No.1315(2020/05/21) 奇跡?必然?日本のコロナ感染状況の不思議
コロナのどさくさに紛れて強行された安倍ファシスト政権の国会運営の破綻

 その後も日本のコロナ感染症の新規感染者数は順調に減少し、関東圏、近畿圏、北海道以外の地域において緊急事態宣言が解除されました。最近の状況を以下のグラフに示します。

 確かにいまだにPCR検査体制は十分とは言えず、コロナ感染症の日本における感染の実態が掴めているとは言い難い状況ですが、全く予想外でしたが、確実に感染拡大は収束の兆しを見せていると言ってよいでしょう。

 安倍ファシスト政権のコロナ感染症対策はお世辞にも適切であったとは言い難いものですが、大方の予想を裏切り、欧米のような急激な医療崩壊を引き起こすような感染拡大は起こらず、感染者数(PCR陽性者数)は2万人にも至らず、死者も1000人未満に抑えられています。今のところこれを合理的に説明できる理由が見つかりません。

 当初、BCG接種が影響しているのではないかということも言われましたが、現在はその有意差は示すことができないという結論になっているようです。
 日本を含めてアジア地域では欧米に比較して感染が抑えられている傾向がみられる理由として、遺伝子的な理由があるのではないかという視点からの研究が開始されているようです。

 今後、早ければ今秋にはコロナ感染症の第2波が発生するかもしれませんし、最終的には世界の大多数の人がコロナ感染症に対する抗体を獲得するまでは、繰り返し感染が起こることになることを考えれば、今回の日本の特殊な状況に対して、単なる偶然の重なりによる僥倖であったのか、あるいは何らかの必然的な理由があったのかを分析し、確認することが急務でしょう。

 

 この間のコロナ感染症による社会的な混乱状態の陰で、国会では東京高検の黒川氏に対する安倍ファシスト内閣による法治国家の基本、民主主義、三権分立を無視した「超憲法的」な定年延長の閣議決定を正当化するための検察庁法の改定が国家公務員の定年延長問題に絡めて画策され、自民党は強行採決しようとしました。

 この法案に対しては、ネットワーク上で批判の意見が拡大し、検察OBからも自殺行為であるとの批判が相次ぎましたが、安倍ファシスト政権・自民党は強行採決も辞さぬ姿勢でした。

 それが一転して安倍―菅の判断で、一夜にして本国会中の採決を断念し、秋の臨時国会で「ほとぼりを冷ました」上で継続審議するという方針を出しました。しかしながら、政府提出の法案を権力者の一存で一夜にして継続審議にするという対応は、またしても安倍の独裁ぶりを再認識させるものであり、出鱈目な対応です。また、廃案ではなく継続審議というのですから、本質的な問題は何ら解決していません。

 この対応について、安倍は国民の理解を得た上でなければ法案を通すことはできないと言っていますが、そんなことは建前にすぎないでしょう。直前までは強行採決すら辞さない姿勢だったのですから。
 本当の理由は、直前の世論調査において、黒川氏に対する極めて恣意的な人事の強行、コロナ感染症に対する『安倍のマスク(笑)』も含めた政策的な失策などによって、内閣支持率が予想以上に降下し、不支持率が急上昇したことが最大の理由です。

 世論調査結果に対するネット上のBloombergの記事を以下に引用しておきます。


安倍内閣支持率33%に低下、6割超が検察庁法改正案に反対−調査
2020年5月18日 10:01 JST 更新日時 2020年5月18日 19:50 JST

39県で緊急事態宣言解除も、政権のコロナ対応には厳しい見方
定年延長の検察庁法改正、国民の理解なく進めることできない−首相

 安倍晋三内閣の支持率が報道各社による世論調査で3割台に下落した。検察庁法改正への反対の声が目立ったほか、新型コロナウイルスへの対応についても厳しい見方をする人が多い。

  朝日新聞社が16、17両日に実施した世論調査によると、安倍内閣の支持率は33%で、4月調査の41%から下落した。不支持率は47%で、4月調査の41%から上昇した。2012年12月発足の第2次政権以降で、内閣支持率が最低だったのは森友・加計問題への批判が高まった18年3月と4月調査の31%で、今回の33%はそれに次いで低い。

  同調査では、検察庁法改正案について、「賛成」は15%にとどまり、「反対」が64%だった。新型コロナウイルスの感染拡大の防止に向け、安倍首相が指導力を「発揮している」と答えた人は30%(4月調査は33%)で、「発揮していない」の57%(同57%)の方が多かった。

  ANNが18日に公表した世論調査でも、安倍内閣の支持率は32.8%で、前回の3月調査から7.0ポイント下落した。検察庁法改正案についても「反対する」が68%で「賛成する」の15%を大きく上回った。政権の新型コロナ対策を「評価する」は31%にとどまり、「評価しない」は57%だった。


 その一方で検察庁法改定問題の原因となった渦中の人である黒川氏が、緊急事態宣言の発令されている中で2度にわたって友人宅でかけマージャンをしていた疑いがあるという週刊誌記事が公開され、辞任の意向を固めたという報道がありました。

 安倍が有能な官僚であるとして、超法規的な定年延長を行った黒川という人物、実際はどうなのか。銘記しておかねばならないでしょう。 

 

No.1314(2020/05/13) 一向に増えない日本のPCR検査数と海外との比較
コロナ感染症の市中感染状況の把握なくして、適切な規制解除は不可能

 幸い、日本におけるコロナ感染症の新規感染者数はかなり減少し、公式な統計による新規感染者数はこのところ1日当たり100人を切る状態が続いています。

 しかしながら、前回も触れたように、日本におけるコロナ感染症に対するPCR検査は極めて限定的なもので、感染の全体像をとらえていないことも事実です。5月11日付の専門家委員会から公表された各国との比較を次図に示します。

ドイツやイタリアでは10万人当たり3000人以上、3%を超える検査が行われています。これに対して日本ではわずか188人程度、0.2%程度しかPCR検査が行われていません。これでは感染の実態が把握できていないのは当然です。

  昨日の国会答弁に立ったコロナ感染症対策専門家会議の委員は、「実際の感染者数がPCR検査陽性者数よりも多いことは確実であるが、それが10倍なのか20倍なのかは誰にもわからない」という趣旨の答弁をしていました。

 確かに、日本の貧弱なPCR検査数ではこう答弁するよりほかになかったと思いますが、現状を把握できていない状態で、政府の緊急事態宣言の解除や自粛要請の適切な緩和措置を決めることはかなり危険であろうと考えます。

 既に報告した久住氏による抗体検査では、東京都では5%程度の人が過去にコロナウイルスに感染していたことが示されました。また、神戸市立医療センター中央市民病院の抗体検査では2.7%程度が感染していたのではないかと推定されています。
 この二つの事例ではまだ検体数が少なく、偏りもあることは当然ですが、少なくともPCR検査による公式な感染者数に対して100倍程度の感染者がいた可能性があることを示しています。

 緊急事態宣言の出口戦略ないし、ワクチン開発までの生活様式に対する規制措置の策定を行うためには、PCR検査数を増やすことや抗体検査などの複数の手段を用いて、出来る限り正確な実態把握を行うことが必要でしょう。

 自粛の緩和を行ったドイツや韓国、中国ではふたたび感染拡大の兆候が見られています。武漢では1100万人すべてに対してPCR検査を行うことが発表されました。適切な自粛緩和措置を示すためには、大幅な緩和措置をとる以前に、出来る限り正確な市中感染状況の把握が不可欠であろうと考えます。

 

No.1313(2020/04/30) コロナ感染症に対する緊急事態宣言の効果は?
PCR検査の少なさと、東京都における抗体検査から見えてくる実体

 緊急事態宣言が発出されて3週間が経過します。このところ感染者数は減少する傾向を見せています。まず、全国の累計感染者数の最近の推移を示します。

 図から明らかなように、最近の累積数の曲線は上に凸になっていますので日当たりの感染者数のピークは過ぎたようです。日当たりの感染者数の推移を次に示します。

 図からわかるように新規の感染者数は10日ほど前にピークを示した後次第に減少しています。

 以上のように統計上は、緊急事態宣言による外出自粛の効果は表れてきていると言ってよいでしょう。しかし、実態は必ずしもそれほど楽観できる状態ではありません。

 次に東京都の新規感染者数の推移を示します。

 一時は1日200名程度までに上昇していた新規感染者数が、このところ100名を切るようになっています。
 しかし公式統計に表れている数値は、PCR検査入り口において絞りに絞ったごくわずかの検体数に限られたものであり、果たして感染の実態を反映しているのか極めて疑わしいものです。その結果、東京都の検体数に対する陽性率は異常に高く50%近くに達しているようです。
 そのため、不審死に対して死後のPCR検査によってコロナウイルスの感染が分かった例も少なくないようです。

 何を考えているのかよくわかりませんが、この国の行政はいまだにPCR検査の推進に対して極めて消極的です。実態を把握せずしてまともな対策がとれるはずがありません。確かに、地方においては大都市圏からの移動人口の抑制効果で新規感染者数は減る傾向にあると考えられますが、東京に限らず大都市圏ではPCR検査数があまりにも少ないために感染実態を過小評価している可能性が極めて濃厚です。

 そのような中で、東京都において検体数はまだ少ないのですが、抗体検査の結果が発表されました。東京新聞の記事を少し引用します。


<新型コロナ>抗体検査5.9%陽性 市中感染の可能性 都内の希望者200人調査

2020年4月30日 07時07分  

 新型コロナウイルスの感染実態を調べるため、感染症に詳しい久住英二医師が東京都内でウイルス抗体検査をしたところ、一般市民の4・8%、医療従事者の9・1%が陽性(抗体あり)で、過去に感染していたことが分かった。久住医師は「現行のPCR検査で判明する感染者よりはるかに多く感染している可能性が高く、確実にまん延していると言える」と指摘している。 (市川千晴)  検査は久住医師が理事長を務める新宿区と立川市のクリニックで二十一〜二十八日に実施。ホームページで希望者を募り、二十〜八十歳の男性百二十三人、女性七十九人を検査した。このうち一カ月以内に発熱のあった人は五十二人、同居者でコロナウイルス感染者がいる人は二人、PCR検査を受診したことがある人は九人。PCR検査で陽性反応だった一人も含む。  検査結果では、一般市民の百四十七人の4・8%にあたる七人が陽性、医療従事者五十五人のうち9・1%の五人が陽性だった。市民・医療従事者を合計した二百二人全体では5・9%の十二人(男女とも六人)が陽性だった。以前のPCR検査で陰性とされたが、抗体検査で陽性だった人もいた。  検査に使用したのは、大手繊維メーカーのクラボウが輸入した試薬キット。国内の抗体検査で一般的に使われており、採血後に十五分で判定できる。  久住氏は「原因不明の死者が増えていることからも、PCR検査を拡大して速やかに診断し、早期に治療を開始すべきだ」と話している。


 この結果は標本調査であり、母集団に対するサンプル数もまだ少ないものであり、不確定要素が大きいと思いますが、この調査の範囲では、感染者数は人口の5%程度であるということになります。
 東京都の人口を13,953,577人とすると、これまでの感染者数は、

13,953,577人×5%=697,679人

東京都民の70万人程度が既に感染したということになります。統計上では東京都の感染者数は4000人程度となっているので、実際の感染者の1/175しか捕捉されていないということになります。久住氏によると「原因不明の死者が増えている」ということから、現在のPCR検査体制は全く不十分というしかないようです。
 東京都を含めたPCR検査を制限している大都市圏の感染者数統計の信頼性は、残念ながら極めて低いというべきでしょう。このような状態では、とても緊急事態宣言を解除することなど不可能であろうと考えます。

 久住氏の行った抗体検査結果に対するもう一つの見方として、東京都においてさえ、まだ全人口の5%程度ほどしかコロナウイルスの抗体を持っていないということは、いつでも感染爆発が起こりうるということです。
 一般的には全人口の70%程度以上が抗体を持つようになれば感染症の流行は収まると言われていますが、現状は程遠い状態です。スウェーデンのように厳しい対策は取らずに、『敢えて感染することで集団免疫を早く獲得する=多くの死者が発生することを容認する』のではない限り、有効なワクチンあるいは特効薬が開発されるまでは、緊急事態制限を緩和することはとても難しいと言わなければならないでしょう。

※スウェーデンの4月20日現在の累計感染者数1万4385人、死者1540人、致死率11%程度です。

 大都市圏からの移動を厳重に管理できるならば、地方都市の規制は段階的に緩和することも考えられますが、一たび大都市圏からウイルスが持ち込まれれば、すぐに感染が再燃することになりかねません。しばらくは全国規模の何らかの規制は継続する以外に方策はないように思います。 

追記:コロナウイルス感染症の実際の致死率について(2020年5月1日)

  コロナウイルス感染症の致死率は2%〜11%程度といわれています。日本では感染者数14000人程度に対して死者数400人程度、致死率は2.86%程度ということになっています。したがって、コロナウイルス感染症の致死率は高いと恐れられています。

 その一方で、コロナウイルス感染症では無症状あるいは軽症の感染者が多いと言われています。今回の久住氏による東京都における抗体検査の数値が実態を表しているとすれば、感染者70万人、死者120人とすると東京都における致死率は、

120人÷70万人=0.017%

程度です。久住氏の抗体検査の結果から得られたPCR検査による感染者の捕捉率1/175を日本全国に適用すると感染者数は、

14000人×175=2450000人

245万人ということになります。致死率は、

400人÷245万人=0.00016=0.016%

ということになります。これはインフルエンザと比較して大差ない値です。人口の大多数が抗体を獲得すれば、インフルエンザとさほど変わらない対応ができると考えられます。

 問題は、現状ではコロナウイルスの抗体を持つ人が極めて少ないために、短期間に爆発的な感染拡大を起こすことです。致死率がさほど高くないとはいえ、短期間に感染が広がれば、コロナウイルス感染症による日本における死者の数は、人口を1億2600万人とすると

1.26×108人×0.00016=20160人

になります。

 ただし、注意が必要なのは、この数値はあくまでも現在の日本の医療サービスのレベルが維持できた場合の話であり、医療崩壊が起これば、この数値は跳ね上がることになります。

 

No.1312(2020/04/17) コロナウイルス感染症の収束長期化は不可避
東京五輪・パラリンピックは返上・中止し、資財を感染症対策に集中すべき

 感染者累計数の増加の様子は次の通りです。

 緊急事態宣言発出後10日程度経過しますが、今のところ顕著な効果は見られません。この一週間で感染者数はほぼ倍増する勢いです。

 緊急事態宣言発出後の安倍ファシスト保守党政権のドタバタにはあきれ果てるばかりです。愛媛県知事をして「朝令暮改」といわせるほどに混乱しています。最初にできることの最大限のことを行っておけばよいものを、「様子を見て小出しにする」泥縄式の対応が裏目裏目に出ています。
 ついに今日から日本全国に対して緊急事態宣言が適用になりました。昨日の安倍の会見では、緊急事態宣言対象地域を日本全国に拡大するが、期間は5月6日までで変更しないということです。しかし、現状では5月6日までの期間で感染者増加を収束の方向に向かわせることは、だれが見ても不可能であろうと思われます。

 世界的には、あるいは医療専門家の意見としては感染収束までの期間は長期化し、少なくとも1年半かそれ以上はかかるであろうという予測が主流です。今後アフリカや中南米、更に紛争地帯など医療的に脆弱な地域への感染が本格化すれば、世界的な感染収束にはそれ以上の期間が必要かもしれません。おそらく来年夏になっても世界規模での感染収束には至らないことはほとんど間違いないのではないでしょうか?

 そのような状況でオリンピックやパラリンピックのような世界的な人の移動を伴うような巨大イベントを開催するなど、とても常識的には考えられないことです。仮にその時期に日本国内の感染状況が収まっていたとしても、オリンピック・パラリンピックによる人の移動によってふたたび感染が起こる可能性が高いでしょうし、感染地域からの選手は参加できないなどの選別を行うことなどありえないでしょう。

 この際、早急に東京オリンピックの中止・返上を決定し、その資財をコロナウイルス感染症対策に集中することこそ必要だと考えます。小池さん、英断を期待します。

 それにしても、安倍ファシスト保守党政権はこの期に及んでどさくさに紛れて検事の定年延長を正当化する法案審議に入るなど、破廉恥極まりない行動を続けています。彼らがいったい誰を見て政治をしているのか、国民は注視しておくべきでしょう。 

 

No.1311(2020/04/12) 安倍ファシスト・自民党政権は誰のための政権か?
コロナ緊急事態に対する支離滅裂な対応と火事場泥棒的な憲法改正発言

 コロナ感染症が急速に蔓延しています。感染者発生数と累計数の増加の様子は次の通りです。

 今回の緊急事態宣言による対応がどの程度有効かは全く未知数ですが、その効果が表れ始めるであろう2週間先までは現状の傾向が継続するわけですが、累計患者数は4倍ないしそれ以上になることは間違いないでしょう。まさに危機的状況です。

 一昨日に緊急事態宣言が出たばかりなのに、昨日には安倍は「緊急事態宣言が出された地域以外でも同様の自粛をするように」などという馬鹿げた発言をする始末です。いったい何のための地域指定であったのか、安倍政権の対応は泥縄式の典型です。一刻を争う感染防止対策が必要なこの時期の政権が、無能な安倍政権ないしその取り巻きのイエスマン官僚システムであることは日本国民にとって悲劇です。

 その一方で、早くもこの緊急事態の混乱に乗じて、火事場泥棒的に改憲論議を持ち出す安倍ファシスト・自民党政権がいったい誰のために政治を行おうとしているのかを、国民は決して忘れてはならないと考えます。

 

No.1310(2020/04/09) 中途半端な感染封じ込め対策の実効性は?
感染症・自然災害等の緊急事態に対する法の優越と人権の制限について

 昨日、3月14日に施行された「改正新型インフルエンザ対策特別措置法」に基づく緊急事態宣言がようやく出されました。それでも国は感染の抑え込みよりも経済活動の維持に腐心しているようです。
 医療崩壊に直面している東京都の小池知事はできる限り強い形での運用を目指しているのに対して、国や周辺自治体の首長たちとの間にはかなり意識の差があるようです。

 新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく緊急事態宣言下において最も強い要請は「指示」であり、強制力がなく、したがって罰則もありません。その意味で緊急事態宣言を最も強く運用したとしても、人の動きを完全に止めることはできないので、感染の封じ込めに対してどれだけ効果があるのかは未知数です。あくまでも性善説に立って、国民の自発的な協力に期待するというかなり危ういものです。事実、既に東京圏から地方への人の還流が起こっているようです。緊急事態宣言の発出に伴って、感染の地方への拡散が始まっているようです。

 政府や東京周辺自治体の意識は低く、厳格な運用に対して否定的な対応をしています。これでは感染の囲い込みが尻抜けになってしまい折角の経済措置や活動自粛が無意味になってしまう可能性が高いのではないか、とても心配です。
 私の住む大分県も含めて地方では、大都市圏からの帰還者による感染の持ち込みが大多数を占めているようです。早期に感染拡大を封じ込めるためには、大都市部の高感染地域から地方への感染拡散を抑え込むことが重要です。おそらく高感染地域である大都市圏を完全封鎖できれば、数週間で地方都市から感染者はいなくなるのではないかと考えます。しかし、現行の新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく緊急事態宣言では、かえって地方への拡散を助長する可能性すらあります。

 さて、緊急事態宣言に対しては、人権を法的に制限するという側面を持つために、抵抗感があるのは事実です。しかし、例えば戦時体制下における国家権力による思想に対する弾圧とは異なり、思想の如何に係わらない一過性の感染症の蔓延や自然災害に対する対応に限られ、しかも問題の解決と同時にその効力がなくなる緊急事態宣言であれば、命令や罰則規定を含む強制力を持たせることに躊躇する必要はないと考えます。

 今回の緊急事態宣言によって、勿論ある程度は感染速度を抑えることができるとは思いますが、下手をすると感染拡大を制圧できずに感染期間が長引くことになる可能性が小さくないのではないか、心配です。感染期間が長引けば、大衆は果たして耐えられるのか?

 

No.1309(2020/04/05) コロナウイル薄感染症で見える現在社会の脆弱性
不必要な物・サービスで肥大化した社会で一体何が重要なのかを考える

 さて、このところコロナウイルス感染症の拡大が社会機能に対して深刻な影響を与えています。社会的には、検察庁の人事問題、森友問題の近畿財務局の赤木俊夫氏の手記の問題と、安倍ファシスト政権の重要問題もありますが、現状の混乱下では国会審議も難しくなっているのは、忸怩たる思いです。

 さて、当初は感染力が比較的弱い、重症化率が低いという情報がありましたので、正直ここまで問題が大きくなるとは考えていませんでした。比較的軽い感染症であれば、放置して自然免疫の獲得によって鎮静化するのを待つというのも一つの方法です。

その場合上図に示すように、感染者発生数は釣鐘状の分布を示します。これは既感染者数と非感染者数の比率の影響であり、集団の半数程度が感染してしまえば発生数はピークを迎え、その後は次第に減少し始めます。
 赤の実線は既感染者の累積数の集団の全数に対する100分率のグラフです。上図ではResponse Time が80付近で度数分布のピークが出現し、赤の実線で示された累積数の全数に対する比率が50%程度となり最大勾配を示し、その後徐々に傾きが小さくなり100%に漸近することになります。
 致死率・重篤化率が低い感染症であれば、医療的に何の対策を取らなくても、人類の大多数が感染し自然免疫を獲得することでいずれ沈静化することになります。

 ちなみに現在の日本の状態は、度数分布の包絡線が下に突な状態、上の図であればResponse Timeが20〜40辺りの性状を示しており、感染初期の状態です。このまま手をこまねいていればやがて感染爆発に向かうことになる可能性が極めて高いと思われます。

 人々が自由に行き来することができる世界であれば、母集団の数は世界の人口である77億人になります。コロナウイルスの致死率を2(11)%だとすると、死者数は1億5400(8億4700)万人程度になるということです。日本の人口を1億2600万人とすると252(1386)万人ということになります。(※カッコ内はイタリア、スペインの致死率を用いた場合)

 これはとても容認できる死者数ではなく、放置することはできないので今必死になって抑え込みにかかっているわけです。
 感染抑止の方法は単純です。感染者と非感染者の接触機会を物理的になくすことです。具体的には外出自粛することであり、あるいは感染者の移動を禁止して囲い込むことで集団の大きさを小さくすることです。最も効果的なのは、感染者を含む集団を完全に囲い込むことです。出来るだけ集団を小さくする(人口的にも地域的にも)ことがより効果的です。
 最も小さな集団は感染が確認された人を隔離する病院ないし隔離施設であり、更に感染者の発生率が高い地域の囲い込み、つまり地域封鎖です。
 その前提となるのは、感染の範囲を的確に把握し、感染地域と非感染地域を分離することです。感染地域は徹底的に封じ込めを行い、非感染地域への拡大を阻止することが必要です。しかし、日本は、意図的かどうかはよく理解できないのですが、検体数が圧倒的に少なく現実の罹患率や感染地帯が的確に把握されていないことが不安要因です。

 早期に感染を抑え込むためには、検体数を増やして実態の把握精度を上げると同時に、感染地域の徹底的な囲い込みを行うことです。分割された地域ごとに感染者をなくして、非感染地域を増やすことです。それによって、ワクチンないし治療薬の開発までの期間の累積感染者数を低いレベルで抑え込むことが最終的な目的です。

 安倍無能政権は、感染拡大防止と経済活動の維持の間で右往左往して何も決めきれずにいるようですが、これで感染を抑えきれなくなれば、社会的な影響は長期化するばかりでなく甚大なものになります。
 それより、経済活動を徹底的に規制して感染を抑え込むことを最優先して、短期間で感染拡大を制圧することの方がはるかに影響が小さく済むことがなぜわからないのか・・・。

  だいぶ前振りが長くなってしまいました。今回のコロナウィルス感染症の蔓延で、私たちの暮らす、一見モノ豊かで情報通信機器で自動化されている現在社会が、いかに脆弱なものであり、理不尽な世界であるかを再認識する契機にしたいものだと、ふと思いました。
 いくら時代が変わっても、人間にとって一番大事なことは命を維持することだということが、第二次世界大戦後において今回ほど現実感を持って多くの人に考えられた機会は、ないのではないでしょうか?戦争のない国に住んでいて、「戦争は必要悪だ」などと訳知り顔で言うことがいかに理不尽で傲慢であることか。武器商人が稼ぐために戦争をやめない国、人殺しのための技術開発に携わる研究者・・・・。日常感覚から見ると、現在はとても異常な社会になっています。
 都市封鎖では食品や薬剤を購入すること以外の外出や経済行為が規制されています。規制されている経済行為やサービスに携わる人たちは経済的には死活問題ではあるのでしょうが、人が生きる上ではさほど重要ではない業種だと言えます。つまり、現在社会は人が生きるためにさほど重要でない職種が異常に肥大化しているのです。

 私たちの目指すべき将来社会とは、現在の異常にエネルギー多消費なメカトロニクスが普遍化し、生きるために不必要なサービスが肥大化した短命な社会の延長線上ではなく、人が生きるための基本資源を重視し、食を重視する農林水産業に根ざした、つつましい持続的な社会であることを認識してほしいと思います。

 

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