppm から700ppm に倍増したときの典型的な昇温幅が2〜6℃である(IPCC第三次報告書)ことを考えると、図1の振幅・タイムスケールは非常に小さなものであり、現在起きている温度上昇にはほとんど影響を与えないレベルである。このような場合、二酸化炭素は受動的な大気成分として振る舞い、気温や降水といった環境条件の変動の影響を受けそれらより位相の遅れた変動を示す。一方、20世紀後半に起きている地球温暖化問題の場合は、大きな濃度変化が長期間にわたって続くため放射バランスの変化を通じ気温を能動的に変える要因として働く。

 なお、気温上昇によって二酸化炭素濃度が増加する要因として考えられるエルニーニョだが、エルニーニョ発生年には海洋からの二酸化炭素放出が低減することが実際の観測によって明らかになっている[7]。すなわち、エルニーニョによる海面温度上昇はあるものの、「(人為的排出二酸化炭素温暖化説を否定する論者の多くが証拠を示さずに主張しているような)海面温度上昇によって海面からの二酸化炭素が放出され、それが大気中の二酸化炭素濃度上昇の主な要因となっている」という考えは全くの誤りである[8]。

 いずれにしろ、図1からだけでは、人為起源による二酸化炭素濃度上昇によって20世紀後半に起きている気温上昇の当否を議論することができない。繰り返すが、このエルニーニョの影響を示しているグラフと、20世紀後半に起きている(二酸化炭素などの温室効果ガス由来の)温暖化とは明確に分けて考える必要がある。


 まず、明日香は「・・・Keeling自身が、二酸化炭素濃度の長期的な上昇傾向(≒人間活動の影響[5])を除いた場合の気温上昇と二酸化炭素濃度上昇との関係を明らかにする目的で作成したグラフであり、・・・」と述べていますが、ここでもCO2地球温暖化仮説の仮定を理由にするという愚かな間違いを犯しています。『大気中CO2濃度の長期的な上昇傾向≒人間活動の影響』というのはCO2地球温暖化仮設の仮定であり、なんら実証された事実ではないのです(詳細については別項目で詳述)。それ故Keelingのグラフは直接気温変動と連動しない長期傾向を取り除いて気温と大気中CO2濃度の2者関係を分かりやすく示しているのです。これが正に気温とCO2濃度の関係なのです。CO2温暖化仮説はともかくここで私たちが議論しているのは、大気中CO2濃度(人為的な影響か否かは問わず)の変動が気温変動の原因となりうるか否かという1点だけなのです。
 明日香は「グラフでは温度上昇が二酸化炭素の濃度上昇に先行しているように見える理由としてKeeling自身が「エルニーニョによる二酸化炭素濃度上昇を示していると考えられる」とはっきり明言している[6]。」と、Keelingの示したグラフの解釈において、エルニーニョ(=海面水温の上昇)によって大気中CO2濃度が上昇していることを認めています。この時点でCO2地球温暖化仮説は破綻しています。
 次に明日香が引用した河宮の主張については、CO2地球温暖化仮説に基づくシミュレーションを元にした議論であり、検討の必要はありません。
 次に明日香は「なお、気温上昇によって二酸化炭素濃度が増加する要因として考えられるエルニーニョだが、エルニーニョ発生年には海洋からの二酸化炭素放出が低減することが実際の観測によって明らかになっている[7]。」と述べています。明日香レポートの別項で示された図を引用します。

 

 このグラフに対して、明日香は「上の方92,93年がエルニーニョ発生年、下の方の96年は非エルニーニョ発生年にあたり、エルニーニョ発生年の方が、CO2放出が小さくなっていることがわかる。」と述べています。
 しかしながら、ここに示された観測結果の時期が問題になります。前に示した「マウナロアにおける大気中二酸化炭素濃度増分の経年変化(2005年近藤)」で分かるように、1992〜1993年のエルニーニョは特殊なケースで、1991年6月のピナツボ山の噴火の影響で大気中CO2濃度が例外的に低下した時期に重なっているのです。この特殊な時期の観測データだけでは判断の下しようはないのです。
 最後に明日香は「いずれにしろ、図1からだけでは、人為起源による二酸化炭素濃度上昇によって20世紀後半に起きている気温上昇の当否を議論することができない。繰り返すが、このエルニーニョの影響を示しているグラフと、20世紀後半に起きている(二酸化炭素などの温室効果ガス由来の)温暖化とは明確に分けて考える必要がある。」と結論付けていますここでもまた愚かにもCO2地球温暖化仮説の仮定を理由としている無意味な主張です。繰り返しますが、ここではこの主張の当否を検証しているのです。
 いずれにしても明日香の主張は、反証に対する疑義の提出に終始し、肝心の『何故に気温上昇の原因であるはずの大気中CO2濃度の上昇が気温上昇の後に発現するのか』と言うことを実証的になんら説明できないのです。この点を実証的に示しえない限り、CO2地球温暖化仮説は棄却されます。

 最後に、エルニーニョ/ラニーニャやピナツボ山の噴火の影響も含めて、本HP所収のレポート『 大気中二酸化炭素濃度と海面水温・気温の関係(2006年近藤)』から大気中のCO2濃度と世界平均気温偏差および平均海面水温偏差の年増分を比較したグラフを示しておきます。

 気温、海面水温のいずれの変動も大気中CO2濃度の変動に先行しておきていることが分かります。問題の1992年前後のエルニーニョとCO2排出量の不整合も、平均海面水温偏差から見ると合理的に説明できるのです。
 この二つのグラフで注目すべき点は、世界平均気温偏差年増分と平均海面水温偏差年増分が0℃の周りで変動しているのに対して大気中CO2濃度年増分は約1.5ppmの周りで変動していることです。この点を含めて、次回は大気中CO2濃度の変動の主因が人為的なCO2排出の蓄積によるのかどうかを検討することにします。

No.216 (2006/07/18)CO2地球温暖化説は科学ではないF

3.CO2の温室効果

(1)気温上昇の主因はCO2による温室効果か

証拠3 異常に増えているCO2の温室効果が気温変動の主因である。気温変動において水蒸気の温室効果は直接の原因となる放射強制力にはならない。

 地球温暖化仮説では、近年観測されている気温上昇の主因が大気中CO2濃度の増加による温室効果であるとしています。しかし、現在の大気組成において大気中CO2濃度の上昇による温室効果が一体どの程度の気温上昇効果を持つのか、実証的にはなんら説明されていません。まずこれを立証することが必要です。
 温室効果に簡単に触れておきます。地球大気を構成する気体の内で、可視光線を中心とする太陽放射をよく透過し、赤外線領域に分布する地球放射を吸収する性質を持つ気体のことを『温室効果ガス』と呼びます。

 

 温室効果を持つ気体分子(3原子分子以上)は、固有振動数に応じた電磁波の周波数成分のエネルギーを吸収します。CO2は地球放射の分布する周波数帯では、主に波長15μm付近の赤外線を吸収します。地球大気は平均的にみると、既に地球放射の95%程度を捕捉しており、今後いくら温室効果ガス濃度が上昇しても、吸収するエネルギーの増加量はわずかです。
 しかも大気が吸収したエネルギーを再放射するとき、100%が地表方向に向けられて地表を暖めるわけではなく、大気上層から宇宙空間へ出て行くものもありますからいくら温室効果ガスが増えようとも地球放射の100%が温室効果に寄与することはありません。

 地球の水蒸気を除いた大気組成の概略は次のとおりです。

窒素 78%
酸素 21%
アルゴン 0.934%
二酸化炭素 0.037% (370ppm)
ネオン 0.0018%

 CO2地球温暖化仮説や法律の規定では、温室効果ガスに水蒸気を恣意的に含めないという扱いをしています。法律の規定に含めないのは良いとしても、自然科学として地球の気候現象を語るとき、温室効果ガスとして最も大きな影響を持っているのは水蒸気なのだということは確認しておかなくてはなりません。

 

 大気中における水蒸気濃度は気象条件によって大きく変動しますが、地球環境では概ね1000ppm〜50000ppm程度の範囲にあります。CO2の大気中濃度に比べてオーダーで10倍から100倍という大きなものです。また、地球放射に対する吸収帯域も、H2Oの特殊な振動モードによって、波長12μm以上のほとんどすべての範囲に及んでいます。その結果、雲(雲は12μm以下の「大気の窓」も含めてすべての帯域で地球放射を吸収する。)による影響も含めると、地球大気の全温室効果の90%以上は水蒸気の温室効果によるものです。
 大気中CO2濃度が上昇したとしても、その効果が現れるのは、大気中の水蒸気濃度が極端に低い環境に限られることになります。

 では実際の地球放射に対するCO2の温室効果はどの程度機能しているのでしょうか?

 

 これもおなじみのニンバス4号による快晴のサハラ砂漠の昼間の地球放射の観測値です。このグラフを見るときサハラ砂漠という特殊環境を考慮する必要があります。

@地表温度が標準的な環境に比べて異常に高いこと。グラフでは地表温度は47℃以上だと考えられます。これはそれだけ地球放射強度が高いことを意味しています。
Aサハラ砂漠は異常に乾燥した大気の状態であり、水蒸気・雲による温室効果が極端に低くなっています。

 このサハラ砂漠の特殊な環境下においても、既にCO2は地球放射の75%程度を吸収しているのです。地表温度15℃程度の標準的な環境に対しては、温室効果に有効に働く大気中CO2濃度は既に飽和しているか、それに近い状態にあるのです。
 CO2による温室効果が相対的に大きく現れる大気中の水蒸気濃度の低い環境とは具体的には、砂漠のような特殊環境と温帯の冬期、亜寒帯、寒帯が考えられます。砂漠のような特殊環境を除けば寒冷な地域(季節)であり、地球放射レベル自体が低いため顕著な地球放射の吸収量の増加はありません。

 CO2地球温暖化仮説では放射強制力という数値がよく登場します。

 上図は、産業革命以降に生じた温室効果気体やエーロゾル(1750年から250年間でそれぞれの要因がどれだけ影響を及ぼしたか)の増加によってもたらされた放射強制力を示しているとされています。放射強制力が正の場合、地上気温を上げることを示しています。放射強制力とは、気温変動に関与するだろうと考えられる要因に便宜的な数値を与えたもので、実証的な数値ではありません。
 放射強制力とは、地球の平均気温15℃を保証しているのは水蒸気による温室効果であることを前提として、これを基準点として(=無視して)、そこからの気温変動を水蒸気の温室効果以外の要因で相対的に表現しようという便宜的な尺度に過ぎないのです。
 これは、気候現象の中で温室効果だけでなく大きな役割を果たしているが、その振る舞いの複雑さから未だに定量的には言うに及ばず、定性的にも解明されていない水蒸気を除外して、話を単純化するためには一つの方法ではありますが、気候現象を自然科学の問題として取り扱うためには極めて乱暴な仮定です。

 ここで、再び環境経済・政策学会の討論会での明日香の発言を紹介します。


 CO2よりも水蒸気の方が温室効果ガスとして強い効果があるという説があります。これも間違いです。確かに、地球の地表温度が-18℃ではなく15℃で安定しているのは水蒸気と雲です。IPCCの90年の報告書では水蒸気だけで60〜70%、雲と合計して80〜90%です。しかし、これは20世紀後半の急激な温度変化を招いているCO2の効果とはまったく別の話です。大気中の水蒸気量を決めるのは蒸発・降水であり、大気中の平均滞在時間も10日と短い。水を蒸発させると1週間程度で元の水に戻ってしまいます。何千年間の間、水蒸気の蒸発・降水によって、人間とは関係のない水蒸気によって15℃と保たれている。そのバランスを壊すのがCO2です。水蒸気は直接影響にはならないのです。
 したがって、現時点で進行している温暖化において、水蒸気は直接の原因となる放射強制力とはならずに受動的にフィードバックの効果として温暖化に影響する。これからバランスを壊すものとして水蒸気は弱い。
(北海道E.F.氏提供のVTRより 文責 近藤)


 明日香の前段の説明は、既に触れた放射強制力というものの定義を述べているに過ぎません。つまり、水蒸気と雲の温室効果を主体とする地球大気の温室効果によって安定して(実際には非常に大きな気温変動を示しているが・・・)15℃を維持していた気温を基準点として、そこからの変動を考えた場合に関連すると思われる要因に数値を与えたのです。
 この定義(自然科学的な妥当性は別問題だが・・・)に従えば水蒸気と雲による温室効果ははじめから放射強制力の要因から排除しているのですから、水蒸気と雲に放射強制力がないのは当然です。明日香の主張は、この放射強制力の定義を自然科学的な実態ないし事実と誤認あるいは恣意的に混乱して述べているだけであり、何ら実証的な証拠はありません。
 ここに述べられている明日香の主張は、事実と言うよりもCO2温暖化仮説ないし幼稚な数値シミューレーションが扱いきれない水蒸気と雲に対して、放射強制力という便宜的な数値を定義することによって、水蒸気と雲を「合理的」に抹殺することによって成り立っているCO2温暖化モデルを正当化しているだけです。
 水蒸気や雲には気温を変動させる放射強制力がなく、受動的にフィードバック機構としてのみ機能するというのは、事実がそうだということではなく、彼らのモデルがそう仮定しているのです。
 また、明日香の主張は暗に前世紀中の「急激」な気温上昇の原因を温室効果によるものとして議論していますが、これもまたまったく立証されていません。今まさにその妥当性を議論しているのです。

 温室効果とは、着目した時点における大気組成がどのような構成になっているかが問題であり、水蒸気と雲という温室効果の最大因子を無視した放射強制力で議論することに意味はありません。平均滞在時間の長短など意味はなく、あくまでも大気組成あるいは雲の状態によって温室効果は決まります。CO2の温室効果は大気の温室効果全体から見るとごく一部に過ぎません。温室効果において水蒸気と雲の温室効果は決定的に重要であり、これを除いた議論は無意味です。

 気候現象という非線形現象では単純な部分的な効果の重ねあわせによって現象全体を再現することが出来ないのです。基準値として水蒸気と雲の効果を無視して(あるいは独立な事象として)、そこからの相対的な変動で現象を表現するという放射強制力という考え方自体が、非線形現象のモデル化として科学的な妥当性を欠くものなのです。また、現在の大気組成において、大気中CO2濃度の上昇によって「有効」に働く温室効果がどの程度増え、それによってどの程度の温度上昇が生じているのかを実証的に示さない限り、証拠3は棄却されます。

No.215 (2006/07/17)CO2地球温暖化説は科学ではないE

2.CO2地球温暖化仮説の痕跡を探る

(2)近年の気温上昇は自然には起こりえない

証拠2 前世紀中の急激な気温上昇、0.6℃/100年 は自然現象としてはかつて経験したことのないものであり、したがって人為的な原因=大気中CO2濃度の上昇による温室効果の増大が原因である。

 これも自然科学的な現象の立証のための証拠としては余りにも説得力に欠けるものです。2月の環境経済・政策学会における明日香発言を紹介しておきます。


 温度変化の理由は何かと言うことになりますが、温度上昇の速度が過去に例をみない。勿論これだけでは証明になりませんが、少なくとも何かが起こっていると言えるのではないか。
 産業革命以降、CO2濃度は280ppmから368ppmまで急激に増加している。一方現在の温度は過去65万年間になかったもので、上昇速度も過去2万年にはないものです。いろんな自然現象の結果としてのCO2。しかし、自然現象以外のものがおきていると考える方が自然という気がします。少なくとも人為的CO2の排出とCO2濃度は関係があると言えます。
(北海道E.F.氏提供のVTRより 文責 近藤)


 何とも乱暴な議論です。結局「過去に例をみない」ことをだけを理由に、これをCO2濃度の上昇に結び付けているだけです。たとえこの発言内容が事実であったとしても、とてもCO2温暖化仮説の立証のための証拠としては弱すぎます。
 では、内容について少し確認しておきます。以下に幾つかの気温変動の記録を紹介しておきます。

註)基準線は±3℃に対応

 最後に示した図は、ダンスガード・サイクル(Dansgaard-Oeschger Oscillation)と呼ばれる気温変動サイクルの記録を示しています。多田(多田隆治:プルームテクトニクスと全地球史解読所収「ダンスガード・サイクル」)は次のように述べています。

・・・わずか10年前後の間におこる急激な温暖化,徐々に寒冷化しつつも数百年〜数千年間継続する温暖期(亜間氷期と呼ばれる),数十年の間におこる急激な寒冷化、数百年〜数千年間継続する寒冷期の繰り返しで特徴づ付けられ,その振幅は気温で表すと7℃以上に及ぶ(図1)。

 以上幾つかの事実を紹介しましたが、過去の歴史的な事実からは気温は常態として急激な変動を示しているのです。0.6℃/100年は過去の記録に比べるとまったく普通の出来事でしかありません。証拠2は事実によって完全に否定されているのです。

No.214 (2006/07/16)CO2地球温暖化説は科学ではないD

■ CO2地球温暖化仮説についての検討

2.CO2地球温暖化仮説の痕跡を探る

 前回、南極のアイスコアの分析結果について検討しました。歴史的な事実の記録として、ほとんど唯一大気中CO2濃度と気温変動の直接的な関係を予見させるデータでしたが、残念ながらCO2温暖化仮説の立証には結びつかず、明日香も含めてCO2温暖化仮説支持者も「気温変動によってCO2濃度の変動が起こった」ものであることを認めざるを得なかったようです。
 アイスコアの分析結果を利用できないことになると、過去の記録や観測データという実証的な証拠からCO2地球温暖化仮説を立証することは非常に困難な状況となりました。その結果、CO2地球温暖化仮説の『立証』は、状況証拠や消去法の積み重ねだけになりました。ここではそのいくつかを紹介することにします。

(1)近年の大気中CO2濃度の上昇と気温上昇が同期している

証拠1 産業革命の少し前から大気中CO2濃度は上昇し始め、同時に気温も上昇している。したがって気温の上昇はCO2濃度の上昇による温室効果の増大の結果である。

 これは自然科学的な現象の証拠としてあはあまりにもお粗末なもので、まったく説明になっていません。参考のために二つのグラフを示しておきます。

 大気中CO2濃度は単調な上昇傾向を示していますが、平均気温の変動はそれほど単調なものではありません。1940年代に極大期を迎えた後に低温化が進み、1970年代後半から再び上昇傾向を示しています。

@1940年代から1970年代の30年間に及ぶ低温化傾向をどのように解釈すればよいのでしょうか?
A南極のアイスコアの分析結果においては、気温変動が原因でこれが大気中CO2濃度の変動を引き起こしたと認めたにもかかわらず、前世紀においては原因と結果が逆転していると主張する根拠は何なのでしょうか?

 この点に関する明日香の主張を以下に引用しておきます。


<反論>

 地球の平均気温は二酸化炭素濃度に見合った平衡状態に達しているわけではなく、前述のように、気温変化には様々な因子がある。したがって、気温と二酸化炭素濃度がぴったり対応しないのは必ずしも不思議なことではない。前世界大戦後の大気中の二酸化炭素濃度の上昇率が大きくなった時期は、火山噴火などの自然要因と人為起源エーロゾルの冷却効果が温暖化を打ち消していたと考えられる。

 このような過去の事象は、気候モデルによる20世紀の再現実験によって示すことができる。例えば、仮に二酸化炭素やエーロゾルなどの人為起源物質の増加が無いという条件でシミュレーションを行うと、(自然の変動要因と気候の内部変動だけでは)20世紀後半の気温上昇の大きさは再現できない。これらは、20世紀後半においては、二酸化炭素が「原因」で温度が「結果」であることを強く示唆している。


 そもそも気候の変動要因は多岐にわたっており、未だ解明されていないことは誰もが認めています。そのような状況の中において大気中CO2濃度の変動による温室効果の変動が主導的な役割を果たしていると主張するのがCO2地球温暖化仮説なのです。これを立証しようとするならば、CO2温暖化仮説とは相容れないように見える現象について、なぜそのような現象が発現したかをCO2温暖化仮説と、それと矛盾しない理論構成を以って説明しなければなりません。
 「したがって、気温と二酸化炭素濃度がぴったり対応しないのは必ずしも不思議なことではない。」では説明にはなりません。可能性の問題、一般論として「前世界大戦後の大気中の二酸化炭素濃度の上昇率が大きくなった時期は、火山噴火などの自然要因と人為起源エーロゾルの冷却効果が温暖化を打ち消していたと考えられる。」では何の意味もないのです。具体的・実証的にどのようなことが起こっていたのかを特定しなければこの反証を棄却することは出来ません。

 後半のシミュレーションモデルによる解釈はまったく無意味なのでコメントの必要はありません。

 蛇足ですが、観測されている気温変動と同期する実証的な観測データを幾つか挙げておきます。


No.213 (2006/07/15)CO2地球温暖化説は科学ではないC

■ CO2地球温暖化仮説についての検討

1.南極アイスコア分析結果について
 
 CO2地球温暖化仮説を予想させるほとんど唯一の事実に即した分析結果として南極のアイスコアの分析結果があります。

 

 アイスコアの分析結果から、過去の気温と大気中のCO2濃度とCH4濃度の変動傾向が極めて高い相関を示すことが知られています。
 一般的に、伴って変動する複数の物理量がある場合、物理量の内のいずれかが原因となって、他の物理量はそれに従属して変動していると考えられます。アイスコアの分析結果によると、確かに大気中CO2濃度と気温はよく同期して変動しているように見えます。しかしCO2濃度に同期しているのは気温だけでなくCH4濃度も同様です。少なくともこの分析結果を見るだけでは『大気中CO2濃度の変動が主因となって気温が変動する』ことの立証にはなりません。
 CO2地球温暖化仮説では、こうした変動の物理的な背景には触れずに、いきなりCO2による温室効果の変動によって気温が変動していると解釈します。仮に温室効果の変動による気温変動であるならば、その効果はCH4よりも圧倒的に変動の大きいCO2の大気中濃度の変動が主因である、と言うことになります。

 これに対して、海洋表層水のCO2の吸収特性はヘンリーの法則ないし気体の海水への溶解量の温度効果によって規定されることが知られています。本HP所収の角皆レポートによると、現在の海洋表層水では1℃の水温変動で含まれるCO2量は4%程度変動する(溶解ポンプ)としています。

 また、アイスコアの分析結果の気温変動を説明するものとしてミランコビッチサイクルという地球の天体としての軌道や地軸の傾きの変動、あるいは際差運動によって、地球の太陽光に対する受光特性の変動によって気温変動が引き起こされるという説が有力視されています。

 以上二つの事実を総合すれば、ミランコビッチサイクルによる地球の受光特性によって気温が変動し、これによって海洋などがCO2やCH4を吸収・排気することによって大気中濃度が従属的に変動すると、論理的に矛盾無く説明できます。

 アイスコアの分析結果がCO2地球温暖化仮説の歴史的な記録であると主張するなら、少なくとも以下の2点を示さなくてはなりません。
@氷期・間氷期の大気中CO2濃度の変動100ppmによってその間の約10℃の気温変動をもたらすだけの温室効果の変動を立証すること。
Aミランコビッチサイクルの影響を否定し、大気中CO2濃度の周期変動の原因を特定すること。

 これに対して、明日香レポートVer2.2は次のように主張しています。


 前述のように、過去の気候変動で二酸化炭素やメタンを増加させていたトリガーは、気温であってもよく、これも含めて、現在の科学は以下の3つを同時に認めている。

1)気温が原因で二酸化炭素濃度が変わる
2)二酸化炭素濃度が原因で気温が変わる
3)近年の100年スケールの気温上昇は、2)がトリガーである(前の証拠1に対する反論を参照のこと)

 まず、強調したいのは、1)は2)、3)と両立するので、1)を認めたら最後、2)も3)も主張してはいけないという議論は成り立たないことである。人為的排出二酸化炭素温暖化説が主張しているのは、あくまでも20世紀後半の温度上昇に関しては二酸化炭素が原因であるということであり、それ以外の過去における温度上昇においては、気温が原因で二酸化炭素濃度が変化した場合が数多く存在することは最初から認めている[9]。したがって、「周期的イベント」を示すこと自体が必要とされておらず、人為的排出二酸化炭素温暖化説の研究者は示そうともしていない。
(傍線近藤)


 (この反論に対する検討は既に「CO2地球温暖化脅威説を考える」討論1の2.リプライ『素朴な疑問』において行っているので、詳細はこれを参照していただきたい。)
 明日香レポートの問題点は、ここでの議論は説明するまでも無く「2)二酸化炭素濃度が原因で気温が変わる」というCO2地球温暖化仮説の妥当性を検討することにあるにもかかわらず、何の説明もなしにこれを「現在の科学は以下の3つを同時に認めている」としてしまっていることです。これが科学的に立証されているのならばはじめから議論は必要ないのです。あるいは、一般論としてCO2が温室効果ガスであるという「事実」とCO2地球温暖化仮説を故意に同一視して議論を意図的に混乱させているのであり、いずれにしても自然科学の問題を議論する態度として不適切です。
 また「3)近年の100年スケールの気温上昇は、2)がトリガーである」と述べていますが、これも同様であり、まったく説明になっていません。この主張の妥当性を議論しているのです。
 明日香の全ての主張はCO2地球温暖化仮説が正しいこと、これを元に構成されたシミュレーション結果を事実と誤認してこれを根拠として自然現象を解釈してみせているだけであり、なんら実証的な説明を行っていません。
 明日香の主張はCO2地球温暖化仮説の支持者の典型的なものであり、CO2地球温暖化仮説の検証にCO2地球温暖化仮説の結果を引用するという誠に非論理的な構成となっていることを「強調」しておきます。

 「あくまでも20世紀後半の温度上昇に関しては二酸化炭素が原因であるということであり、それ以外の過去における温度上昇においては、気温が原因で二酸化炭素濃度が変化した場合が数多く存在することは最初から認めている」とも述べ、南極アイスコア分析結果をCO2地球温暖化仮説の立証の根拠とすることをあきらめたようですから、議論はここまでとします。

No.212 (2006/07/14)CO2地球温暖化説は科学ではないB

■ 仮説はいかに棄却されるか

 @で述べたとおり、自然科学的な仮説を立証するためには『対象とする現象にたいして、仮説と現実とが『例外なく』整合性を持つ』ことを示すことが必要になります。
 では仮説を否定(棄却)するためにはどうすればよいでしょうか?これは論理学の問題であり、『対象とする現象に対して、仮説と現実が『唯一つでも』整合性を欠く』とき、自然科学的な仮説は否定されることになります。
 それ故、自然科学的な仮説を立証しようとするためには膨大なデータを分析・検討することが必要であり、私のような素人が取り組むことはあまりにも無謀であり、また出来るわけもありません(それ故、CO2地球温暖化脅威説に変わる気候モデルを提示するつもりなど毛頭ありません)。
 しかし、自然科学的な仮説を否定することは素人にとっても誠に簡単なことなのです。自然科学とは普遍性を求める厳格なものであるだけに、『寛容』さとは対極に位置するものです。もし私が仮説と明らかに矛盾する現象(反証)を一つでも見つけることが出来れば、仮説はその時点で棄却されるのです(この際、現実に起こっている現象である限り、理論的な背景は知らなくてもかまわない。)。
 もしそれでも仮説の正当性を主張するのであれば、仮説を主張する者の責任において、示された反証を仮説に立脚して論理的に説明することが、必要になります。この際、反証を否定するためには反証に対する再反証を挙げることでは否定できず、反証を直接否定できることを立証することが必要になることは言うまでもありません。

 今回、少しくどい説明になりましたが、この点がCO2地球温暖化脅威説が科学ではないと言う主張の論理的な背景になりますので、お許しください。
 世間では、『自然現象についての仮説なのだから、例外が幾つかあっても全体が否定されるようなことは無い』と言う議論があるようですが、自然科学とはそれほど寛容なものではありません。仮説に対して反しているように見える事象に対しても、仮説とそのほかの既に立証されている理論・法則によって、矛盾無く論理的な整合性を以って説明できない限り、仮説は棄却する以外に無いのです。

 これで自然科学における仮説を棄却するための手続きが分かりましたので、次回からCO2地球温暖化脅威説についての具体的な検討に入ることにします。

No.211 (2006/07/13)CO2地球温暖化説は科学ではないA

■ CO2地球温暖化脅威説

 現在流布されているCO2地球温暖化仮説をもう少し詳細に定義し直しておくことにします。ここには3つの構成要素があります。

1.CO2地球温暖化仮説

 これは、前回も触れたとおり、CO2が地球放射の内15μm付近の赤外線を吸収するという事実によるものです。地球大気を構成する気体分子(3原子分子以上)は各気体ごとの個別の固有振動数に応じた電磁波を吸収します。CO2地球温暖化仮説では、産業革命以降の大気中CO2濃度の上昇によって、地球放射に対する大気の吸収特性が変わり、以前よりも多くの地球放射を吸収し、それが大気の温室効果を大きくしたことが主因となって地表環境の気温上昇が起きているという仮説です。これがCO2地球温暖化仮説の理論的な核心部分です。

2.大気中CO2濃度の上昇の原因は化石燃料の燃焼が原因

 産業革命の少し前までは、大気中CO2濃度は280ppm程度で安定していたと考えられていますが、それ以後次第に上昇し、現在では360ppm程度になっています。CO2地球温暖化仮説ではCO2濃度の上昇は、産業革命以後、石炭や石油という炭化水素燃料消費量が増えたことが原因であるとしています。

3.温暖化は生態系に破滅的な悪影響を及ぼす

 現在の地球表面環境の全球平均気温は15℃程度と言われています。今後地球の表面環境の全球平均気温が数℃上昇することによる気候現象を含む環境変化は、地球生態系に破滅的な悪影響を与えると主張しています。これを私は個人的に温暖化脅威説と呼ぶことにしています。
 もし仮に、CO2地球温暖化仮説が単に気候変動モデルの一つに過ぎなければ、ことはこれほど異常な社会的な反応を引き起こすことは無かったはずです。これが温暖化脅威説と結びついて主要先進国の国家、企業、そして無能・無責任なマスコミ報道機関の合作によるオウム真理教顔負けの世界的な規模のハルマゲドン的恐怖宣伝によって現在の社会状況が生まれたのです。その意味で、温暖化脅威説こそが問題の核心部分を構成しているともいえます。

 以上の3点をまとめて、世間的にはあまり聞きなれない言葉なのですが、このHPではCO2地球温暖化脅威説ないし二酸化炭素地球温暖化脅威説と呼ぶことにしています。以下このように呼ぶことにします。
 このCO2地球温暖化脅威説の対象とする自然現象は極めて広範囲にわたるものであり、一朝一夕に結論の出るような問題ではありません。しかもこれを構成する3つの要素は互いに独立性の高い別々の問題であり、それぞれが大きな問題です。3つの要素がいずれもCO2地球温暖化脅威説を都合よく成立させるような結果を与えることは、素人目に見てもほとんど奇跡でも起こらない限り、常識的にはありえないと思うのですが・・・。次回以降で詳細な検討を加えていくことにします。

No.210 (2006/07/12)CO2地球温暖化説は科学ではない@

 さて、環境経済・政策学会では『CO2温暖化説』についての議論が進められていますが、そこでの議論をどう見るかについて、要点を少し整理しておこうと考えます。
 ネット上では2月の討論会における議論について、評価が分かれており、混乱している読者も多いと思います。この混乱の原因は極論すると、『CO2温暖化説』を自然科学の問題として捉えているか否かと言う問題になると考えます。この基本的な視点が不明確なためにネット上で飛び交う評価の中にはまったく無意味で見当違いの議論がはびこっていることは誠に悲しむべき状況です。
 今回は連載の1回目として『科学的な思考』について触れておくことにします。

■ 自然科学的方法論による理論・法則の成立までの手続き 

 自然科学における理論や法則というものは、現実に起こっている自然現象を徹底的に観察し、現象を帰納的に抽象して定式化することによって仮説を立て、次の段階として更にその仮説が完備したものであるかどうかを実際に起こっている現象を以って検証します。
 その結果対象とする現象にたいして、仮説と現実とが『例外なく』整合性を持つとき、仮説は理論なり法則として承認されることになります。

■ CO2地球温暖化仮説はどのように提案されたのか?

 CO2地球温暖化説について具体的に考えてみることにします。
 まず元になる物理現象とは、電磁波を照射された気体分子が、分子の固有振動数に対応する電磁波の周波数成分のエネルギーを吸収するという事実です。これは既に確立された物理学的な知見ですので、これを演繹的に仮説の構築に使用することに何ら問題はありません。勿論これは実験室的な環境下での事実であり、これで短絡的に近年観測されている気候現象としての地球温暖化が立証されるわけではありません。
 もう少し具体的には、地球放射という赤外線帯域に分布している電磁波の内、CO2は波長15μm付近の赤外線を吸収する特性を持っています。これは間違いなく事実です。
 さて問題はここからです。通常の自然科学の方法論では、自然現象として観測された事実に照らし合わせて、大気中CO2濃度の増大に同期して気温が上昇しているという事実があるときに、「二酸化炭素の大気中濃度の上昇が地表環境における気温の上昇の主要な原因かもしれない」という仮説を立てることになります。
 まずこの仮説を立てる段階で、CO2地球温暖化仮説は特異な事例です。すなわち、CO2地球温暖化仮説が登場した時点、そして現在に至るまでCO2の大気中濃度の上昇傾向と地表環境の気温上昇傾向との間に明確な2者関係を予測させるような観測事実がまったく無いということです。その意味でスタートの時点からこの仮説には特殊な(自然科学以外の)意図が反映されていたように思われます(しかし、結局この問題を解決出来ずに現在に至っているのですが・・・。)。
 CO2温暖化仮説がこれほどまでに急速に世界に蔓延した背景には、この問題が自然科学分野の地道な研究として行われたのではなく、斜陽に向かおうとしていた原子力発電業界、ならびに核兵器保有国ないし日本のような準核兵器保有国等による、経済的・政治的背景が強力に後押ししたことによるものと考えられます。最近では、更にエコ産業分野というハイテク戦略商品分野で復権を果たそうとする先進工業国に格好の大義名分を与えていることと無関係ではありません。
 さて、どのような経緯で提案されたにしろ、CO2地球温暖化仮説が自然科学的に可能な気温上昇モデルであり、ここまでの手続きは自然科学的な方法論から極端に逸脱しているわけではありません。問題はその後にたどった(たどっている)経過にあるのです。

No.209 (2006/07/04)NHK=巨大洗脳装置を告発する

 環境経済・政策学会の『温暖化に関する討論会』について、なかなかHPにアップ出来ずにいますが、今しばらくお待ちください。東北大の明日香氏による『地球温暖化問題懐疑論へのコメントVer.2.2』は既にアップされていますので、参考にしてください。
 討論会当日の明日香報告を文章化したものを入手しておりますが、本質的に大きな進展は無く、二酸化炭素地球温暖化説の観測結果との不整合をなんら説明出来ないままです。それ以前に彼らはこの問題に正面から回答する意思ははじめからないようであり、この段階で既に彼らは理論的に破綻を認めているものと思われます。

 さて掲題の件ですが、既にNo.199でも触れていますが、視聴者から金を集めて「公共」放送を行う巨大放送局NHKの環境問題、とりわけ地球温暖化脅威説の非科学的な恐怖宣伝は、ほとんど犯罪行為であり、厳しく糾弾しなければなりません(このNHKの体質は、No.033、No.047で触れているように、NHKが強力な原子力発電推進放送局であること、ひいては国家の原子力政策・核武装の推進者であることと無関係ではないと考えられます。)。
 NHKスペシャル『気候大異変』については、専門家の中にも強い不信感を引き起こしています。北海道大学名誉教授(海洋工学)角皆静男氏は、HPで次のように感想を述べられております。


気候大異変の取り上げ方(変)
2006.2.26 角皆 静男 404

 日曜日、NHKの気候大異変という番組を見ていて腹立たしくなり、途中で席を立った。温暖化した場合に起こることを、ある計算結果をもとに・・・となる可能性もある程度ならよいが、既定の事実であるかのような調子でまくし立てていた。  
 例えば、アマゾンが砂漠化すると言っていた。確かに、程度はともかくとして、地球上には現在よりも乾燥するところも出てくるだろうが、湿潤になるところも出る。平均気温が上がれば、海からの蒸発量も、降水量も増える。陸に降る雨が減るという証拠はない。南極大陸の氷が含む土塵の量は氷期に多かった。これは気温が下がれば大陸は乾燥することを物語っている。  
 また、熱帯原産の米が日本で減収になるという。それは田植えの時期が遅くなるからだという。だったら、2期作にすればよいし、田植え前に別の作物を作ればよい。よほどの品種改良がない限り、リンゴの生産地は北に上がるだろうが、新に栽培可能な作物が出てくる。  
 さらに、02年に台湾でデング熱が流行したことから、温暖化で疫病が蔓延すると言っていた。恒常的に流行るのなら熱帯域に人は住めないだろうが、熱帯域の方が人口密度はむしろ高い。02年の台湾での流行は、昆虫が天敵のいないところに入ってきて大発生したようなものだろう。  
 物事に表と裏があるように、複雑な地球システムで起こる一つの変化はいろいろなことに影響を与える。そのすべてを取り上げないで一面だけで判断することは危険である。


 また、環境経済・政策学会の討論会にも参加された中本正一朗氏(1995年に旧科学技術庁が始めた地球シミュレーター用気候モデル開発「次世代海洋大循環モデル」開発研究の初代責任者)も本HPのアンケートの書込みで次のように述べられています。


地球温暖化 - 2006/06/29(Thu) 19:24:34

 2006年3月18日に高千穂大学で公開討論会に参加した中本正一朗です。
 公開討論会をした3月18日の晩には地球シミュレーターというコンピュータを使えば1年先のブラジル沖の台風だけでなく、2095年の東京を襲う巨大高潮も予測できると思わせるようなテレビ番組NHKスペシャルが放映されていました。
 あのNHKスペシャルを見た私の友人は「気象学者にはいくらでも贅沢に金を使ってもらって、1年先のブラジル沖の台風や100年先に東京を襲う大洪水を予言してもらうべきだ」と思ったそうです。
 気象学者がなぜあのような番組作成に協力したのだろうか?あのような番組をNHKスペシャルとしてNHKが全国放映することのよって全国のNHKテレビ視聴者にどのような影響を与えるのか(世論操作)を計算してあの番組が計画されたのではないだろうか?
中本正一朗


 本HPでも検討してきたように、二酸化炭素地球温暖化脅威説はあらゆる気象観測データあるいは歴史的事実から否定されているものであり、虚構に過ぎません。オウム真理教よろしく、末世的恐怖感を煽り立てる一方的な報道をする姿勢は「公共」どころか、前大戦における「大本営発表」に準ずる巨大洗脳装置と化しているとしか言いようがありません。このNHKの、視聴者ではなく国家戦略に立脚する報道姿勢を厳しく糾弾するものです。NHKに騙されてはなりません!

MENU

Design by Megapx  Template by s-hoshino.com
Copyright (C) 2013 環境問題を考える All Rights Reserved.