No.1444(2022/11/29) 環境問題・資本主義・自由貿易・ウクライナ㉕
工業文明の持続可能性について/SDGsは自然科学的に実現不可能H

4−5 再生可能エネルギーは自己再生できない

(4) エネルギー産出比から見た再生可能エネルギーの評価(続き)

 前回は太陽光発電についてみてきました。今回は風力発電について検討することにします。風力発電については、陸上風力発電から洋上風力発電に移行しようとしています。この点についても検討することにします。まず陸上風力発電について検討します。

 陸上風力発電の設備建設費は定格出力に対して30万円/kW程度です。2MW風力発電では6憶円です。風力発電では、太陽光発電に比較して運転・維持経費が大きくなります。自然エネルギー財団によると定格出力に対して1.3万円/(kW・年)です。耐用年数を20年とすると、

1.3万円/(kW・年)×20年=26万円/kW

風力発電は形状的に太陽光発電に比較して自然災害リスクが大きく、長期間の発電停止を含む事故の発生確率が高い発電方式です。これを考慮して生涯施設利用率を10%として生涯発電電力量に対する費用を求めると次の通りです。

(30+26)万円/kW÷(24h/day×365day/year×20year×10%)
=(17.1+14.8)万円/kWh=31.9円/kWh

 太陽光発電同様、設備費の20%、運転・維持経費の15%を投入工業エネルギーの費用として生涯発電電力1kWh当たりの工業的エネルギーの費用を計算すると次の通りです。

17.1×0.2+14.8×0.15=5.64円

エネルギー産出比は次の通りです。

1kWh÷(1.37MJ/円×5.64円)=3.6MJ/7.73MJ=0.47

 太陽光発電よりはエネルギー産出比が高いことがわかります。
 しかし、風力発電電力は、自然風の特性から太陽光発電電力以上に短周期の激しい変動を伴います。風力発電を実際に工業生産システムの中で運用するためには、太陽光発電以上に大きな付帯設備が必要でしょう。これを考慮すれば太陽光発電同様、化石燃料によるエネルギー供給システムのサブシステムとしての火力発電を風力発電で置き換えることは化石燃料を含むすべての鉱物資源の消費を加速することになります。

 近年、日本では陸上風力発電にかわって洋上風力発電に主軸をシフトしようとしています。これは、地形の影響を受けない海洋上の風を利用することで安定した高い設備利用率を実現しようという発想です。
 しかし、洋上に風力発電施設を建設するためのコストは、水深や海底地形にもよりますが、陸上風力発電に比較して大幅に増加します。また、常時潮風に晒される厳しい環境では発電施設の劣化・損傷が激しく、運転・維持コストも飛躍的に大きくなります。
 これらを考慮すれば、洋上風力発電は多少設備利用率が稼げたとしても、エネルギー産出比が改善することはありません。ここでは、福島洋上風力コンソーシアム事業から最も施設利用率の高かった2MWシステムの実績を紹介します。

 この「ふくしま未来」という2MW発電システムは運転機関4年8か月、設備利用率は32.9%と報告されています。建設費用は本体工事費で45憶円余り、付帯設備を含めて56億円余りです。

 この2MW洋上風力発電について、運転・維持経費を除いた建設費に基づいて、20年間の生涯設備利用率を25%としてエネルギー産出比を推定してみます。

56×108円÷(2MW×24h/day×365day/year×20year×0.25)=63.9円/kWh

投入工業的エネルギー費用は63.9円/kWh×0.2=12.8円/kWh

エネルギー産出比=3.6MJ÷(1.37MJ/円×12.8円)=0.21

 運転・維持経費を考慮すればエネルギー産出比は0.1台前半になることは間違いありません。福島洋上風力コンソーシアムではこの他に5MWシステムと7MWシステムを建設して試験を行いましたが、設備利用率はそれぞれ14.8%、3.7%と低率でした。つまり、洋上風力発電は太陽光発電よりもエネルギー産出比の低い劣悪な発電システムだということです。

(続く)

 

No.1443(2022/11/28) 環境問題・資本主義・自由貿易・ウクライナ㉔
工業文明の持続可能性について/SDGsは自然科学的に実現不可能G

4−5 再生可能エネルギーは自己再生できない

(3) エネルギー供給技術の絶対的評価〜エネルギー産出比

 工業生産とは工業的に供給されるエネルギーを使って物を製造することです。一般に、製造工程で投入したエネルギー量と製品の使用価値を絶対的に比較することはできません。製造過程でいくら大量のエネルギーを投入したとしても、それに代えがたい製品の使用価値を得ることに意味があることもあります。
 そのような中で工業的なエネルギーを投入することによって製品として工業的なエネルギーを供給するエネルギー産業は極めて特殊な産業です。この場合、製造段階で投入するエネルギー量に対して製品として供給するエネルギー量を比較することによって、絶対的な技術評価が可能です。その評価の指標として「エネルギー産出比」を以下のように定義します。

エネルギー産出比=(産出工業的エネルギー量)/(投入工業的エネルギー量)

 エネルギー量はJ(ジュール)で評価します。

 エネルギー産出比が大きいほど、工業的に優れたエネルギー供給技術であることを示します。「エネルギー産出比<1.0」である場合、投入する工業的エネルギーよりも産出するエネルギーの方が小さいことを示しています。
 前述のように、石油・石炭などの化石燃料はエネルギー産出比は少なくとも10.0以上であり、優れたエネルギー供給システムです。
 工業生産とは、工業的に供給されるエネルギーによって製造システムを駆動して製品を製造する生産方式です。したがって、工業生産を持続的に支えることのできるエネルギー供給システムの必要条件は、エネルギー供給システム自身を再生産した上で余剰のエネルギーを供給する能力があること、つまり「エネルギー産出比>1.0」です。

 では、エネルギー産出比<1.0のエネルギー供給技術は全て無駄なのでしょうか?化石燃料によるエネルギー供給システムのサブシステムとしての火力発電について考えることにします。
 火力発電とは、化石燃料の燃焼エネルギーを熱機関を通して電気エネルギーに変換する過程です。したがって、エントロピー増大の法則から必然的に投入した化石燃料の熱エネルギーよりも産出する電気エネルギーの方が少なくなります。優れた電力供給システムである火力発電でも投入された化石燃料の燃焼熱に対するエネルギー産出比=0.35〜0.4程度です。利用可能なエネルギー量が半分以下に目減りすることを承知の上で化石燃料の一部を敢えて火力発電に投入するのは、エントロピーを持たない利便性の高い電力を得ることに高い使用価値があるからです。

 火力発電電力の価格構成からエネルギー産出比を推定してみることにします。火力発電電力の1kWh当たりの電力原価を10円/kWhだとします。火力発電では原価の60%を熱機関の燃料費、残りの40%を発電設備などの償却費ないし運転・維持経費だとします。40%の中には前回検討した設備建設費の償却分である0.357円/kWhを含んでいます。

 原価の60%の6円/kWhは化石燃料に対する費用です。残りの40%について、その15%程度をエネルギー費用だと仮定します。したがって、発電電力量1kWh当たりに投入される工業的なエネルギーの総費用は次の通りです。

投入工業的エネルギー費用=10円/kWh×(0.6+0.4×0.15)=6.6円/kWh

 化石燃料価格として「温暖化の虚像」p.125に示した値1.37MJ/円を用いて、発電電力1kWh当たりに投入された工業的エネルギー量を推定すると以下の通りです。

1.37MJ/円×6.6円/kWh=9.042MJ/kWh

一方発電電力量は次の通りです。

1kWh=1000(J/sec)×3600sec=3.6MJ

したがって、火力発電のエネルギー産出比は次の通りです。

火力発電のエネルギー産出比=3.6÷9.042=0.398

 電気エネルギーには高い使用価値があります。ただし工業生産を行うためには、サブシステムとしての火力発電を含む化石燃料によるエネルギー供給システム全体のエネルギー産出比が1.0を大きく上回ることが必要であることに変わりはありません。
 下図に示すように、化石燃料によるエネルギー産出比を10、電力化率を40%として化石燃料の40%を火力発電(ここでは火力発電のエネルギー産出比を0.35として表示)に投入しても、サブシステムとして火力発電を含む化石燃料によるエネルギー供給システム全体のエネルギ産出比は7.4>1.0なので工業生産を維持することが可能です。

 

(4) エネルギー産出比から見た再生可能エネルギーの評価

 では再生可能エネルギー、つまり自然エネルギーを変換して電気を得る発電方式について考えてみることにします。既に見てきたように、自然エネルギーの賦存量は太陽放射だけに限っても世界の一次エネルギー消費量の10000倍にも達します。ほとんど無尽蔵のエネルギーと言ってもよいでしょう。再生可能エネルギーについて、

(産出電力量)/(投入自然エネルギー量)≪1.0

であっても有効であると考えているのではないでしょうか?

 ここで注意しておくべきことは、「エネルギー産出比」とは熱力学的な効率を求めているわけではありません。あくまでもエネルギーを供給するシステムを運用するために投入する工業的なエネルギー量と、その結果としてシステムが供給する工業的なエネルギー量の比率を示した値です。
 再生可能エネルギー=「自然エネルギーを用いた発電システム」において、供給電力の「原料」というべき自然エネルギーは「自由財」であり、そもそもエネルギー産出比の対象外の物理量です。自由財には価格がない、したがってそのままでは工業的には使用価値がないのです。その意味で、エネルギー産出比は供給エネルギーの原価構造を使って推定することが出来るのです。

 太陽光発電について、発電原価の価格構造を考えることにします。前回示したように、太陽光発電装置の生涯発電電力量1kWh当たりの償却費は33.2円/kWhでした。
 実際に太陽光発電装置を耐用年数である20年間にわたって運用していくためには運転・維持経費が発生します。資源エネルギー庁によると、定格発電能力に対して年間5000円/(kW・年)程度だとされています。20年間の総費用は

5000円/(kW・年)×20年=10万円/kW

定格出力1kWの太陽光発電パネルの生涯発電量1kWh当たりの運転・維持費用は次の通りです。

10万円/kW÷(24h/day×365day/year×20year×8.6%)=6.6円/kWh

したがって、太陽光発電電力1kWhの発電原価は次の通りです。

33.2+6.6=39.8円/kWh

価格構成を下図に示します。

 工業製品原価に対してその10%〜20%が生産過程で投入された工業的なエネルギーの対価です。太陽光発電施設は、エネルギー集約的な工業製品であることを考慮して20%を投入されたエネルギー費用だとします。運転・維持経費については火力発電同様、15%とします。以上から、太陽光発電電力原価に占める投入エネルギー費用は次の通りです。

33.2×0.2+6.64×0.15=7.6円/kWh

これを熱量に換算すると

7.6円/kWh×1.37MJ/円=10.41MJ/kWh

したがってエネルギー産出比は上式の逆数になるので

太陽光発電のエネルギー産出比=1kWh/10.41MJ=3.6MJ/10.41MJ
=0.35<0.398

 以上から、太陽光発電では、電力の原料として工業的なエネルギー資源≒化石燃料を一切使用していないにもかかわらず、発電設備があまりにも巨大なために、単位供給電力量当たりに投入される工業的エネルギー量は火力発電と同程度あるいはそれ以上であることがわかります。

 ここで対象とした太陽光発電電力は、太陽光発電から供給される「生の電力」であり、予測不能な不規則変動する「クズ電力」です。実際に工業生産システムの中で太陽光発電を利用するためには出力制御を行うために蓄電装置や発電不能時のバックアップ発電システムや広域流通のための大規模高規格送電線網の建設などの付帯設備が必要です。これらを考慮すれば太陽光発電電力のエネルギー産出比はさらに大幅に低下します。付帯設備まで含めた太陽光発電電力のエネルギー産出比が火力発電を上回ることは、将来的にも技術的に実現不可能です。
 つまり、化石燃料による工業生産を前提として火力発電を再生可能エネルギー発電で置き換えることによって化石燃料消費量は大幅に増加することになります。しかしこれは、単に現在のエネルギー需要の下で火力発電を再生可能エネルギー発電で置き換えることだけを考えた場合です。実際には、再生可能エネルギー発電施設の製造・建設に伴って工業生産規模が爆発的に大きくなるために電力需要そのものも大幅に増加することになります。

 したがって、再生可能エネルギーを導入することによって、化石燃料だけではなくすべての鉱物資源の消費量、工業生産量が爆発的的に肥大化し、工業製品だけでなくすべてのサービス価格が暴騰することになり、社会生活が破壊され、自然環境が破壊されることになります。

(続く)

 

No.1442(2022/11/25) 環境問題・資本主義・自由貿易・ウクライナ㉓
工業文明の持続可能性について/SDGsは自然科学的に実現不可能F

4−5 再生可能エネルギーは自己再生できない

(2) 火力発電に対する施設規模 (前回の続き)

 前回は、施設の重量によっておおよその規模の比較を行いました。今回は経済価値によって比較することにします。

 最近の大規模火力発電所では、100万kW出力の火力発電所建設費用は1000億円程度と言われています。これは、定格出力1kW当たりに換算すると10万円/kWになります。
 一方、再生可能エネルギー発電である太陽光発電の場合、太陽光発電パネルの単価は定格出力1kW当たり30万円/kW程度とされています。しかし現在の太陽光発電パネルの製造は電力価格の安い東南アジア、中国、カナダで製造されたものがほとんどです。日本国内のエネルギー価格と比較するためにはこれを国内のエネルギーを用いて製造した場合に換算する必要があります。ここでは50万円/kWとしておきます。

 実際の発電量に対する施設規模を比較するためには、設備の利用率を考慮することが必要です。大型火力発電ではほとんど定常的な発電がおこなわれているので、設備利用率を80%と仮定します。太陽光発電については前回検討した8.6%を用いることにします。平均実効出力1kW当たりの設備費用は次の通りです。

●大規模火力発電     10÷0.8=12.5万円/kW
●太陽光発電            50÷0.086=581.4万円/kW

平均実効出力当たりの太陽光発電の施設規模は火力発電に対して

581.4÷12.5=46.5倍

程度です。前回のディーゼル発電機との重量比較では73倍程度と推定しましたが、大規模火力発電所では発電所の建屋やその他の制御システムなどの周辺設備が必要になることを考えれば妥当な値ではないかと考えます。

 しかし、電力供給システムとしての優劣を評価するためには、発電施設の耐用年数を考慮した生涯発電電力量に対する施設規模を比較することが必要です。火力発電施設の耐用年数を40年、屋外で損耗の激しい太陽光発電の耐用年数を20年として比較することにします。

●大規模火力発電
1000億円÷(100万kW×24h/day×365day/year×40year×80%)=0.357円/kWh

●太陽光発電
50万円÷(1kW×24h/day×365day/year×20year×8.6%)=33.2円/kWh

単位生涯発電電力量当たりの太陽光発電の施設規模は火力発電に対して

33.2÷0.357=93倍

であることがわかります。

(続く)

 

No.1441(2022/11/23) 環境問題・資本主義・自由貿易・ウクライナ㉒
工業文明の持続可能性について/SDGsは自然科学的に実現不可能E

4−5 再生可能エネルギーは自己再生できない

 虚像である人為的CO2地球温暖化に対する解決策として脱炭素化が注目されています。人為的CO2地球温暖化自体が存在しないので人為的なCO2放出量を抑制したところで気温上昇を抑える実効的な効果はありません。ここでは人為的CO2地球温暖化の当否については一旦棚上げしておくことにし、脱炭素化の根本的な解決技術とされる再生可能エネルギーについて自然科学的に評価することにします。

 再生可能エネルギーとは前節で検討した自然エネルギーを利用した各種の発電方式を指していると考えられます。中でも中核的な技術として太陽光発電と風力発電が考えられています。

 前節で検討したとおり、自然エネルギーは工業的に利用するためには空間的な密度が小さく、またその強さが不規則で予測不能であるという特性を持っています。
 したがって、自然エネルギーを工業的に利用するためには、例外なくエネルギーを補足するための施設規模が大きくなり、しかもその利用率が低くなります。さらに、出力を調整するために発電施設以外に巨大な蓄電・緩衝システムが必要になります。

 (1) 再生可能エネルギー発電システムの規模

太陽光発電
 太陽光発電では、入力である太陽光は昼間しか利用できず、夜間には発電できません。さらに、快晴日であったとしても太陽光の放射照度は太陽高度によって変化します。さらに、気象条件によって変化します。
 太陽光発電に対する理想的な太陽放射は湿度の低い快晴日の南中時です。この時の地表面における放射照度を1000W/m2程度とします。快晴日の南中時には、自動車の天井は触れることが出来ないほど高温になります。太陽光発電パネルも高温になります。その温度を65℃=338K程度だとします。この時、太陽光発電パネルの表面からの赤外線放射の強度は次のように計算できます。

I=σT4=5.67×10-8×338=740W/m2

 太陽光発電パネル表面における反射などによる損失を10%とすると、エネルギー保存則から、この時の理想的な発電能力は次式の通りです。

1000(1.0−0.1)−740=160W/m2

快晴日の南中時の太陽放射に対する発電効率は160/1000=16%です。

 これを太陽光発電パネルの定格出力とします。

 一方、太陽光発電の日本における1年間あたりの発電実績は、120kWh/(m2年) 程度です。これを平均的な出力に換算すると以下の通りです。

120×103Wh/(m2年)÷365日/年÷24h/日=13.7W/m2

 したがって、160W/m2の定格出力に対して実効平均出力は13.7W/m2であり、太陽光発電パネルの設備利用率は、13.7/160=8.6%という低い値になることがわかります。

 このように太陽光発電では、理想的な太陽放射照に対する発電効率は16%程度が理論的な上限であり、太陽光の変動が大きいために、平均実効出力は更にその10分の1以下になります。
 太陽光発電パネルユニットの重量は15kg/m2程度です。これを設置するための架台構造の重量を5kg/m2とすると、平均実効出力1kW当たりの重量は以下の通りです。

(15+5)kg/m2÷0.0137kW/m2=1460kg/kW=1.46t/kW

風力発電
 次に風力発電について考えてみます。定格出力2MWの風力発電装置について考えてみます。ここでは横浜市のハマウィングの諸元を紹介します。

 風力発電は、ローターブレードの回転面を通過する空気の流れの運動エネルギーを捕捉して発電する装置です。ローターブレードの回転面の面積Aはローターブレード長をr(m)として次の通りです。

A=πr2(m2)=3.1415×402=5,027m2

1秒間に回転面を通過する空気の体積Vは、風速をv(m/s)とするとV=Av(m3/s)です。

 質量mの流体の運動エネルギーは、流速をv(m/s)としてmv2/2で表すことが出来ます。したがって、回転面を1秒間に通過する空気の運動エネルギーは空気の密度をρ=1.295(kg/m3)として次式で求めることが出来ます。

V×ρv2/2=Aρv3/2(kg・m2/s3)=Aρv3/2(W) 

 ハマウィングの定格風速v=15(m/s2)に対する運動エネルギーを求めると次の通りです。

5027×1.295×153/2=10,984,579W≒11MW

したがって、風の運動エネルギーに対するハマウィングの発電効率は次の通りです。

1.980÷11=0.18=18%

 風力発電は、風速が大きく変動するため、定格出力に対する実際の設備利用率は15%程度です。定格出力2MWの風力発電装置の平均実効出力は次の通りです。

2MW×15%=0.3MW=300kW

 ハマウィングの地上部の構造物の重量は次の通りです。

6.5t+67.6t+163.8t=237.9t

基礎部分の構造物の重量は地盤の状況で大きく変わることになりますが、ここでは仮に、地上部の構造の50%として総重量を算定しておきます。

237.9×1.5≒357t

風力発電の平均実効出力1kWに対する重量は次の通りです。

357t÷300kW=1.19t/kW

(2) 火力発電に対する施設規模

 比較のために内燃機関火力発電機として300kWディーゼル発電機を考えます。重量は6t程度、1kW当たりの重量は0.02t/kW程度です。

 したがって、ディーゼル発電機に対して同一の電力供給能力を得るためには重量比で、太陽光発電の設備規模は1.46/0.02=73倍、地上風力発電の設備規模は1.19/0.02=59.5倍になります。
 近年、洋上風力発電が取りざたされています。例えば福島洋上風力コンソーシアムの報告によると、2MW浮体構造の風力発電装置の場合、風力発電設備の費用が4.68億円であるのに対して浮体構造部分の設備費用は18.04億円と4倍程度となっています。水深などの建設条件にも大きく影響されますが、海上風力発電は陸上風力発電の設備規模の2倍程度は必要と考えても過大な評価ではないでしょう。

 以上から、太陽光発電や風力発電という不安定な自然エネルギーを利用する発電方式では、火力発電に比較して圧倒的に大きな装置システムが必要だということがわかります。更に、不規則変動する再生可能エネルギー発電電力を実際に運用するためには、巨大な蓄電装置ないし緩衝装置、全国を結ぶ高規格送電線網の整備などが不可欠です。

(続く)

 

No.1440(2022/11/17) ロシアがポーランドをミサイル攻撃?!
そろそろ嘘つきの策士ゼレンスキーの本性に気付くべきだろう

 昨日、ロシアがポーランドをミサイル攻撃したのではないかというニュースが流されました。ロシアは当初からこのミサイルはロシアとは関係ないものであると説明していました。

これを即日報道した朝日新聞の電子版の記事を示します。

 

 日本のテレビの報道番組は、「ついにロシアがウクライナ以外のNATO加盟国にミサイルを撃った」という論調でした。
 毎度のことですが、ロシアが敢えてポーランドを攻撃するような合理的な理由はないし、いくら何でもミサイルをポーランド領内に誤射することなど到底考えられません。私はノルドストリーム破壊工作同様、ゼレンスキーや米英お得意の偽旗作戦ではないかと思いました。

 ミサイルのポーランド着弾を受けて、G20では緊急対応がとられましたが・・・。

 結局、このミサイルはウクライナ軍のミサイルであることが判明しました。2022年11月17日付の大分合同新聞の記事を紹介します。

 これに対して、NATO加盟国の首脳はこぞって、このウクライナのミサイルのポーランド着弾という「不幸な事件」の起こったのはロシアがウクライナに侵攻していることが本質的な原因であるとして、改めてロシアを批判するという、あきれ果てる問題のすり替えを行っています。
 それを言うならば、2014年にウクライナのネオナチテロ集団に対して米英が軍事援助を行って、正規の選挙で選出された正当なウクライナのヤヌコヴィッチ政権を軍事クーデターで転覆し、その直後から親ロシア住民の住む東部ウクライナに対して軍事攻撃を含む弾圧を加え、ミンスク議定書による停戦協定を無視して8万人余りを虐殺してきた米欧傀儡のゼレンスキー政権がロシアの侵攻の原因であることが問題の本質です

 ただ、今回のポーランドへのミサイル着弾に対してNATOとゼレンスキー政権の対応には多少違いがあるようです。嘘つきゼレンスキーはこれまで通り、今回のポーランドへのミサイル着弾はロシアによるものだと、いまだに主張しています。一方NATO側は、ウクライナの防空システムのミサイルが誤ってポーランド領内に着弾したとしています。
 これは、ゼレンスキーはこのミサイル着弾をロシアの仕業であることとして、NATOの戦闘への直接介入を含めた援助拡大を画策しているのに対して、NATO諸国はあくまでもNATOは軍事援助だけにとどめ、ウクライナ人を使ってロシアを攻撃することを狙っているからであろうと考えます。

 ウクライナ国民はこうしたゼレンスキーの不誠実さ、あるいは米欧・NATOの身勝手な戦争に利用されている現実を直視してほしいと切望します。

 

No.1439(2022/11/16) 環境問題・資本主義・自由貿易・ウクライナ㉑
工業文明の持続可能性について/SDGsは自然科学的に実現不可能D

 前節で検討したように、工業的に製造した燃料のエネルギー産出比は1.0を超えることが出来ないため、工業生産を支えるエネルギー資源の必要条件を満たすことが出来ません。

 化石燃料が工業生産を支えることが出来るのは化石燃料が天然資源であって、ほとんど工業的に手を加えなくても化石燃料そのものの特性として高い熱エネルギー供給能力を持つからです。
 それでは、化石燃料以外に工業的に手を加えることなくエネルギーを供給する能力を持つ「資源」はないのでしょうか?

4−4 自然エネルギー

@自然エネルギーの賦存量
 工業化以前には、人は様々なエネルギーを利用してきました。薪炭、畜力、風力、水力、太陽光などです。薪炭や畜力は広義の太陽光に含めてよいでしょう。
 突き詰めるとこうした様々なエネルギーは四つのエネルギー源に分類することが出来るでしょう。太陽からの放射エネルギー、地球の重力エネルギー、地球の熱エネルギー、そして地球の運動エネルギーです。この四つのエネルギーの複合的な作用によって地球上の様々な物理・化学的変化そして生態系の活動が駆動されています。これら四つのエネルギーをまとめて「自然エネルギー」と呼ぶことにします。自然エネルギーは、工業的に手を加えていないという意味で天然のエネルギー資源と言ってもよいでしょう。

 自然エネルギーの量は膨大です。例えば、太陽放射について考えてみましょう。地球の位置の大気圏外に到達する太陽放射照度は1366W/m2程度です。したがって、太陽放射から地球表面が受け取る平均的な太陽放射によるエネルギーは、地球の半径を r とすると次の通りです。

1366W/m2×π・r2÷(4π・r2)=341.5W/m2

 一方、世界の1年間の一次エネルギー消費量(=工業的エネルギー消費量)は概ね6.0×1020J 程度です。これを地球の半径を r=6356800mとして地球の表面積で平均すると次の通りです。

6.0×1020(J/年)÷(4π・r2)=1.181583×106(J/(m2・年))=0.0374678W/m2

したがって、工業的なエネルギー消費量は、太陽放射に対して

0.0374678÷341.5=0.00011=0.011%

程度です。

 このように、自然エネルギーは工業的に手を加えなくても莫大なエネルギーを絶えず地球環境に供給しています。
 しかし、自然エネルギーは地球という環境を維持するために消費され、宇宙空間に低温赤外線として廃棄されています。自然エネルギーの賦存量が莫大であることと、工業的に有効に利用できるかどうかは全く別問題です

A自然エネルギーの特性
 自然エネルギーは絶えず変動しながら流れ続けています。私たち人間の住む地表面環境は自然エネルギーに駆動されている大気や水の絶え間ない物理・化学的な変化の中にあります。ダム式発電のダムに貯水された水の位置エネルギーのような例外を除けば、自然エネルギーの大部分は人間にとって都合よく蓄積しておくことが出来ず、利用可能なエネルギーの大きさは予測不能、制御不能です。
 また、自然エネルギーの全体としての賦存量は莫大ですが、地球環境全体に不偏的に広く拡散して存在しているために、エネルギー密度は希薄です。

 この自然エネルギーの二つの特性は、自然エネルギーを工業を駆動するエネルギー資源とすることを困難にしています。

(続く)

 

No.1438(2022/11/09) 環境問題・資本主義・自由貿易・ウクライナS
工業文明の持続可能性について/SDGsは自然科学的に実現不可能C

4−3 工業生産の成立条件とその限界

 工業生産に対する生産図から、工業生産が成立する必要条件を考えることにします。

 工業生産とは原材料資源に対して生産過程で物理・化学的な処理を行い、製品を製造することです。

 まず必要なのが原材料資源です。これは説明の必要はないでしょう。
 次に、原材料資源を加工するために必要な物理・科学的な知識とそれを具体的に実行する生産技術、製造機械が必要です。
 そして実際に製造機械を運用するために工業的なエネルギーと冷却・洗浄用の水などの低エントロピー資源が必要です。

 工業生産を支える構成要素のうち、何が本質的に重要な要素かを考えることにします。

 原材料資源は鉱物資源や生態系の中で生産される生物資源があります。

@鉱物資源
 鉱物資源は地球とい有限の環境中に存在している有限の資源です。したがって、消費すればやがてなくなることになります。
 しかし、物質は質量保存の法則が示す通り、どのような物理・化学的な変化があったとしてもその量は不変です(厳密には核種を変更するような場合は別です。)。したがって、ここで言う「消費」とは物質の形態が変化するという意味であって、物理的に消滅することではありません。
 したがって、鉱物資源は何らかの操作を行うことによって回収し、再利用することが可能です。それが工業的なエネルギーを投入して行う工業的な「リサイクル」の意味です。

A生物資源
 生物資源は、その生産量に限界がありますが、地球の生態系の中で絶えず更新されているため、適切な使用量を超えない限り地球生態系が消滅しない限り永続的に使用することが可能です。生物資源の特性は、鉱物資源とは異なり、生態系を健全に維持すれば工業的なエネルギーを投入することなく繰り返し利用できることです。

B低エントロピー資源
 工業生産に利用される低エントロピー資源は主に冷却水と洗浄水です。水は地球環境の中で常に循環しているので、適切な使用を行えば、永続的に利用可能です。

Cエネルギー資源・化石燃料
 現在の工業生産を支えているのは、石油・石炭・天然ガスなどのいわゆる化石燃料の優秀性です。化石燃料は天然資源であり、多少精製するだけでエネルギー源として使用することが出来ます。その結果、化石燃料は高い倍率(少なくとも10倍以上)で拡大再生産することが出来ます。

 この化石燃料を消費しても、前述の通り、質量保存の法則から化石燃料を構成する物質が消滅するのではなく、環境中に拡散するだけです。したがって、最近はやりのメタネーションや水素製造のように、工業的に製造することは「技術的」に可能です。
 しかし、同時に私たちの住む物質世界は熱力学の第二法則であるエントロピー増大の法則による制約があるため、一旦拡散してしまった化石燃料の構成物質から燃料を製造するためには、製造した燃料から得られるエネルギーよりもはるかに大きなエネルギーの投入が必要になります。
 つまり、工業的に製造した水素やメタンの再生産の倍率=エネルギー産出比は必ず1.0よりも小さくなります。この点の詳細については、「工業化社会システムの脱炭素化は不可能」を参照ください。
 したがって、自然科学的に可能であっても水素製造やメタネーションは有効な工業的なエネルギーの単なる浪費であって、工業的に無意味な技術なのです。
 一般的に、物理・化学的な操作によって工業的に製造された燃料から得られるエネルギーは、製造過程で投入した工業的エネルギーよりも必ず小さくなるというのが熱力学の主張なのです。

 したがって、化石燃料は有限の期間で資源として絶対的に枯渇します。ここで注意が必要なのは、資源としての枯渇とは、必ずしも化石燃料がまったくなくなることではありません。化石燃料を採掘し精製するためにも工業的エネルギー≒化石燃料が消費されています。採掘条件の悪化によって化石燃料製造に投入するエネルギーに対して、得られる化石燃料の持つエネルギーが下回った段階で化石燃料の採掘は無意味になります。

 以上みてきたように、工業生産にとって最も本質的な資源とは工業的エネルギー資源=化石燃料だということがわかります。したがって、工業生産の限界とは、資源としての化石燃料が枯渇することであることがわかります。

(続く)

 

No.1437(2022/11/05) 日本は一体どこへ向かおうとしているのか?
米国との軍事同盟を強化し、戦争国家への道へ暴走する岸田政権

 最近の日本の政治情勢を見ていると、怖くて仕方がありません。日本にはまともな外交政策、ないしまともな外交官が皆無のようです。所詮この国の外交とは、米国の属国としてのアジア政策の代行者としての意味しかないのが実態ですが・・・。

 まず、岸田政権の物価上昇に対する財政規律を全く顧みない場当たり的な財政出動です。ただでさえOECD加盟国の中で最も財政状況の悪い国の一つである日本ですが、コロナ感染症蔓延以降の家計に対する支出で財政規律のタガが外れてしまったようです。
 就任以降最低支持率を更新し続けている岸田政権は、最近のエネルギー価格の高騰に始まる全般的な物価高騰に対して、無能・無策な経済政策に対する国民の批判をかわすためだけに、場当たり的なエネルギー価格の抑制のために莫大な資金を投入する様です。大分合同新聞の10月27日の記事を紹介します。

 場当たり的に投入される30兆円もの国費ですが、これを投入したからと言って、エネルギー価格や物価高騰の本質的な原因の手当てが行われない限り、状況は改善されぬどころか、むしろ資金の枯渇による反動によって経済は更に混乱する可能性が高いと考えます。
 30兆円もの国費を投入するのであれば、問題を本質的に改善するような施策に投入すべきです。場当たり的な人気取り、刹那的な支持率回復のために浪費してよいような金額ではありません。

 さて、岸田政権は就任以降安倍政権以上に米国ネオコンとのつながりを強め、ほとんど米国の属国のようになってしまいました。日米軍事同盟の更なる一体化でますます米国による東アジアにおける挑発行為に巻き込まれて戦場になる可能性が高まっています
 岸田政権は、米国との軍事的一体化によって北朝鮮に圧力をかけることで国家の安全を確保しようとしていますが、これは全く逆効果であることは分かりきっています。大分合同新聞11月5日の記事を紹介します。

 北朝鮮と米国は休戦中とはいえ戦争状態にあり、北朝鮮にとって米国は仇敵であり、日本が米国に与することはそれだけで北朝鮮との関係悪化につながることは当然です。
 北朝鮮が米国の軍事的な圧力によって屈するような国であるならば、日本の安全保障にとって米国との軍事的な同盟関係に意味があるかもしれません。
 しかし、北朝鮮金正恩政権は米国の軍事的な圧力に屈することを拒否し、米国の核兵器による抑止力を無効化することを目的に米国本土を射程に収める核弾頭搭載可能なICBMをはじめとする戦略兵器を実用化することによって、米国との対等な外交交渉権を手に入れることを目的にしているのです。したがって、日本の対北朝鮮政策として米国の軍事的な抑止力など全くの無意味です。
 むしろ米国との同盟強化は日本そのものが北朝鮮の敵国となることを意味しています。もしこの状態で米国と北朝鮮の軍事衝突が勃発すれば、日本の米軍基地は北朝鮮の攻撃目標になります。北朝鮮は、既に日本全土をカバーする戦略的なミサイルを実戦配備していることは間違いありません。

 米国の軍事的な圧力によって、日本人拉致被害者問題が解決することなど金輪際あり得ないのは明白です。日本政府が本気で拉致問題の解決を考えるのであれば、米国との軍事同盟を破棄し、日本の独自外交を回復した上で、むしろ米韓による北朝鮮に対する挑発行動を自制するよう求めることこそ外交交渉の第一歩となるでしょう。

 小泉・安倍政権、そして岸田政権に引き継がれた「外交とは米国のご機嫌をうかがうこと」であり、それ以外はどうでもよい、という外交に対する基本姿勢によって、日本にはまともな外交官がいなくなり、日本は今や米国の完全な属国になり下がろうとしているように見えます。

 同じ今日の大分合同新聞に次のような記事が掲載されていました。

 第二次安倍政権下で「安全保障技術研究推進制度」が創設され、毎年100億円を超える防衛予算が大学や民間研究機関に流れています。
 第二次世界大戦敗戦後、「平和国家」日本の大学・研究機関は軍事研究を行わないことを宣言しました。しかし、戦前の体制を取り戻すことを目指した安倍ファシスト政権以降、大学や研究機関に対して防衛予算=軍事予算が投下されることになり、軍事技術開発に大学や研究機関が利用されるようになりました。
 今年7月、日本学術会議は軍事技術開発を容認することを表明するに至りました。いよいよ産官学軍の連携が強化され、米国並みの軍事国家体制にまた一歩近づいたようです。軍事予算を倍増することを掲げる岸田政権によって、産官学軍のつながりはさらに強固になり、いずれ科学技術は全て国家管理される方向になることが危惧されます。

 既に日本の自然科学者の多くは「人為的CO2地球温暖化論争」において、自然科学者の良心を金で売り渡してしまいました。自然科学者の倫理観の喪失は止め処無いようです。

 巨大な産官学軍によるコングロマリットの存在によって、常に世界中に戦場を意図的に作り出して金儲けをし、経済的な支配を強める米国を補完する属国に日本がなる日も遠くないのかもしれません。おぞましいことです。

 

No.1436(2022/10/26) 環境問題・資本主義・自由貿易・ウクライナR
工業文明の持続可能性について/SDGsは自然科学的に実現不可能B

4−2 工業生産とゴミ問題

 前回、「生産」という過程について、生態系の第一生産者である植物が太陽光からのエネルギーを得てCO2とH2Oからブドウ糖C6H12O6を合成する過程である光合成を例に示しました。

 一般に、原材料資源に対してエネルギーを作用させ、不純物を取り除き、何らかの生産物を作り出す過程について、光合成におけるエントロピー的反応式

をもとに、模式的な生産図を考えてみることにします。
 生産図では横方向の変化は原材料から生産物への流れを示します。一般的に、原材料資源と生産物のエントロピーを比較すると、生産物のエントロピーの方が小さくなります。つまり、生産図の横方向の変化はエントロピーの減少過程になります。
 生産図の縦方向の流れは、生産物とは直接関係のない生産過程で消費される低エントロピー資源の拡散=エントロピーの増加過程を示します。
 あらゆる変化の過程は全体としてエントロピーの増加過程です。したがって、生産図の横軸方向のエントロピーの減少量に比較して、縦軸方向のエントロピーの増加量の方が必ず大きくなります。
 原材料の一部が横方向の流れから縦方向の流れに変化します。これは原材料資源に含まれる不純物の除去、ないし原材料資源の損失を示します。

 光合成を生産図で表してみます。

 光合成では大気中の二酸化炭素CO2と水H2Oを原材料としてブドウ糖C6H12C6を合成します。これが横方向の流れです。
 その過程で、太陽光からエネルギーを受け取り、廃熱を処理するために大量の水が蒸発して水蒸気になります。また、ブドウ糖の合成には不要である余分なO2が大気中に廃棄されています。これらが縦方向の流れです。

 これに倣って、工業生産に対する生産図を以下に示します。

 この生産図では、明示的に示していませんが、生産の「場」も重要な要素です。光合成であれば植物の体組織であり、工業生産では工場や製造設備がこれに当たります。植物の体組織や工場・生産設備もまた次第に劣化してゆきます。これも縦方向のエントロピーの増加過程の一部として適宜考慮することにします。

 この工業生産図から分かるように、一般的に工業生産では原材料資源の他に化石燃料に代表される何らかの工業的エネルギーや冷却水、洗浄水などが消費され廃熱・廃物となり、あるいは原材料資源から不純物が取り除かれます。したがって、「ゴミゼロ」の工業生産は理論的に実現不可能です。
 「ゴミ問題」の本質は「ゴミの質」です。
 光合成であれば廃物である酸素O2は動物にとって有用な資源として生態系の中で吸収されます。しかし、工業生産からのゴミの中には生態系の中で処理できずに環境を汚染する物が少なくありません。例えば重金属や放射性物質、毒性を持つ化合物などです。
 工業化社会におけるゴミ問題の対処方法は明確です。環境中に廃棄した場合に生態系の物質循環の中で無理なく処理できる状態にして廃棄することです。
 重金属や放射性物質、有毒化合物を発生させるような工業生産は極力行わないことを基本とし、どうしても必要な場合には環境中に拡散しないように安定化させ、管理することです。
 安定化して環境への拡散を防ぐことが保証できない廃物、例えば管理期間が数万年に及ぶ高レベル放射性廃物を生み出す原子力発電のような工業生産プロセスは禁止することです。

 さて近年、人為的CO2地球温暖化脅威論のバカ騒ぎの結果、ゴミ問題は全く愚かな方向に向かっています。人為的CO2地球温暖化脅威論によって、CO2が現在における最大の危険物質・汚染物質として扱われるようになりました。
 これまで述べてきたように、CO2は生態系の第一生産者である光合成生物にとって必要不可欠な原料資源です。現在の化石燃料消費による大気中CO2濃度の上昇は生態系を豊かにする好ましい変化です。
 例えば、大気中CO2濃度を低減するためにプラスチックごみを焼却処分せずに処理しようとした結果、プラスチックごみの不法投棄によってマイクロプラスチックによる海洋生態系への悪影響が懸念されています。
 問題解決の方法は、基本に戻ってプラスチックごみを生態系で処理できる形にして廃棄すればよいだけです。主に炭素Cと水素Hの化合物であるプラスチックを生態系で処理できる形にする最も優れた処理方法こそ焼却処分です。CO2とH2Oはいずれも生態系にとって必要不可欠な資源です。ただし、プラスチックに含まれるCとH以外の毒性のある物質については焼却の際に回収し安定化あるいは無毒化処理することは必要です。
 プラスチックを焼却することによって得られる熱エネルギーは発電、給熱などで有効利用が可能であり、石油消費量の低減につながります。

 人為的CO2地球温暖化脅威論は非科学的な主張です。工業生産によって放出されたCO2によって大気中CO2濃度が顕著に上昇することはありません。近年観測されている気温上昇は自然変動であり、また現状から数℃の気温上昇は生態系にとって好ましい変化であり、問題にする必要はありません。

 人為的CO2地球温暖化脅威論によって悪玉にされたCO2の排出量を削減するためと言って、日本ではレジ袋の廃止ないし有料化が進められていますが、その一方では通信販売が激増した結果、梱包用資材が激増しています。愚かとしか言いようがありません。
 また、岸田政権下では、CO2が悪玉にされる一方で、脱炭素社会の実現のために「クリーン」=CO2を放出しない原子力発電を復活させようという愚かな政策が打ち出されました。

(続く)

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