シリーズ[環境問題を考える]⑥「温暖化の虚像」

●今年は、気候変動に関する国際連合枠組条約の下、パリ協定の実施年に入ります。残念ながら、あまりにも非科学的な「化石燃料の燃焼によって人為的に放出したCO2の大気中への蓄積によって大気の温室効果が増大した結果、人類にとって脅威となるような気温上昇が起こる」などという人為的CO2地球温暖化説が、現在、大多数の人たちに信じられています。

●そして、人為的CO2地球温暖化脅威説に踊らされた結果、CO2排出量を削減するという触れ込みで再生可能エネルギー発電を始めとする「誤った対策」が暴走し始めようとしています。今提案されているCO2温暖化対策を推し進めることは、自然環境を破壊し、工業化社会のシステムそのものを破壊することになります。

●ホームページ“「環境問題」を考える”において、人為的CO2地球温暖化説について槌田敦さんと一緒に論考を加えてきました。今回、その内容をシリーズ[環境問題を考える]⑥としてまとめました。これまでは、不知火書房から紙の書籍として発刊してきましたが、より多くの人に読んでいただきたいと考え、PDF形式の電子書籍としてネット上において無償で公開することにしました。自由にアクセスしてご覧いただき、もし内容について意義を見出していただけましたなら、広く友人・知人に紹介いただければ幸いです。また再配布していただいてもかまいません。

●読者諸兄にお願いなのですが、願わくは、できるだけ多くの方の目に留まるよう、ミラーサイトを多く作りたいと思います。協力いただける方は、PDFファイルをダウンロードしてご自分のサイトをミラーサイトとしていただけないでしょうか?よろしくお願いいたします。

※ミラーサイトの提供にご協力いただける方は、お手数ですが下記メールアドレスまでご連絡ください。版を改訂した場合などにご連絡差し上げます。

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解題「温暖化の虚像」⑱

CO2温暖化対策が環境・社会を破壊する⑥

再生可能エネルギー発電はCO2放出量を増加させる
 さて、前回はエネルギー供給技術としての原子力について考察しました。今回は、菅政権のCO2温暖化対策の基幹技術とされている再生可能エネルギー発電について考察します。

 既に「工業生産の本質」「電力生産の理論」で触れたように

再生エネルギー発電のエネルギー産出比<0.35≪1.0

でした。つまり、原子力発電同様、再生可能エネルギー発電は単独では工業生産に対して利用可能なエネルギーを全く供給することができません。つまり、再生可能エネルギー発電工業化社会は実現不可能です。
 それどころか、現在の化石燃料によるエネルギー供給システムを前提としても、発電サブシステムとして火力発電よりも大量に化石燃料を消費するため全く利用価値がありません。前回示したエネルギー産出比による評価で言えば、

③エネルギー産出比≦0.35
 全く利用する合理性はなく、化石燃料を浪費するだけ。

に該当するため、全く無意味な技術です。

再生可能エネルギーの工業的利用の致命的な欠点
 再生可能エネルギーは、「工業を支えるエネルギー資源の条件」

①天然資源であること。
②低エントロピー状態で適度にエネルギー密度が高いこと。
③量が豊富であること。


の内、①天然資源であること、③量が豊富であることの二つの条件を満足しています。しかし、②低エントロピー状態で適度にエネルギー密度が高いことという条件を満たすことができません。この点について少し詳しく見ておきます。

 再生可能エネルギーとは究極的には、太陽放射と惑星としての地球の運動エネルギーです。具体的には太陽放射、風力、水の運動エネルギー・位置エネルギーなどです。
 放射エネルギーや力学的なエネルギーにはそもそもエントロピーは定義できません。言うなればエントロピーゼロのエネルギーです。したがって、再生可能エネルギーは低エントロピー状態のエネルギーです。
 つまり、再生可能エネルギーのエネルギー密度が希薄であることこそが決定的な欠点だということです。更に再生可能エネルギー固有の問題として、時間に対する不規則変動が大きく、制御不能であることが挙げられます。

 再生可能エネルギー密度が希薄なために、必然的に単位発電電力量当たりの発電装置規模は巨大なものになります。
 加えて、再生可能エネルギーの出力変動幅が大きいために、発電設備利用率が極めて低くなります。例えば、風力発電の設備利用率は15%程度ですから、2MW出力の風力発電装置の実際の平均出力はその15%の0.3MWに過ぎないのです。これによって発電装置規模は更に巨大なものになります。
 そればかりではなく、発電出力変動は「風まかせ、天気まかせ」で予測不能・制御不能です。再生可能エネルギー発電電力を高度に制御された電力供給システムに接続するためには、巨大な電力のバッファー装置や、全国土を網羅する高規格大容量の送電線網の整備などが必要になります。これは原子力に対しても決定的に劣る欠陥です。
 その結果、短期的(核廃棄物管理のための費用などを除く場合)には、再生可能エネルギー発電は原子力発電よりもはるかに高コストの発電方式になり、それだけ大量の工業製品と化石燃料を消費することになるのです。

 例えば、日本海側の広範囲の地域が寒波による暴風雪に見舞われた場合、当該の広範囲の地域の太陽光発電、風力発電が全く機能しなくなる可能性があります。あるいは日本全土が梅雨の長雨に見舞われた場合、太陽光発電出力は激減します。
 このような広範囲に及ぶ再生可能エネルギー発電の出力低下が起こる場合に対して、高規格の送電線網による電力の地域を超えた融通は意味をなさなくなります。また、長期間に及べば蓄電装置の容量不足も起こります。
 結局、大規模に再生可能エネルギー発電を導入したとしても、導入再生可能エネルギー発電設備と同容量のバックアップ用の火力発電施設を常に稼働可能な状態に維持・管理し、化石燃料を備蓄しておかなくてはならないのです。つまり、再生可能エネルギー発電を導入しても火力発電施設を削減することは出来ないのです。
 冷静に考えれば、火力発電よりもエネルギー産出比の低い再生可能エネルギー発電を全廃して、火力発電だけで運用することが最良の選択であることは明白です。

 以上から、再生可能エネルギーは工業生産に対して利用可能なエネルギーを一切供給できない無意味なエネルギーであり、原子力同様、一次エネルギーではありません。
 これは、原子力と再生可能エネルギーの利用を止めることによって、それだけで現在の化石燃料消費量を削減できることを意味しています。

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解題「温暖化の虚像」⑰

CO2温暖化対策が環境・社会を破壊する⑤

原子力工業化社会は成り立たない
 日本を含めて一部の国では原子力をエネルギー供給システムとして利用しています。原子力はもともと核兵器としての使用が目的であり、第二次世界大戦後に核戦力を維持するための方便として原子力の平和利用が開始されました。

 現在実用化されている原子力によるエネルギー供給は、ウラン、正確には235Uを用いる軽水炉が一般的です。核分裂性の235Uのエネルギーを熱源として利用する蒸気機関=外燃機関です。火力発電と異なるのは熱源として化石燃料の燃焼熱の代わりに235Uの核分裂反応を利用することです。

 ひと頃は「ウラン(正しくは原子量235の核分裂性を持つ235U)1gは石炭3t分のエネルギー」というキャッチフレーズが聞かれました。
 これは235Uの1gが核分裂反応したときエネルギーを8×1010J程度とした場合、石炭3t程度、石油ならば2000ℓ程度に相当するということを表したものです。これをそのまま受け取れば、原子力はエネルギー密度の高い優れたエネルギー資源なのではないかと考えるかもしれません。しかし、そう単純ではありません。

 ウランは地殻や海水中に広く分布して存在しています。しかし広く分散して存在するということはエントロピーの高い状態にあること、拡散していることを示しています。現在原子力の核燃料の原料として採掘されている天然ウラン鉱の品位は概ね0.1%~0.3%程度です。
 さらに、天然ウランの99.3%程度は非核分裂性の238Uであり、核燃料として利用可能な235Uは0.7%程度しか含まれていません。
 このように、235Uは天然の鉱物資源ですが、拡散した高エントロピー状態で産出します。その結果、原子炉用の核燃料(235Uを5%程度まで濃縮)に加工するために長大な物理・化学的な工業的なプロセスが必要になり、その過程で大量の化石燃料を消費します。
 さらに放射性物質を取り扱う工業プロセスは通常の工業プロセスにはない放射線被ばくの危険性があるため、取り扱いにくく、厳重な安全管理が必要になるため、余計に資源・エネルギーを消費します。
 さらに、原子炉では高密度のエネルギーを取り扱うことが必要になり、また、環境中に散逸することの許されない放射線や放射能を持つ物質が生成されるなど、同じ外燃機関を用いた発電方式である火力発電に比較して桁違いの厳重な安全管理と難しい運転が要求されます。その結果、発電所建設自体も火力発電とは比較にならない資源とエネルギーの投入が必要になります。
 そして致命的なのが、使用済み核燃料を始めとする高レベル放射性廃棄物を大量に生み出すことです。発電終了後に、放射性廃棄物の毒性が十分減衰するまで数千年~数万年に及ぶ超長期間にわたって環境から隔離して管理することが必要になります。その安全性を保障するためには厳重な施設の建設と管理が必要であり、そのためにも莫大なエネルギー消費が必要になります。しかし現実的には、このような超長期間にわたって危険物を環境から隔離するための構造物を建設し維持・管理していくことは人間社会の経験したことのない事業であり、100%の安全性は保証できないというよりも必ず破綻すると考えるべきです。

 世界の一次エネルギー消費量でわかるように、世界で消費されているエネルギーの大半は石炭・石油・天然ガスという化石燃料であり、原子力は4%程度に過ぎません。原子力は限られた国でしか利用されていませんが、それでも核燃料の原料用に利用できる品位のウラン鉱石の可採年数は石炭の132年よりも短い99年です。熱量ベースで考えれば、

石炭=157.9EJ/年×132年=20842.8EJ≫原子力=24.9EJ/年×99年=2465.1EJ

原子力で供給できるエネルギー量は化石燃料に比べて少量なのです。
 ウランは地殻や海水中に広く分布して存在していますが、あまりにも高エントロピー状態の密度の低い状態にあるものを、核燃料にするためには現在の核燃料製造工程よりもはるかに大量のエネルギーを投入することが必要になります。

 このように、235Uは前回示した工業生産を支えてきたエネルギー資源に求められる三条件の内、
②低エントロピー状態で適度にエネルギー密度が高いこと。
③量が豊富であること。

の二条件を満たすことができないため、工業生産を行うために有効なエネルギー資源にはなり得ないのです。
 また原子力固有の問題として発電終了後の超長期間にわたって放射性廃棄物を管理し続けなければならないという解決できない問題をはらんでいます。人間社会が原子力によるわずかなエネルギーを得るために、このような大きなリスクを負うことは狂気の沙汰としか思えません(原子力の存在は、エネルギー供給技術としてではなく、平時において核兵器技術を担保するためと考える以外に合理的な解釈はありません。)。

 既に軽水炉原子力発電による電力原価は、核廃物処理費用を考慮していない現状でも、火力発電よりも高額であり、エネルギー産出比は火力発電に劣ると考えられます。本来高速増殖炉で使用するはずであったMOX燃料を軽水炉で使用するプルサーマル発電では、通常のウラン燃料を使用する以上に高額になります。
 したがって、原子力発電の投入化石燃料に対するエネルギー産出比<0.35≪1.0であり、原子力工業化社会というものは実現不可能です。安全性とエネルギー産出比はバーター関係にあり、安全性を高めればさらにエネルギー産出比は低下します。
 原子力発電は化石燃料による工業化社会の下でのみ存在出来る効率の悪い汚れた徒花なのです。可及的速やかに原子力発電は全廃すべきです。それでもなお、既に作り出してしまった放射性廃棄物処理問題は深刻です。

ウラン(原子力)は一次エネルギー資源ではない
 エネルギー統計では一次エネルギーという分類があります。その定義は「自然界から得られた変換加工しないエネルギー」ということになっています。これは工業生産を支えるエネルギー資源の三条件で示した第一の条件である「天然資源」と同義です。これだけではあまり意味がありません。
 天然ウランで見たように、天然資源であれば必ず工業生産に対して有効なエネルギーを供給できるわけではありません。原子力発電では、発電出力が大きいことばかりに目を奪われ、それを実現するために核燃料以外に投入された莫大な鉱物資源や化石燃料消費を見落としているのです。ウランが天然資源であっても、投入化石燃料に対するエネルギー産出比≦1.0であり、これは工業生産に対して有効なエネルギーを供給をしていないことを示しており、工業的に価値はありません。
 原子力発電において、投入化石燃料に対するエネルギー産出比は1.0に満たず、それどころか火力発電のエネルギー産出比にさえ劣るのです。つまり、原子力発電を行わずに火力発電で電力を生産する方が化石燃料消費を節約できます。原子力発電は何ら有効なエネルギーを供給しておらず、むしろ化石燃料を浪費しているのです。

 エネルギー統計では一次エネルギーに原子力を計上しています。しかし、天然ウランにはそのままエネルギーに転化する能力はありません。高エントロピー状態にある天然ウランに対して、大量の化石燃料を始めとする低エントロピー資源を投入した長大な工業的な生産プロセスを経て原子炉用の「核燃料という工業製品」が製造されています。
 したがって、原子力とは「自然界から得られた変換加工しないエネルギー」ではなく、高度に加工された工業製品です。したがって、原子力は一次エネルギーではなく二次エネルギーです。

 一次エネルギーという言葉には、工業生産に対して一次的に有効なエネルギーを供給するものという意味合いが込められています。そのためには、天然資源であると同時にエネルギー産出比が1.0よりも大きいことを条件にすべきです。原子力は工業生産に対して有効なエネルギーを供給することができないので、この点からも一次エネルギー資源から除外すべきです。

エネルギー産出比による評価
 再度エネルギー産出比を用いたエネルギー供給技術の評価基準を示しておきます。ここでのエネルギー産出比算定のための投入エネルギー量は、化石燃料によるエネルギー供給量とします。

①エネルギー産出比>1.0
 工業生産に対して有効なエネルギー供給システムになれる可能性がある。
②1.0≧エネルギー産出比>0.35
 火力発電のエネルギー産出比を0.35だと仮定すると、化石燃料によるエネルギー供給を前提として、そのサブシステムとしての電力供給を火力発電から代替する合理性がある。
③エネルギー産出比≦0.35
 全く利用する合理性はなく、化石燃料を浪費するだけ。

 原子力は③に該当するため、エネルギー供給技術として全く無意味です。勿論、CO2温暖化対策としてCO2放出量を削減する能力はありません。

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解題「温暖化の虚像」⑯

CO2温暖化対策が環境・社会を破壊する④

工業化社会を成立させるエネルギー供給システムの条件
 ここで、工業化社会を成立させるためのエネルギー供給システムに求められる条件を示しておきます。
 これまで見てきたように、エネルギー供給というプロセス自体も工業生産プロセスです。したがって、生産工場でエネルギー原料と低エントロピー資源を消費することによってエネルギーを供給しています。
 製品として大量のエネルギーを供給する工場があったとしても、エネルギーを供給するために消費した投入エネルギー量が莫大であれば、必ずしも優れたエネルギー供給プロセスとは言えません。エネルギー供給プロセスが優れているかどうかは、前回示した「エネルギー産出比」によって評価します。

 エネルギー産出比=(産出エネルギー量)/(投入エネルギー量)<1.0

の場合、このプロセスはエネルギーを消費しているだけです。エネルギー産出比が1.0未満の場合、エネルギー供給プロセスは自ら供給したエネルギーだけでは自己再生産することができないことを示しています。つまり、エネルギー以外の工業製品を製造する工業生産プロセスに対して利用可能なエネルギーを一切供給することができないことを示しています。これでは工業化社会は成り立ちません。

 したがって、工業化社会を成立させるエネルギー供給システムの最低満足すべき必要条件は、

エネルギー産出比>1.0


ということになります。
 ただし、エネルギー産出比が1.0より多少大きい程度では、エネルギーの大半がエネルギー供給システム自身の維持に費やされるため、十分な社会システムの工業化は不可能です。現実的にはエネルギー産出比が10程度あるいはそれ以上が必要でしょう。

工業を支えるエネルギー資源の条件
 発電システムの考察で見たように、エネルギー資源を使って一連の物理・化学変化プロセスによって製品としての工業的なエネルギーを供給する場合、各プロセスにおいてエントロピーが発生するために変換効率は1.0未満になります。変換過程が多くなればなるほど合計の変換効率は指数関数的に小さくなります。
 化石燃料の利用効率の高い火力発電のエネルギー産出比でも0.3~0.4程度が限界です。再生可能エネルギー発電はシステム構造が異なりますが、化石燃料に対するエネルギー産出比は火力発電よりも低くて0.3未満と考えてよいでしょう。このように、電力供給だけで工業化社会を維持することは不可能です。

 産業革命以降、工業生産を支えてきたエネルギー資源は石炭、石油、天然ガスです。これらの資源の共通の性質は、以下の三点です。

①天然資源であること。
②低エントロピー状態で適度にエネルギー密度が高いこと。
③量が豊富であること。

 天然資源、つまり人為的に手を加えなくても資源そのものが高品質の熱エネルギーに転化する能力を持った状態で産出することが本質的に重要です。
 低エントロピー状態というのは、不純物が少ない状態でまとまった状態で産出することを示しています。これは、効率的に採掘できること、しかも精製に投入するエネルギーが少なくて済むことに対応します。

 例えば、露天掘りで良質の石炭を産出する炭鉱であれば、石炭のエネルギー産出比は40あるいはそれ以上ともいわれます。つまり、石炭採掘のために工業的なエネルギーを1単位投入すると、その40倍の熱量を供給できるだけの石炭を生産できるということです。
 この炭鉱に石炭火力発電所を建設して電力を供給すれば、石炭火力発電単独のエネルギー産出比が0.35であったとしても、「炭鉱-石炭火力発電」システムのエネルギー産出比は、

「炭鉱-石炭火力発電」システムのエネルギー産出比=40×0.35=14≫1.0

になるので、余剰の13単位のエネルギーが工業生産のために供給できるのです。
 もちろん、出来るだけ石炭の熱エネルギーを電力に変換せずに利用可能であれば、そのまま消費する方がエネルギー産出比は高くなり、石炭の持つエネルギー利用効率は高くなります。
 例えば、暖房ならば石炭ストーブを用いるほうが石炭火力発電電力で電気ヒーターを用いるよりも石炭の熱エネルギーを2倍以上の効率で有効利用できます。
 しかし、移動用の動力として用いる場合は、動力供給システムの重量や大きさなどがシステムの総合的な効率に大きな影響を与えるため、石炭火力発電電力を用いる方が良い場合もあります。
 最終的にエネルギーをどのように使用するのか、用途によって最適な利用方法を選択することが必要です。昨今の日本の風潮として「オール電化」がもてはやされていますが、闇雲に最終エネルギー形態を電力化することは化石燃料消費を増加させることにつながります。

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解題「温暖化の虚像」番外編

珍説、CO2地球温暖化説 by 江守正多

変節、CO2地球温暖化論者
 2021年1月8日のNHK総合「チコちゃんに叱られる」という番組に、かの有名な国立環境研究所の江守正多が登場して、彼の珍説なのか国立環境研の正式な主張なのかはわかりませんが、CO2濃度上昇による地球温暖化の仕組みを解説していました。

 これまで、CO2地球温暖化説の通俗的な説明は度々変節(笑)を繰り返しています。最初の頃は、大気の温室効果が大きくなって、太陽放射の吸収が大きくなって温暖化するとしていました。

初期のCO2地球温暖化に対する説明図

 この説明では有効太陽放射よりも地球放射による放熱量が小さく、地球大気の保有するエネルギーが単調に増加する熱暴走状態となり、安定した惑星ではありえない状態を示していました。これは、高校地学で教えられている内容にさえ反する基本的な誤りでした。
 この図では、温室効果ガスとして「二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、代替フロン等3ガス」が挙げられており、水蒸気は含まれていません。
 この図はいつの間にか消えてしまいましたが、いまだにこれを信じている人は少なくありません。ちなみに「チコちゃんに叱られる」では、江守氏の指示なのかNHKの判断なのかはわかりませんが、温暖化の説明図としてこれと類似の図が最初に登場したのには、正直少し驚きました(笑)。

 その次に登場したのは、いくら地表面放射の吸収に十分な温室効果ガス濃度になったとしても、更に温室効果ガスが増えればいくらでも温室効果は大きくなるという意味不明の説明でした。
 「チコちゃんに叱られる」に登場した江守正多も以前は国立環境研のホームページで次のように解説をしていました。曰く「CO2が増えると赤外線の放射・吸収の回数が増えるので地球表面に向かう赤外線量がいくらでも増える」と説明していました。これについては拙著「検証温暖化」pp.215-219に全文引用していますのでご参考まで。
 これを説明した温室効果の解説図は次のようなものでした。

二代目のCO2地球温暖化に対する説明図

 この図では有効太陽放射と地球放射は釣り合っていますから、初期の説明図の問題点をクリアーしています。途中のギザギザは時間経過に伴って大気中でエネルギーが移動していることを表しているようです。大気の温度は保有する気体分子の運動エネルギー量に比例するのであって、エネルギーが移動したところで何ら温度状態は変化しません。この説明図も失敗でした(笑)。

 そして今回の江守正多の説明で大きく変わったのは、前述の通り対流圏下層大気の中で最も大きな赤外活性気体である水蒸気は彼らの言う温室効果ガスには含めないという主張でしたが、今回の説明では180度変わって水蒸気が最大の温室効果ガスであると主張していた点です。
 番組の中で江守は、他人事のように「CO2の温室効果が一番大きいと思っている人が多いようですが実は水蒸気が最大です」などと抜け抜けと言っていますが、前出の図の書き込みでもわかるように、そういう情報を流してきたのはかつての彼ら自身です。
 ではなぜCO2濃度上昇を問題視しているのかという説明の下りはこうです。CO2濃度の上昇で少し気温が上がると大気中の水蒸気濃度が上昇することで水蒸気による温室効果が大きくなる正のフィードバック効果で気温上昇が加速されるということです。
 おそらく、CO2濃度の上昇程度では気温上昇を説明できないと考え、水蒸気濃度上昇による正のフィードバック効果の影響を考慮するとしたのであろうと思います。以前は水蒸気の赤外活性は温室効果に加えないと言っていたのに、まさにご都合主義の変節です。

 このように人為的CO2地球温暖化説の説明は何度も改訂されていますが、それほど理論的にいい加減なものであることを示しているように感じます。

江守CO2温暖化説を分析する
 今回の江守説の誤りを整理しておきます。相変わらず彼らの主張は地球表面からの赤外線放射に対する対流圏下層大気による吸収局面だけしか考慮していません。この近視眼的な見方が全ての誤りの元凶です。
 既に説明してきたように、地表面放射による放熱と対流圏上層大気ないし雲頂からの上向きの赤外線放射の合計が有効太陽放射と釣り合うように大気温度の分布が決まります。
 既に地球の表面放射に対する対流圏下層大気ないし雲による吸収は十分大きく、CO2濃度の多少の上昇は地表面放射の吸収局面ではほとんど効果はありません。むしろ対流圏上層大気の射出率の増加に寄与するために、対流圏上層大気の温度を低下させる効果を持ちます。したがって気温を低下させます。

 江守説の問題を三点挙げておきます。
①江守説ではCO2濃度上昇による気温上昇がトリガーとなって大気中の水蒸気濃度が高くなるとしていますが、そのトリガー自体が機能しません。
②仮に、大気中の水蒸気濃度が上昇すると対流圏の平均的な温度減率が小さくなるため、対流圏の下端と上端の温度差が小さくなります。したがって、対流圏上層の温度が変わらなければ、対流圏下端の温度=気温は低下することになります。

③水蒸気濃度が上昇すると雲量が増加し、日傘効果によって有効太陽放射が減少する。

 いまだに江守たちは地球の温室効果を地表面放射の吸収局面でしか考えていないことが致命的な誤りです。水蒸気濃度が上昇すれば単純に気温上昇を加速すると考えるところが彼らの短絡的な発想を如実に示しています。

 今回の番組では、CO2温暖化仮説についての江守説が披露されていましたが、産業革命以降の大気中CO2濃度上昇の主要な原因が人為的に放出されたCO2がであるという主張には触れていませんでした。この点については、産業革命以降の大気中CO2濃度上昇の主因、9割以上は自然変動ですから、今回のCO2温暖化江守説が仮に正しいとしても、温暖化の主因は自然現象ということには何ら影響しません。人為的CO2地球温暖化は虚像に過ぎません。
 

 

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解題「温暖化の虚像」⑮

CO2温暖化対策が環境・社会を破壊する③

エネルギー技術は価格で評価できる
 前回示したように、工業製品価格は製造に投入された原材料資源価格と加工工程で投入されたエネルギー資源を含めた低エントロピー資源価格の合計によって推定することが可能です。
 したがって、製品として工業的エネルギーを供給する産業では、定性的に見て製品価格が安いほどエネルギー産出比が高くなります。エネルギー産出比が高いということは製品製造に消費する資源・エネルギー量が少なくて済む=効率的な優れたエネルギー供給技術であることを示しています。
 電力供給で見ると再生可能エネルギー発電は一般的に非常に高価であることが知られています。つまり、再生可能エネルギー発電は発電技術として火力発電に劣るものであり、鉱物資源と化石燃料を大量に消費することを示しているのです。
 それでも「再生可能エネルギー発電は人為的CO2温暖化対策としてCO2を放出しないから高価であっても利用価値があるのだ」という説明がされてきましたが、これは工業生産の理論を無視した子供だましの暴論です。工業生産とは、前回示した通り、本源的には化石燃料による熱機関によって駆動されているので、工業製品価格が高いということはそれだけ大量の化石燃料を消費して製造されていることを示しているのです。
 再生可能エネルギー発電はでは火力発電と異なり、電力の直接的な原料として化石燃料を使っていませんが、発電のための装置設備が巨大になり、それを製造・建設・運転・維持していくために火力発電とは比較にならない莫大な化石燃料を消費するため、結局火力発電以上に化石燃料を消費しているのです。

 前回紹介した福島洋上風力コンソーシアム事業の浮体式洋上風力発電のエネルギー産出比が平均的な再生可能エネルギー発電よりもはるかに劣っていたのは、洋上風力発電の装置規模が陸上風力に比較して遥かに巨大になることを反映しているのです。

自動車駆動系の評価
 エネルギー技術を価格で評価するという考え方は、自動車についても応用できます。車体価格を比較すると、

内燃機関自動車<ハイブリッド車<電気自動車<燃料電池車

したがって、燃料電池車や電気自動車は駆動装置として劣っていることを示しています。更に、使用エネルギー価格を比較すると、

ガソリン・軽油<電気<水素

 火力発電では化石燃料の熱エネルギーの60%程度を廃熱として廃棄しています。火力発電で発電した電力で電解法で水素を製造すればさらに変換損失が積み重なるので、水素のエネルギー産出比は最低です。したがって、電気自動車や燃料電池車が増えると化石燃料消費量は増大します。

 再生可能エネルギー発電の中でも時間に対する出力変動が最も激しい風力発電は電力供給システムに接続するためには巨大なバッファー装置が必要になります。それを避けるために風力発電電力で電解法によって水素を製造するなどという馬鹿げた構想があります。
 あらゆる物理・化学プロセスの効率は100%未満ですから、エネルギー変換を繰り返すほど最終的な利用可能エネルギーは減少します。また、水素は常温常圧では気体であり、エネルギー密度が低いため、実用的には超高圧にして体積を小さくします。そのために更に多くのエネルギーが消費されるため、ますます利用可能なエネルギーは減少します。
 したがって、例えば排気ガスの問題で電気自動車を使用することが合理的な場合はあるかもしれませんが、燃料電池車を使用することに合理性は全くありません。燃料電池車を「究極のエコカー」などと言っている能天気な国民は日本以外にはないのです。

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解題「温暖化の虚像」⑭

CO2温暖化対策が環境・社会を破壊する②

工業生産の本質
 前回見たように、現在進められようとしている「人為的CO2地球温暖化対策」は自然科学的に見て全く見当はずれで無意味です。
 しかし、工業生産を駆動している化石燃料は有限の地下資源であり、将来枯渇することは避けられません。したがって、温暖化対策とは関係なく、工業化社会の未来、ないし脱工業化社会を構想する上で化石燃料消費を削減することは重要です。

 まず、工業生産の本質とは何かを明らかにしたうえで、工業生産というプロセスについて理論的に考察することにします。

 産業革命以前の大規模な製品製造は、工場制手工業、工場に職人=手工業者を集め、簡単な道具を使用して職人の手作業によって作業工程にしたがった分業で製品を製造する形態がとられていました。この段階で製造工程の分割・単純化=標準化が進みました。

 18世紀の産業革命の最大の変化は、石炭火力を用いた外燃機関という動力装置を工場生産現場に導入することで、手工業者の手作業で行われていた標準化された単純な作業を大規模な機械装置による製造に置き換えたことです。このように、工業の本質とは製品製造に動力装置を用いることです。

 本源的な動力装置は現在でも産業革命当時と同様に熱機関です。熱機関の形態は初期の石炭を燃料とする外燃機関から石油を燃料とする外燃機関へ、そして内燃機関へと多様化し、天然ガスを用いた熱機関もあります。

 現在では動力装置として広く電動機=電気モーターが利用されています。しかし、工業的に電気を製造しているのは主に火力発電であり、それは熱機関です。その意味で電気は二次エネルギーであるのと同様に、電動機は二次的な動力装置です。「二次的」という意味は、一次的な=本源的なものと置き換えて単独で存在することができないことを示しています。

 以上から、本源的に工業生産を成立させているのは熱機関という動力装置であり、熱機関を運用するために必要な燃料資源です。
 産業革命以降現在に続く工業文明が成立したのは、勿論それまでに蓄積した人間の自然科学の蓄積や加工技術も重要ですが、最も重要な条件は、動力機関を駆動するための良質で高密度の熱エネルギーを供給する能力を持つ「天然資源」である石炭、石油、天然ガスが存在したことです。

工業生産の理論
 工業生産とは、細分化すると、原料資源に対してある目的をもって一連の物理・化学的な変化を起こすプロセスです。したがって、工業生産によって関連する物質の持つトータルのエントロピーは増加します。
 しかし、完成した製品は高度に体制化された構造を持つ低エントロピー状態にあります。したがって、工業生産プロセスで生じたエントロピーは廃熱ないし廃物となって環境に廃棄されることになります。

 上図は左から右方向に原材料から製品への流れを示し、縦方向に原材料を加工するために消費されるエネルギー資源、冷却水、洗浄水、溶剤、あるいは生産設備など低エントロピー資源の消費に伴うエントロピー増加の流れを模式的に示しています。

 工業製品の原価とは、原料資源価格と生産過程において消費された低エントロピー資源の価格の合計で近似することができます。

 一般の製品製造では、製品に求められる機能は様々です。音楽プレーヤーであれば良い音で音楽を再生すること、衣料品であれば快適な着心地、・・・・ということになります。
 この場合、製品を製造するために投入された原料資源やエネルギー資源の経済価値と製品の使用価値は全く別の価値尺度を持っています。
 したがって、製品製造に費やされた原料資源やエネルギー資源の経済価値と製品の使用価値を絶対的に比較することは出来ません。製品が高いとか安いとか言う判断基準は利用者の主観ないし、同等の機能を持つ他の製品価格との比較でしか判断することは出来ません。

電力生産の理論
 工業的に供給されるエネルギー生産は特殊なプロセスです。エネルギー生産では工業的なエネルギーを投入して製品もまた工業的なエネルギーです。

 火力発電では化石燃料の燃焼熱を熱機関に投入して力学的なエネルギーに変換し、力学的なエネルギーで最終的に発電機を駆動して電力を得ます。発電過程で電気の直接的な原料となる化石燃料以外に低エントロピー資源を消費します。

火力発電の生産図

 上図は平均的な火力発電の供給電力 1 kWh当たりの生産図です(冷却水については省略)。エネルギー供給という工業生産過程は、原材料・低エントロピー資源としてエネルギーを投入して、製品もまたエネルギーです。したがって、エネルギー供給技術の優劣はエネルギー産出比によって絶対的な評価ができます。エネルギー産出比が大きいエネルギー供給プロセスほど優れていることになります。
 火力発電に原材料ないし低エントロピー資源として投入される化石燃料は、

2.22 kWh+0.64 kWh=2.86 kWh

 したがって火力発電のエネルギー産出比は、

エネルギー産出比=(産出エネルギー量)/(投入エネルギー量)=1kWh/2.86kWh =0.35

 火力発電のエネルギー産出比は熱効率に似ていますが、投入エネルギーとして変換プロセスで消費される低エントロピー資源としての化石燃料を含める点が異なっています。火力発電の熱効率は、

熱効率=1kWh/2.22kWh=0.45>0.35=エネルギー産出比

 続いて再生可能エネルギー発電について考えることにします。再生可能エネルギー発電促進賦課金額から推定して、少し安めに見積もって、再生可能エネルギー発電による平均的な電力原価を40円/kWhだと仮定します。
 再生可能エネルギー発電電力の原価とは、発電装置建設の初期コストと運転期間中の運転、保守点検、メンテナンス費用を耐用年数の総発電電力量で除した値と考えます。
 ここの試算では、発電原価の20%が投入した化石燃料の対価であると仮定します。本来ならば厳密な積み上げ計算をすべきであるという異論があるかもしれませんが、あくまでも概算の目安とお考え下さい。しかし、それほど大きな誤りはないと考えています。

再生可能エネルギー発電の生産図

 再生可能エネルギー発電では直接の電力の原料は太陽放射や風などの「自由財」です。自由財とは言うなれば価値のないもの、無価値であるということです。再生可能エネルギーは自由財なので、エネルギー産出比を算定する場合の投入エネルギーには含めません。

 再生可能エネルギー発電と火力発電の生産図を比較することで再生可能エネルギー発電の特性がよくわかります。火力発電に比較して再生可能エネルギー発電は、発電設備やその保守点検、メンテナンスなどの費用が32円/kWhとけた違いに大きなことがわかります。これは、再生可能エネルギーの密度が低く、更に変動が激しいことを反映しています。逆に言えば、再生可能エネルギー発電は単位供給電力量当たりの施設規模がけた違いに巨大なものになることを示しています。
 その結果、その巨大な設備を製造しこれを屋外環境の中に建設して運転・維持・管理するために多量の化石燃料が必要になるのです。再生可能エネルギーのエネルギー産出比は、

エネルギー産出比= 1kWh/3.04kWh=0.33

になります。電力の原料として再生可能エネルギーを使用するにもかかわらず、希薄で不安定なエネルギーを工業的に利用できるレベルにするためには多大な化石燃料と鉱物資源が必要になるのです。再生可能エネルギーで発電するのだから化石燃料は消費しないなどという子供じみた評価がまかり通っている現在の社会はまともではありません。

 ここでのエネルギー産出比の試算では、

火力発電エネルギー産出比=0.35>0.33=再生可能エネルギー発電エネルギー産出比

と同程度となりました。つまり、発電燃料用に化石燃料を一切使用しないにもかかわらず、再生可能エネルギー発電は火力発電と同程度ないしそれ以上の化石燃料を消費するということです。つまり、再生可能エネルギー発電は化石燃料消費を削減できないのです。

 実際にはここで示した再生可能エネルギー発電よりもはるかにエネルギー産出比の小さいプラントも少なくありません。
 「温暖化の虚像」p.152で紹介した福島洋上風力コンソーシアム事業における浮体式の洋上風力発電では、2MWシステムのエネルギー産出比は0.24、5MWシステムでは0.116、7MWシステムは故障続きでまともなデータが取れない状況でした。これでは火力発電よりもはるかに化石燃料消費が大きくなることは明らかです。

 この事業は東北地方太平洋沖地震・福島第一原発事故復興の一環として、東北を再生可能エネルギー発電基地にするためのパイロット事業として国家事業として東京大学や名だたる大企業の参加によって開始されましたが、完全な失敗に終わり600億円以上が海の藻屑となってしまいました。
 ところが、2020年12月25日に発表された2050年にCO2放出を「実質ゼロ???」にするためのCO2放出量削減の実施計画として立案された「グリーン成長戦略」の中核技術として洋上風力発電が挙げられています。これだけでもグリーン成長戦略の失敗はほぼ確定したようなものです。

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解題「温暖化の虚像」⑬

CO2温暖化対策が環境・社会を破壊する①

CO2放出削減は温暖化対策として無意味
 ここまで、大気中CO2濃度上昇の仕組みや大気の赤外活性の特性について科学的に検証してきました。その結果以下の2点が明らかになりました。

①産業革命以後の大気中CO2濃度上昇の主因は気温上昇による自然現象である。
②CO2濃度上昇は気温を低下させる。

 ただし、CO2濃度の変動による大気の赤外活性の特性に与える変化は微々たるものであり、それが気温上昇なのか気温低下なのかも含めて、観測できるような気温変動は起こっていないと考えるべきです。
 現在の世界は国連・IPCCを中心として温暖化対策と称してCO2放出量削減に向かって暴走していますが、これは温暖化対策として全く無意味です。

CO2温暖化対策とは経済膨張政策の免罪符
 私の個人的推測ですが、人為的CO2地球温暖化説が誤りであると考えている自然科学者や工学研究者・技術屋は少なくない、それどころか、大多数がそう考えているのではないかと思います。なぜなら、これまで説明してきたCO2濃度や赤外活性についての認識は、高校生程度の理科教育課程を習得している者であれば当たり前のことばかりだからです。買い被りでしょうか?
 では一体どうして彼らは口を閉ざし、国連・IPCCの扇動による人為的CO2地球温暖化説の狂騒状態に唯々諾々と従っているのでしょうか?

 20世紀末には、いわゆる先進国の工業生産に基づく経済成長路線に陰りが出始めていました。大量消費の民生品の製造では新興工業大国である中国や東南アジア諸国の安い労働力を背景とした安価で優秀な製品が世界市場を席巻し始めていました。
 先進国は更なる経済成長を貪るためには、新興工業国では簡単に手が出せないような高額商品を大量に売りさばける新たな巨大な工業製品市場を創出することが必要と考えたのだと推察します。
 そんな時に登場したのが気象研究者たちが巨額の研究費を得るためにでっち上げた「人為的CO2地球温暖化説」という稚拙なストーリーだったのです。
 先進国・巨大企業は、CO2温暖化を止めるために温暖化対策を施した高度な工業製品市場が創設され、新興工業国との差異化によって先進国の優位性による世界市場の奪還が可能であると考えたのです。
 通常の市場では、大多数の消費者は同じ機能を持つ製品であるならばできるだけ安いものを購入するため、温暖化対策を盛り込んだ高額商品が売れることはありません。
 そこで先進国は国連・IPCCを通じて、人為的CO2地球温暖化が事実であり、放置すれば人間社会にとって脅威的な悪影響を及ぼすことになるという恐怖心を煽り、人為的CO2地球温暖化が事実であると信じ込ませたのです。
 こうして国連の場を通じて世界の大多数の国々に人為的CO2地球温暖化を恐怖する狂騒状態を作り出すことに成功し、高額な温暖化対策商品市場を半ば強制的に創出したのです。2030年代には新車は全て電動車にするというのはその典型的な例でしょう。
 温暖化対策商品市場という不要不急の商品市場を作って、庶民から巨額の金銭を巻き上げる詐欺商法の免罪符として人為的CO2地球温暖化説が利用されているのです。

日々繰り返される大量情報による洗脳
 冷静に考えれば、容易に間違いだとわかる人為的CO2地球温暖化説がこれほどまでに蔓延し、信じられているのは、教育、マスメディア、インターネットなどのあらゆる情報メディアを動員して日々流される膨大な情報による洗脳によって大衆の思考を停止させた結果です。
 現在では、ほとんど全ての人は人為的CO2地球温暖化を事実として疑わず信じ切っています。その反面、現在主張されている人為的CO2地球温暖化説の科学的な内容を知っている人はほとんどいないというのが実情です。
 彼らの信頼の源泉は、大多数の人が正しいと言っているという、理論的な内容の欠如した大量情報による洗脳によって作り上げられた社会状況だけです。特に、グレタ嬢を筆頭とする若者や学生たちが人為的CO2地球温暖化説を妄信・熱狂している状況は、かつてのナチスドイツや軍国日本において行われた洗脳教育下の若者の精神構造に酷似しているように思います。
 しかしかつては体制に反対するまともな真の知識人がいたようですが、人為的CO2地球温暖化問題では、軽薄なマスコミ御用達の似非「知識人」ばかりになっていることはむしろ状況は悪いようです。

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解題「温暖化の虚像」⑫

大気中CO2濃度の上昇は気温を低下させる⑥

CO2濃度上昇による気温低下というパラドックス
 前回示したように、対流圏地球大気に含まれる赤外活性気体濃度の上昇は人為的CO2地球温暖化説の主張とは正反対に気温を低下させます。なぜこんなことが起こったのでしょうか?

 通俗的な人為的CO2地球温暖化説では、大気の赤外活性の内、地表面放射を吸収する局面についてしか考慮していません。しかし、赤外活性を持つ気体を含めて物体の熱放射現象は、環境中の電磁波を吸収するだけでなく、必ず物体の温度状態に応じた電磁波を放射します。そして、電磁波を吸収しやすい物体は同時に電磁波を放出しやすいのです。物体の吸収率α(λ)と射出率ε(λ)は等しいのです。
 「温暖化の虚像」第3章で述べた通り、大気の温室効果の本質とは、地球表面に代わって対流圏大気の上層からの上向き赤外線放射で宇宙空間に放熱することなのです。放熱の大気温度は有効太陽放射と地球からの赤外線放射による放熱が平衡するように決まります。
 有効太陽放射に平衡するために必要な大気からの熱放射量が変わらなければ、大気の射出率が大きくなるほど大気温度は低くなるのです。したがって、赤外活性気体の濃度が上昇するほど対流圏大気上層の温度は低下し、対流圏の温度減率に従って地表面付近の大気温度である気温も低下するのです。

 地表面付近の大気は、水蒸気H2Oによって、遠赤外線領域の吸収・射出率は90%を超え、地表面放射の大部分を吸収しますが、対流圏上層大気はH2O密度が極端に低いために、吸収・射出率は著しく小さくなります。大気中のH2O以外の赤外活性気体濃度が上昇すれば、地表面付近の大気の吸収・射出率に比較して、対流圏上層大気の吸収・射出率の増加が大きくなります。

CO2濃度上昇による気温変動は単純ではない
 前述の通りCO2に限らず、水蒸気以外の赤外活性気体の大気中濃度が上昇すれば、対流圏上層大気からの射出率が高くなるために必要な温度は低くなります。しかし気温の変化はそれほど単純ではありません。
 気温の低下は地表面温度の低下になり、地表面放射が小さくなります。これに伴って、地表面放射による放熱が小さくなるため、減少した分を対流圏上層大気が肩代わりして放熱しなければなりません。これは対流圏上層大気の温度変化に対する負のフィードバック効果を持ちます。
 その他、対流圏上層大気の温度が低くなることによって、気象にどのような影響が生じるのか、雲量にどのような変化が出るのか、対流圏の平均的な温度減率にはどのような影響があるのかなどなど、影響は多岐に及ぶことになります。

CO2濃度上昇の影響は小さい
 例えば地球大気の量が10%のオーダーで増加するとか、地球大気の組成が金星のように90%以上がCO2になれば、確かに気温に与える影響は無視できないでしょう。
 しかし、体積濃度で400ppm、0.04%程度のCO2濃度が100ppm程度の幅で変化したところで、地球大気の吸収・射出率に与える影響は軽微であり、それによって観測できるような温度変化が起こることは考えられません。しかも人為的な影響に限れば、高々12ppm、0.0012%程度であり、無視して差し支えありません。CO2地球温暖化は虚像なのです。

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解題「温暖化の虚像」⑪

大気中CO2濃度の上昇は気温を低下させる⑤

射出率と放射平衡温度
 黒体の熱放射現象について、放射と温度の関係を示す式としてステファン・ボルツマンの式があります。黒体の放射発散度をI(W/m2)、黒体の温度をT(K)、ステファン・ボルツマン定数をσ=5.67×10-8(W・m-2・K-4)とすると次式が成り立ちます。

I = σT4 

 実際の物体は黒体のようにすべての波長の電磁波を完全に放射し、あるいは吸収することは出来ません。温度Trの実際の物体からの放射発散度Irは温度Trに対する黒体放射に対する比率εを用いて次のように書くことができます。

Ir = ε×I = ε×σTr4

このεを射出率と呼び、

0 < ε < 1.0

です。εは物質ごとに波長λに対して固有の分布を持っているので、形式的に波長の関数として次のように書き表すのが適当でしょう。

ε = ε(λ)

 ある物体からの放射発散度Irがわかっている場合、それを黒体放射だと仮定して求めた物体の温度を放射平衡温度といいます。つまり、

T = (Ir/σ)1/4

 実際の物体の温度Trは射出率εを用いて

Tr = {Ir/(εσ)}1/4 > T ∵ ε < 1.0

つまり、実際の物体の温度Trは必ず放射平衡温度Tよりも高くなります。

 簡単な例として、灰色大気について考えてみます。灰色大気とは波長に対して射出率が変化しない仮想の大気です。次の図に、255(K)の黒体とε = 0.8 と 0.6 の灰色大気の分光放射発散度の分布(放射スペクトル)を示します。ε = 1.0 の曲線から下の部分の面積をλ = 0から∞の範囲で積分した合計の面積が255(K)の放射発散度Iです。

 灰色大気の射出率をε = 0.8だとすると、255(K)の灰色大気からの放射発散度Ir = 0.8×I < I です。灰色大気からの放射発散度がIになるためには、灰色大気の温度Trは255(K)よりも高くなることが必要です。
 このように、熱平衡状態では、灰色大気の温度は必ず放射平衡温度よりも高温になります。しかも射出率が小さい物体ほど温度は高くなります。

対流圏大気のCO2濃度の上昇で気温は低下する
 前回見たように、対流圏大気による地表面放射の吸収局面において圧倒的に大きな割合を占める水蒸気H2Oは、高度の上昇に伴い急速に密度が低下します。
 地表面放射の吸収局面ではH2O以外の赤外活性気体の効果は、H2Oの赤外線吸収帯域との重複からごく限られており、したがって濃度変化による大気の赤外線吸収率に与える影響は限定的です。
 一方、対流圏上層に行くほどH2Oの密度は他の赤外活性気体に比較して急激に低下するため、大気の赤外活性に占めるH2O以外の赤外活性気体の割合が大きくなります。H2O以外の赤外活性気体の濃度変化の影響は大気の赤外活性に直接反映されることになります。

 前述の通り、熱放射によって同じエネルギー量を射出する場合、射出率の小さな物質ほど温度は高くなります。有効太陽放射と熱平衡になるために必要な対流圏上層大気からの放熱量が変化しない場合、対流圏上層大気の射出率が上昇すれば、必要な大気温度は低くなります。対流圏大気の平均的な気温減率が変化しなければ、地表面付近の大気温度=気温も対流圏上層大気と同じだけ低くなります。したがって、大気中CO2濃度の上昇は、気温を低下させます。

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解題「温暖化の虚像」⑩

大気中CO2濃度の上昇は気温を低下させる④

大気圧の鉛直分布
 赤外活性気体からの熱放射の強さに影響を与える要素は、気体の種類による吸収・射出率の波長(あるいは周波数)に対する特性(「温暖化の虚像」p.48)の他に、気体温度と気体密度が重要です。
 これまでの検討では、対流圏下層大気による地表面放射の吸収に対しては概ね1気圧の大気に含まれる赤外活性気体の体積濃度で話を進めました。対流圏の乾燥大気の組成は高度にかかわらず同一と考えてよいでしょう。
 しかし、気体の熱放射の強さを考えるときに重要なのは相対的な体積濃度ではなく、気体密度です。同じ組成の大気であっても気圧が半分になれば気体密度は半分になります。地球大気は重力の影響で高度が高いほど気体密度は小さくなります。

地球大気の鉛直方向の圧力分布

 図に示すように、地表面の大気圧は概ね1000hPaです。高度6kmでは470hPa程度、平均的な対流圏界面の高度である高度12km付近では195hPa程度です。最も大気層厚の薄い対流圏ですが、地球大気の8割程度はここに含まれていることがわかります。したがって対流圏では高度変化に伴う気体密度の低下が大きくなります。対流圏界面付近の大気密度は地上の1/4程度になります。

水蒸気の密度分布
 乾燥大気の密度分布については大気圧の分布に従いますが、水蒸気はそうではありません。水蒸気は低温の対流圏上層に上昇するにしたがって、凝結して水滴ないし氷粒となって大気から取り除かれるため、高度の上昇に伴って気体密度が急速に低下します。

平均的な水蒸気の密度分布

 上図からわかるように、水蒸気の気体分子密度は対流圏界面付近では殆どゼロに近くなります。したがって、高度の上昇に伴って、地球大気の赤外線の吸収・射出率に占める水蒸気の効果は急速に低下することになります。

地表面と対流圏界面における赤外線に対する吸収・放射率

 上図は地表面と高度11kmの対流圏界面付近の大気の電磁波に対する吸収・射出率の波長に対する分布を示しています。
 地表面に比較して高度11km付近では水蒸気による吸収・射出率が極端に小さくなっていることがわかります。二酸化炭素CO2による主要な吸収帯域である、15μmと4.3μm付近では殆ど水蒸気H2Oの吸収帯域との重複がないことがわかります。
 地表面放射の吸収局面では、圧倒的に大気中濃度の高い水蒸気H2Oと雲による吸収が支配的であり、CO2濃度の多少の変動はほとんど影響することはないと考えられます。
 一方、対流圏上層からの上向きの赤外線放射による地球系外への放熱局面では、大気中のH2Oによる放射が大気放射全体に占める割合は極端に小さくなります。
 その結果、大気中のCO2濃度が上昇した場合、対流圏下層大気の地表面放射の吸収局面における大気による吸収率に対する寄与は殆どない一方、対流圏上層大気からの上向き赤外線放射による放熱に対する大気の赤外線射出率に対してはCO2濃度変化の効果がそのまま表れることになります。
 CO2濃度の上昇は地表面放射の吸収局面では影響が小さく、対流圏上層からの上向き赤外線放射による放熱局面では影響が大きくなるのです。

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